2018.05.18 ON AIR

LPレコードでブルーズを聴くシリーズ
Ain’t Nothing You Can Do/Bobby Bland (Duke – DLP-78)
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ON AIR LIST
1.Ain’t Nothing You Can Do/Bobby Bland(A-!)
2.Reconsider/Bobby Bland(B-4)
3.Blind Man/Bobby Bland(B-5)
4.Black Night/Bobby Bland(B-6)
5.Today/Bobby Bland(A-3)

ブルーズ・シンガーとして実力そして人気も頂点を極めていた60年代初中期のボビー・ブランドを代表する一枚「Ain’t Nothing You Can Do」
1964年デューク・レコードからリリース。当時ブランドは34才、もうブイブイです。興奮した女性がハンカチもってステージに上がり、ブランドの顔の汗を拭いている写真が残ってますが、たぶんその頃でしょう。同じメンフィスから名前を上げたジュニア・パーカーもB.B.キングも人気が安定した頃で、この人たちがみんな本当に歌が上手い。
そして、これはジャケットが面白いので小さなCDではなくできるならLPレコードでゲットしてください。一層楽しめます。

では一曲目アルバムのタイトル曲の”Ain’t Nothing You Can Do”
「頭が痛い時は薬飲めば治るし、休んだら気分はまたよくなる。背中が痛かったらマッサージしてもらえばいい、けど心の痛みはどうすることもできんよ」
1.Ain’t Nothing You Can Do/Bobby Bland
とてもかなわないゴスペル出身のダイナミックな歌い方を感じます。

次の”Reconsider Baby”はウエストコーストのブルーズマンのロウエル・フルソンがオリジナルです。僕もカバーしていますが、いかにもブルーズという感じの名曲だと思います。何度歌っても難しい曲です。
ロウエル・フルソンの武骨な歌もいいですが、しっかりとアレンジされたこのボビー・ブランドのカバーも素晴らしいです。
「さよなら、君が行ってしまうのをみたくはないけど。ずっと一緒にやってきたけどこうやって別々の道をいくやね。前は愛してるって言ってくれたけど君の気持ちはもう変ってしまったんやね。もうちょっと時間かけて考え直してくれへんか」という歌詞ですが、いつも言うてますが、女性の心はそうなったら変りません。
2.Reconsider/Bobby Bland
今日聴いてもらっている60年代のボビー・ブランドのデューク・レコード時代はしっかりアレンジされたホーン・セクションがついてゴージャスなアレンジになっています。いわゆるギター・サウンドのブルーズマンとは違うので違和感をもつ方もいる思います。実際、ブランドはコテコテのブルーズマンで売られていたわけではなく、ホーンセクションもありのややジャズ風味もソウル味も入った曲なので「よくわからなぁ」と思う方もいると思います。でも、基本ブルーズです。
チトリン・サーキットというのがあり、黒人のクラブばかりをまわるツアーのことですが、その黒人クラブではB.B.キングをしのぐ人気がありました。いわゆる黒人に訴える黒っぽさみたいなものがあるんです。

次はリトル・ミルトン、スティーヴ・ウィンウッド、グレッグ・オールマンなどカバーも多いボビー・ブランドの名曲。僕もブルーズ・ザ・ブッチャーのアルバム”3 O’Clock Blues”でブランドの”I Pity The Fool”をカバーして録音しましたが、ボビー・ブランドはいわゆるモダン・ブルーズ・シンガーのスタンダードなひとりで彼の歌をカバーするというのはひとつの憧れであり、挑戦であるわけです。もちろん彼ように歌えるわけはないんですが、挑戦してもいいかな・・と思えるくらいにはなれたかなと思ってカバーしました。だから、ブルーズを歌う人たちがブランドの曲をカバーする時にはそれなりの畏敬の念をもってやっていると思います。

3.Blind Man/Bobby Bland

ボビー・ブランドは曲も書かない、楽器も弾かない、ただ歌うだけのいわゆるスタンダップ・シンガーであるが故に、日本では本当に理解されていなくて昔来日した時もお客さんが少なかったです。B.B.キングと同期のブルーズマンでメンフィスでは互いにしのぎを削った仲ですが、B.B.はギターという歌以外のもので白人や日本人の中に入りこんで人気を得たということがありますが、ブランドはそれがない。歌だけですから、でも、ブルーズはギターではなくて歌、歌が主体なんですが・・・残念ながら亡くなったいまもブランドはなかなか日本で理解されません。
ふくよかな声を縦横無尽に使う歌のテクニックは群を抜いているし、素晴らしい曲もたくさんあるんですが・・・。

次はウエストコーストのピアノ・ブルーズマン、チャールズ・ブラウンが1951年にチャートの1位にしたブルーズの名曲ですが、このブランドのカバーも素晴らしい歌です。
「誰もオレのことなんか気にしていないし、友達もいない。彼女にもフラれた。こんなドツボがいつまで続くんやろ。ブラックナイト、暗い夜が始まる。とてもひとりになりたくない・・」と、彼女がいなくなってからずっとブルーな日が続くというブルーズの極みみたいな歌ですが、50年代ウエストコーストに住む孤独な黒人たちがこの歌にすごく共感したんでしょうね。
暗い夜が降りて来ると歌い始めるボビー・ブランドの歌のディープさを味わってください。
4.Black Night/Bobby Bland
もう7分くらいの力で歌っている感じです。
パワフルに歌ってももこんな風にすこし力を抜いて歌っても、元々もっている声がいいので・・なんか腹立つくらい楽勝で歌ってます。

今日聴いてもらったボビー・ブランドやB.B.キングを聴いているとやはりブルーズ界の大きな光を失くした感じがします。ブルーズという音楽がそれでなくなるわけではないんですが、ブルーズを追いかける者にとって目標となる大きな光がなくなっていくのは辛いですね。今日は偉大なブルーズ・シンガー、ボビー・ブランドをLPレコードで聴きました。