2018.08.24 ON AIR

ブルーズロックの大きなアイコン、エリック・クラプトンの集大成
今秋公開ドキュメントフィルム”Eric Clapton LIfe In 12 Bars” vol.2

Eric Clapton/ LIfe In 12 Bars(UNIVERSAL UICY-15738/9)
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ON AIR LIST
1.Bell Bottom Blues/Derek And The Dominos
2.Layla/Derek And The Dominos
3.I Shot The Sheriff/Eric Clapton
4.Nobody Knows You When You’re Down And Out/Derek And The Dominos

前回はデビューのヤードバーズからクラプトンのファースト・ソロ・アルバムまでで終わったんですが、そのソロを出した同じ1970年に彼は「デレク&ドミノス」を結成します。キーボード、ボビー・ウィットロック、ベースがカール・レイドル、ドラムがジム・ゴードンというメンバーですが、僕は個人的にクラプトンがいままでやってきたバンドでこのバンドがいちばん好きです。
クラプトンの持っているブルーズやブルーズだけでない他の音楽性もこの「ドミノス」で上手く表現できているし、オリジナルにも一層磨きがかかっていい曲がたくさんあります。
まずは僕が好きなこのオリジナル曲
1.Bell Bottom Blues/Derek And The Dominos
エリック・クラプトンとキーボードのボビー・ウィットロックの共作でBell Bottom Blues
I don’t want to fade away Give me one more day,please.I don’t want to fade away,In Your heart I want to stay(オレは消え去りたくないんだ、頼むからオレにもう一日くれ、君の心の中にいたいんだ)というサビの歌詞が格別いいです。そのメロディとクラプトンの歌、バックのサウンドすべてが悲しくて・・ソウルフルです

そして、次のこの有名曲です。親友であるビートルズのジョージ・ハリスンの奥さんパティを好きになってしまいこんな歌作ってしまったんですね・・レイラ。
いまのBell Bottom Bluesも彼女に対して書いたのではないかと思うのですが・・。
親友の奥さんを好きになってどうしょうもなく悩んでしまっているけど、彼女をあきらめきれない・・・。結局実生活ではパティをジョージから奪ってしまう。この歌の素晴らしさでごまかされてますが、略奪愛ですよね。ジョージの心境は・・・と僕なんか考えてしまうのです。
僕はこの曲のアウトロ、つまり歌が終わってそのままずっと演奏だけが続くんですが、そのアウトロが好きなので今日は最後まで聴いてください。
2.Layla/Derek And The Dominos
すごくいい曲がたくさんあり、当時のクラプトンの感情がすごくダイレクトに、ソウルフルにアルバムに表れたのがこのレイラのアルバムだと思います。このアルバムで僕はギタリストとしてだけでなく、シンガー・ソング・ライターとしての彼の才能を感じました。
いまの曲もそうですが、このアルバムにはデュアン・オールマンがギタリストで参加しています。そのデュアンの存在がまたいい意味でクラプトンに刺激を与えたと思いすま。
そして、1974年リリースの「461オーシャン・ブールバード」のこの曲を聴いて僕はボブ・マーリーを知り、そしてレゲエを知ることになりました。
クラプトンはいい音楽を見つけるミュージシャンでもあります。
3.I Shot The Sheriff/Eric Clapton
先週もクラプトンのこの言葉を言いましたが、クラプトンは最新のインタビューで「音楽を聴くことは、音楽を演奏できるようになることと同じくらい大切だった」と語っています。これはクラプトンだけでなくキース・リチャーズでもポール・マッカートニーでも、ボブ・ディランでももちろん歌ってギターを弾くことは大切ですが、同じように音楽聴くことがすごく好きなんですね。だからプレイヤーの前に音楽のリスナーとしてまず深く音楽に入って音楽をたくさん聴かないといいプレイヤーにはなれないということだと思います。この「音楽を聴くことは、音楽を演奏できるようになることと同じくらい大切だった」というのはいい言葉だと思います。だから、クラプトンはボブ・マーリーの音楽の素晴らしさを見つけられたんですね。

最近のクラプトンについては僕はあまり好きにはなれないのですが、やはりこうして彼の音楽歴を振り返ってみるとさすがです。
ただ、彼が「ブルーズ」という音楽の大きなアイコンになり過ぎた感じはあります。彼にとってブルーズは音楽の世界に導いてくれた最も大切な音楽だと思いますが、聴いてもらってるように彼はブルーズだけじゃないミュージシャンです。ブルーズマンという感じは僕はクラプトンにもってないです。素晴らしいロック・ミュージシャンです。
なのにブルーズというとエリック・クラプトンという名前が安易に出てくる。彼も行き詰まるとブルーズやるんですが・・・。
僕は彼がブルーズだけをやったアルバムは僕はあまり好きではないです。とくに歌は黒人のリアルなブルーズを聴いていると彼の歌が軽く感じます。でも、ギターは上手いです。クラプトンを大好きな人たちの中には彼の弾くブルーズギターが好きな人がたくさんいますが、ブルーズはギター・ミュージックではなくヴォーカル・ミュージックなんです。ブルーズという音楽は歌なんですよ。そこでこそ判断されるべき音楽だと僕は思います。
付け加えるならクラプトンは素晴らしいシンガー・ソングライターでオリジナルでこそ彼の本領は出ていると僕は思います。
では、最後に1920年代にベッシー・スミスが歌った古いブルーズのクラプトンのカバー。
「君が落ちぶれた時にはみんな君のことは知らんぷりやで」
4.Nobody Knows You When You’re Down And Out/Derek And The Dominos

先週と今週、2週に渡ってこの秋公開されるエリック・クラプトンのドキュメント映画”Eric Clapton LIfe In 12 Bars”のサントラ盤を聴きました。映画の公開が楽しみです。
最後のNobody Knows You When You’re Down And Outのオリジナル、ベッシー・スミスを是非聴いてみてください。