2017.09.01ON AIR

かって黒人音楽のメッカだったメンフィスの黒人音楽の継承を
伝えようとする映画”Take Me To The River”

Take Me To The River/Sound Track (CSAZ-0001)

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ON AIR LIST
1.Push And Pull/Bobby Rush featuring Frayser Boy
2.Ain’t No Sunshine/Bobby Bland featuring Yo Guti
3.Wish I Had Answered/Mavis Staples And North Mississippi All Stars
4.If I Should Have Bad Luck/Charlie Musselwhite and The City Champs

 

 

 

この春に”Take Me To The River”(約束の地、メンフィス)という映画が公開されました。かってソウルやブルーズの拠点だったメンフィスの音楽を振り返りながら、次の新しい世代が音楽の町メンフィスを受け継いでいくという内容でした。映画は感動するところもたくさんあり、亡くなったボビー・ブランドやオーティス・クレイの姿を見るだけでおっさんはウルウルしてしまいました。でも、メンフィス・ソウルの重要なシンガー、アル・グリーンやアン・ピーブルズが出てこないのはなぜか・・と、まあ不満な点もありましたが、メンフィスの音楽事情を知ってもらうのにはいい映画でした。今日はその映画のサントラ盤を聞いてみようと思います。先週ON AIRしましたチャーリー・マッセルホワイトもこの映画に出てきます。

まずは今年グラミーを受賞したボビー・ラッシュから聞きたいと思います。
歌っているのはメンフィスのR&Bに偉大な功績を残したルーファス・トーマスの曲で70年代のダンス・ナンバー
ボビー・ラッシュにぴったりの選曲です。
ボビー・ラッシュ フィーチュアリング フレイザー・ボーイ
1.Push And Pull/Bobby Rush featuring Frayser Boy
実はいま聴いてもらったようにほとんどの曲の途中でラップが入るんですよ。僕は別にラップを嫌いなわけではないんですが、もし、レジェンドと呼ばれるミュージシャンと若いミュージシャンをコラボするならそれは別にラップでなくてもいいだろうと思う。ラッパーではなくて若い歌手、ちゃんとしたシンガーがレジェンドたちの歌をどう引き継いで歌って行くかということなら僕はもっと興味が持てたと思う。
次は僕がいちばん「これはラップいらんやろ」とちょっとムカッとした曲でボビー・ブランドの”Ain’t No Sunshine”。曲は70年代にビル・ウィザーズがヒットさせたブルーズっぽい曲でビルも素晴らしいんですが、ボビー・ブランドもビルに負けないくらいいい歌を自分のアルバムで残してました。それを聴けると思ったらこれにまたすぐラップが入ってくるんですよ。ブランドはブルーズの世界の中でThe Manまさにこの男こそブルーズの男と言われた偉大なシンガーです。そこにラップはいらないです。ブランドの音楽を本当に愛しているならラップなんか要りません。ここは僕はっきり言うときます。ちょっと怒ってます。でも、聴いてもらわなわからんので聴いてください。ボビー・ブランドフィーチュアリング ヨ・ガッティ
2.Ain’t No Sunshine/Bobby Bland featuring Yo Guti
ボビー・ブランドは2013年に亡くってますが、この撮影の時もすでに車いす状態で録音している。それでスタジオに来てからラップと一緒にやると言われたような感じ。それもまったく面識のないラッパー。ブランドは優しいし、もう病気の身だし・・で「ラッパーとやるのはイヤだ」とは言えないでしょう。フィルムも回っているし。僕が監督なら、ブロデューサーなら絶対にブランドの歌だけで撮りました。言っておきますが、ラッパーの人たちにはなんの罪もないです。プロデュースの問題です。
今度ボビー・ブランドのAin’t No Sunshineのスタジオ盤いつか流しますよ。

それで次も大大大好きなメイヴィス・ステイプルズですが、彼女はオルタナティヴな白人の兄弟のロックバンド「ノース・ミシシッピ・オールスターズ」をバックに歌ってます。ラップはなしです。こういうコラボが正解やと思います。メイヴィスにもラップはいらないです。本当にレジェンドと読んでいるシンガーの歌を継承するなら、そのレジェンドの歌を壊さない無理をしないコラボのやり方が正しいと想います。
3.Wish I Had Answered/Mavis Staples And North Mississippi All Stars
ノース・ミシシッピの連中はメイヴィスの歌と音楽を実によく調べて、研究して、彼女の歌を引き立たせるサウンドを出しているしメイヴィスもご機嫌で歌ってます。これが若い人たちとコラボすることではないのでしょうか。

次のチャーリー・マッセルホワイトの映画の場面はめちゃ面白かったです。
プロデュースする側がインストの曲を用意して録音を始めるんだけど、なかなかいいテイクが取れなくてたぶんチャーリーも気に入らなくて、結局チャーリーは普通にブルーズやるんですが、それがすごくいいんですよ。バックはソウル・ジャズを演奏しているシティ・チャンプというメンフィスのバンド。
チャーリーの素晴らしいハーモニカから始まります。
4.If I Should Have Bad Luck/Charlie Musselwhite and The City Champs
バックのダウンホームなシャッフル・リズムと途中のギターソロも素晴らしい。いかにもスタジオのジャム・セッションというムードたっぷり出ていていいですよね。
つまりこういうことなんですよ。ブルーズのような赤裸裸な音楽にラップを加える必要はないんですよ。このシンプルな音楽の中でお互いに音のやり取りをするのがブルーズです。ラップいれてもそれは付け加えるだけでやり取りではなく、つまりコラボやないんですよ。
結局、僕自身がブルーズを歌っていても「こんなに歴史のある、深い、楽しい音楽がなぜもっとたくさんの人たちに聴かれないのだろうか」と思います。でも、聴いてもらいたいからブルーズに何か加えたり、変に換えてみたりということはしたくないです。ブルーズは生身のままがいちばんいいということを僕は確信しています。つまり、Real Bluesということです。