2017.09.29 ONAIR

多彩なブルーズ・ハーモニカが聴けるコンピレーション・アルバム

Blues Masters, Vol. 4: Harmonica Classics(RHINO R2 71124)

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ON AIR LIST
1.Juke/Little Walter
2.Help Me/Sonny Boy Williamson [II]
3.Rocket 88/Jimmy Cotton Blues Quartet
4.Steady/Jerry McCain
5.I Got Love If You Want It/Slim Harpo
6.Messin’ With The Kid/Junior Wells’ Chicago Blues Band

 

 

 

 

今日はブルーズ・ハーモニカを聴いてみようと思います。今日聴くアルバムはコンピレーション・アルバムでいろんなブルーズマンのハーモニカ・プレイが入ってます。これをリリースしているレーベルはいつも抜群のセンスでコンピレーションしてくれるライノ・レコード。タイトルはBlues Masters, Vol. 4: Harmonica Classics。かなり前に出ていたのを僕は中古盤屋さんでゲットしたものです。
ブルーズのハーモニカというのは本当にいろんな種類があって、いちばんよく知られているのがシカゴ・ブルーズ・ハーモニカ・スタイルだと思います。まあ、そのシカゴ・ブルーズのハーモニカにもいろんなスタイルがあって一概にこれがとは言えないんですが、まずはシカゴ・ブルーズのハーモニカ・プレイヤーとしてというよりすべてを含めたブルーズのハーモニカ・プレイヤーとしてトップにいまも立ち続けるリトル・ウォルター。聴いてもらうのはまだマディ・ウォーターズのバンドのメンバーだった時の録音で、ギターは御大のマディ、そしてギター名人ジミー・ロジャース、そしてドラムはエルジン・エルウッド。 R&Bチャートで1位になったリトル・ウォルターの1952年の大ヒット。
1.Juke/Little Walter
リトル・ウォルター22才の時の大ヒットJuke。ニューオリンズ生まれですが、なんせ12才(小学6年ですから)で家を出てニューオリンズへひとりで行ってからヘレナ、メンフィスあたりからシカゴへ流れ渡ったもう強者です。そのハード生き方を証明するように顔は傷だらけで、彼が喧嘩早い奴だったという話も納得の顔です。
初めての人はチェスレコードからリリースされているベスト・オブ・リトル・ウォルターをまずゲットするといいと思います。

次はリトル・ウォルターと双璧の実力者でウォルターとは違うサザン・ハープ、南部のハーモニカのスタイルを作りあげた偉大なブルーズマン、サニーボーイ・ウィリアムスン。南部のヘレナ、メンフィスそしてミシシッピーのハーモニカ・プレイヤーでこのサニーボーイの影響を受けた人はかなり多い。さっきのリトル・ウォルターはハーモニカの音をアンプを通したアンプリファイドした音にしてサウンドを作った人ですが、サニーボーイはアンプを通さないスタイルです。
彼は映像もいくつか残っていますが、かの伝説のロバート・ジョンソンと一緒に放浪の旅していたこともあり、歌もハーモニカもその演奏する姿からもなんか底知れない怖さみたいなものを感じます。
これから聴く「Help Me」もオレを助けてくれなかったら、オレの面倒を見てくれなかったらオレは新しい女を見つけるさという・・まあオレには女はいっぱいおるんやからな・・と暗に言うてる歌ですが、なんか怖いです。まあオレには女はいっぱいおるんやからなって言うてみたいですけどね。
1963年サニーボーイ・ウィリアムスン
2.Help Me/Sonny Boy Williamson [II]
いまの曲のムードが抜群にいいですよね。本当にブルーズの中のブルーズみたいな曲で曲のグルーヴ感とサニーボーイのなんか地獄の果てまで知ってるような歌声、そのあとに出てくるハーモニカ・プレイもまさにブルーズ。ブルーズのかっこよさ、クールさを持った名曲だと思います。
前も話ましたけどブルーズの世界にはサニーボーイ・ウィリアムスンがふたりいまして、いまのサニーボーイは本名アレック”ライス”ミラーで二番目のサニーボーイということでサニーボーイIIと呼ばれています。で、サニーボーイ1の方は2よりも先にシカゴで活躍したブルーズマンで本名がジョン・リー・ウィリアムソン。ブルーズのスタンダードになっている”Good Morning Little School Girl”を歌ってヒットさせた人です。
やはり、このサニーボーイ1の影響を受けた人もたくさんいるので外せないハーモニカ・プレイヤーですが、このアルバムには収録されていないのでまた次回紹介します。

シカゴに南部から続々と素晴らしいハーモニカ・プレイヤーがやってきたのが、40年代50年代で、次のジェイムズ・コットンも南部メンフィスで叩き上げのブルーズマンで、いま聴いてもらったサニーボーイ2に直接教えを受けた数少ないプレイヤーのひとつりです。最初はサザン・ハープ・スタイルでしたが、シカゴに移ってからはやはりアンプを通した豪快なハーモニカ・サウンドになっていきました。彼の多彩でパワフルなハーモニカもすごく魅力的です。
聴いてもらうのは1965年シカゴでの録音、当時はジェイムズではなくてジミー・コットンと記載されています。
3.Rocket 88/Jimmy Cotton Blues Quartet

僕は1976年にアメリカで初めて彼のプレイを生で聴いたのですが、ちょうど「100%コットン」というファンク・ブルーズの名盤をリリースした直後で、まあライヴはのけぞるくらいすごかったです。最後に唇から血を出すくらい激しいハーモニカ・プレイでした。
次はダウンホームなサザン・ハープの典型でもあるジェリー・マッケイン。
ゆったりしたシャッフル・ビートに乗って広がりのあるおおらかなハーモニカ・サウンドで南部の綿花畑を車で走っているような感じです。
4.Steady/Jerry McCain
こういうゆったり感はハーモニカもそうですが、バックの演奏もダウンホームにならないと出来ません。
最近はハーモニカが流行ってます。ハーモニカは手軽ですぐ音も出るものですから、日本でもたくさんハーモニカを吹いてブルーズをやる人が増えました。簡単そうに見えるし、聴こえますがハーモニカはなかなか奥深く難しいです。とくにブルーズのハーモニカはテクニックも多彩ですが、自分の音が出来てブルーズのムードが作れるのに時間がかかります。でも、身近ないい楽器ですからみなさんもひとつ買ってみて吹いてみてください。
次はルイジアナを代表するファンキーなブルーズマンで60年代のローリング・ストーンズはじめヨーロッパのロックバンドにもめちゃ受けしたスリム・ハーポ。所属したエクセロレコードの独特のサウンドと彼の歌とハーモニカ、そしてギターがぴったりとうまく合わさった唯一無二のかっこいいブルーズサウンドです。
5.I Got Love If You Want It/Slim Harpo
そして、最後はもう一度シカゴに戻り、リトル・ウォルターやサニーボーイの後輩にあたるジュニア・ウエルズ
ジュニアは歌にもハーモニカにも独特の匂いがある人で、この匂いが60年代シカゴのストリートのリアルなブルーズです。
6.Messin’ With The Kid/Junior Wells’ Chicago Blues Band

今日聴いてもらったこのアルバム「Blues Masters, Vol. 4: Harmonica Classics」には、他にもJimmy Reed、Billy Boy Arnold、Snooky Pryor、Paul Butterfield、Lazy Lesterなど素晴らしいハーモニカ・プレイヤーがたくさん収録されています。是非、ゲットしてみてください。ブルーズのハーモニカ・アルバムとしてお薦めです。