2025.10.31 ON AIR

ダウンホーム・ブルーズって何や その1

ON AIR LIST
1.You Don’t Have To Go/Jimmy Reed
2.Bright Lights, Big City/Jimmy Reed
3.Big Town Playboy/Eddie Taylor
4.Chicago Bound/Jimmy Rogers
5.Walking By Myself/Jimmy Rogers

この番組でぼくがよくダウンホームとかダウンホーム・ブルーズとか言ってますが、あれはどういう意味ですかと番組をよく聞いているという若者がライヴに来ていて質問された。ほとんど無意識にダウンホームという言葉を使ってしまっているけどかなり大切な言葉で、ダウンホームこそブルーズの大きな要素の一つと言ってもいい。
Down Homeと辞書で調べてみるとその訳に「故郷」とか「気取らない」とか出てきます。つまりブルーズ世代の人たちの故郷というとアメリカ南部、ミシシッピーやアラバマ、アーカンサス、ルイジアナなどの土地ですね。北部のシカゴ、セントルイス、デトロイトなどに移り住んだ黒人たちの多くはそういう南部が故郷なんですね。そこから故郷にいるような「気取らない」感じとかリラックスしたムード、または南部の田舎臭さを持ったブルーズをダウンホーム・ブルーズと呼んでいます。つまり懐かしさもあるんでしょうね。まあ、まずダウンホームさを持って大都会シカゴで活躍したブルーズマンはたくさんいるのですが、そのトップの一人をまず聞いてみましょうか。
有名なダウンホーム・ブルースと言ってまず思い出すのがこの曲です。

1.You Don’t Have To Go/Jimmy Reed

ジミー・リードさんもやはり南部ミシシッピの出身でシカゴに出てきた人です。今の曲がデビューしてシングルの三枚目1955年のヒットです。引きづるようなリズム・ギターのシャッフルのビートが特徴的で歌もあまりテンションがなくレイジーでハーモニカも牧歌的でリトル・ウォルターやサニー・ボーイみたいなテクニックはあまりありません。
ただ曲がポップというかブルーズにしては覚えやすいメロディでそれゆえバカ売れしたんだと思います。おそらくブルーズ界で最もヒットのある人でしかも今も歌い継がれている曲がたくさんある人です。今のYou Don’t Have To GoもR&Bチャートの5位、次の曲は3位まで上がった曲です。

2.Bright Lights, Big City/Jimmy Reed

ジミー・リードは歌が上手いわけでも、ハーモニカが上手いわけでも、ギターが上手いわけでもないのですが、その全てがとても個性的です。サウンドとビートから出るレイジーなユルいムード、歌は酔っ払ってるような時もあり(実際アルコール中毒で
晩年は大変やったらしいです)本当に家飲みしながら歌ってるような、つまりダウンホームさがあります。難しいことをしない、難しいことを歌わないつまり気取った感じがないわけです。これが南部からでてきて大都会シカゴで働く黒人たちにメチャ受けたわけです。
今の歌詞も「お前はあの大都会の明るい灯りに心を奪われて行ってしまうだね」と共感するような歌詞なわけです。
次はこのジミー・リードにギターを教え彼の曲で引きずるようなリズム・ギターを弾きそのグルーヴを作っていたエディ・テイラーです。彼もまたミシシッピで生まれ育った。

3.Big Town Playboy/Eddie Taylor 

エディ・テイラーはジミー・リードのバックとして有名ですが、他にもジョン・リー・フッカー、ウォルター・ホートンなどともレコーディングしているシカゴ・ブルーズの重要人物です。シカゴ・ブルーズの重要人物といえば次のジミー・ロジャースもマディ・ウォーターズやリトル・ウォルターのバッキングとして活躍した人ですが、自ら録音した曲が今もシカゴ・ブルーズのスタンダードとしてたくさん残っている人です。

4.Chicago Bound/Jimmy Rogers

曲調やビートがジミー・リードより垢抜けた感じがします。でも、全体のムードはダウンホームでやはりあまり気取った感じはないです。とにかくマディのバックでシカゴ・エレクトリック・サウンドを作ったとても重要なギタリストでもあるわけですが、しっかりと後世に残る自分の曲も録音していたところが素晴らしいです。次の曲もダウンホームな素朴さは残しつつも曲調は当時の新しいブルースの感じとサウンドです。

5.Walking By Myself/Jimmy Rogers

ダウンホームな感覚というのは関西弁で言うところの「いなたい」感じとも言えるのですが、つまり田舎臭いけどいい感じということです。来週はもう少しダウンホーム・ブルーズを探深掘りしてみようかと思います。