2017.09.15 ON AIR

オールドスクールスタイルのシカゴ・ブルーズ
「The Cash Box Kings」の新譜”Royal Mint”

Royal Mint/The Cash Box Kings (Alligator Records ALCD 4976)
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ON AIR LIST
1.House Party/The Cash Box Kings
2.Flood/The Cash Box Kings
3.Build That Wall/The Cash Box Kings
4.Daddy Bear Blues/The Cash Box Kings
5.I Come All The Way From Chi-Town/The Cash Box Kings

 

 

 

今日は現在シカゴを中心に活躍する「キャッシュ・ボックス・キングス」のニューアルバム「ロイヤル・ミント」を聴いてみようと思います。
「キャッシュ・ボックス・キングス」は白人のハーモニカのジョー・ノセクが中心になって作られたバンドで2003年にアルバム・デビューしています。40年代50年代のオールド・スクールのシカゴブルーズを目指すバンドとして人気も定着し、アルバムもコンスタントにリリースしていて今回で8枚目か9枚目になると思います。途中から黒人のオスカー・ウィルソンをヴォーカルに据えてバンドの評判が一気に上がりました。やっぱりブルーズは歌ですからね。
今回の主なメンバーはドラムは曲によってケニー・スミスとマーク・ヘインズが叩き、ギターはビリー・フリンとジョエル・ピーターソン、ベースはブラッド・バーというのがキャッシュ・ボックス・キングスとしてクレジットされていて、あとそこにゲスト・ミュージシャンが数人参加していて、そのゲストには僕の友達のピアノのLeeちゃんが参加しています。
まずはジャンプ・ブルーズ的な賑やかなブルーズからアルバムは始まります。
1.House Party/The Cash Box Kings

ジャンプ・ブルーズの王様のルイ・ジョーダンに同じ曲名の曲があるんですが、それとは違ってましたが誰の曲なんでしょうか。確かエイモス・ミルバーンにも同じ曲名があったと思います。
一曲目でこれからパーティが始まるよっていう感じですね。
実は2ヶ月ほど前に僕のライヴのホームである東京のライヴハウスJIROKICHIで演奏終わったあとに流れてたのが次の曲で、僕は思わずハーモニカのコテツくんに「これってマディ・・?やないよね」と言ったくらい歌声もバックもオリジナルのマディに似ていて笑いました。バックのミュージシャンたちも腕利きで、コピー能力がすごいのでほとんどマディのオリジナルのシカゴ・ブルーズ・サウンドの雰囲気そのままのムードが出ています。マディ・ウォーターズやというてもだまされる人がいると思います。
典型的な50年代シカゴ・ブルーズのアンサンブルでシカゴ・ブルーズが大好きな方は「いいね」と気持ちが落ち着く一曲やと思います。途中でピアノ・ソロが出てきますが、ピアノはLEEが弾いてます。
2.Flood/The Cash Box Kings
オスカーさんはマディの息子ビッグビルモーガンフィールドよりいい感じです。
そして4曲目に突如ロックンロールというよりロカビリーな曲が出てきます。最初にオールドスクールスタイルのシカゴ・ブルーズを目指す「The Cash Box Kings」と言いましたので、これはどういうことなんや?と思う方もいると思いますが、前からこういうポップ・ロカビリー的なレパートリーがあるようです。
ちょっと唐突な感じがしないでもないです。こういうロカビリーのセンスはハーモニカのジョー・ノセクらしいのですが、この曲も彼のオリジナルで歌も彼が歌ってます。
3.Build That Wall/The Cash Box Kings

アルバムの4曲目になっていきなりいまの曲が来て、ここで「このアルバムのコンセプトはなんやねん」という感じになる人もいると思います。とくに初めてキャッシュボックス・キングスを聴いた人は・・。箸休め的な感じでちょっとテイストの変った曲を入れるのだったら8曲目に入っている同じノセクさんが歌っている次のようなブルーズの曲で充分箸休めになると思うのですが、どうでしょう。
典型的なブルーズ・バラッドでちょっとジャズ・テイストというこの曲が、アルバムのコンセプトも守りつつ充分に箸休めになっていると思います。
4.Daddy Bear Blues/The Cash Box Kings
Leeのピアノ・ソロもバッキングのギターも見事です。
次はジョン・リー・フッカー・スタイルの曲で、ビリー・フリンとジョエル・ピーターソンのふたつのギターが本当に上手い。あえて希望を言うならもう少しミシシッピ的なアーシーな破壊力欲しいですね。ギター、上手すぎます。でも、歌がやはりいいので聴いてしまいます。
5.I Come All The Way From Chi-Town/The Cash Box Kings
現在のブルーズのあり方はすごく多様になっていて例えばキャッシュボックス・キングスのように、40,50年代の全盛期のシカゴブルーズをリメイクスするようなオールド・スクールなグループもあれば、今年グラミーのコンテンポラリーブルーズ部門を受賞した「ファンタスティック・ネグリート」のように歌詞の内容に現代のブルーズを入れ込んで、サウンド的にはファンクやロック、ヒップホップの要素を柱にブルーズを塗りこんでいるような人たちもいるし、ケブ・モのように戦前ブルーズを踏襲しながら弾き語りのブルーズをやる人、ロバート・クレイのようにソウルよりになっている人、ノース・ミシシッピー・オールスターズのようにルーツにブルーズを持ってオルタナティヴ・ロックをやる人、あと白人のブルーズロックなバンド、そしてバディ・ガイのように毎回違うものをやる人・・・いろいろいるんですが、何を指してブルーズというのか難しくなっています。
僕自身はシカゴ・ブルーズに固執するとか、ニューオリンズものだけとかという限定する気持ちもないし、オーソドックスなブルーズを守ろうという気持ちもないです。僕はブルーズ・ザ・ブッチャーでメンバーが好きな曲を毎回ある程度コンセプトを決めて、自分たちのバンド・サウンドで成り立つものということだけ意識しています。もちろん。個人的には出来てないこともたくさんあります。
ブルーズという音楽は昔に生まれたものですが、古い音楽ではないです。その音楽が新しいか古いかというのはブルーズを演奏する人が、聴く人が「オレ、古い音楽やってるんだよね」とか「古い音楽聴いてるんだ」と思えばもうそれは古いです。でも、昨日新しいものは今日には古いし、昨日古かったと思ったものが今日新しく思えるものもあります。僕はブルーズは、僕がやっているブルーズはいつもずっと新しいと思ってやってます。だからことさら新しさを意識してアルバムを作ったり、演奏することもないし、古いくていいものだから残そうという気持ちもないです。
また、ことあるごとに自分なりのブルーズへの気持ちはこの番組で言っていきたいです
今日はシカゴのいまのバンド「キャッシュボックス・キングス」の新譜ロイヤル・ミントを聴きました。