2018.11.02 ON AIR

追悼:アレサ・フランクリン vol.2
アレサのブルーズ

the Delta Meets Detroit: Aretha’s Blues/Aretha Flanklin (RHINO R2 72942)
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ON AIR LIST
1.Dr.Feelgood(Love Is A Serious Business)/Aretha Franklin
2.Good To Me As I Am To You/Aretha Franklin
3.Night Time Is The Right Time/Aretha Franklin
4.Night Life/Aretha Franklin

前回に引き続き、8月16日に逝去してしまった偉大なシンガー、「ソウルの女王」アレサ・フランクリンの追悼二回目です。
前回はアレサのヒット曲を聴いたのですが、今回はアレサのブルーズについて話したいと思います。
アレサは教会音楽ゴスペル出身のソウル・シンガーという捉え方が一般的ですが、その中には強いブルーズテイストが潜んでいます。
例えば、前回聴いたソウルを歌い始めたアトランティック・レコードでの最初のヒット”I Never Loved A Man The Way I Love You”もブルーズ・テイストがあります。
歌は重くブルーズ感は確かにあるのですが、ブルーズがもつ下世話な感じがしないブルーズです。彼女の声質や歌い方もあると思いますが、彼女の性格、気持ちも作用していると思います。
いまから聴く”Dr.Feel Good”はしっかりしたブルーズ・テイストを感じさせます。
「彼と一緒にいるとほかには誰もいらない。彼と愛し合っている時は何もいらない。医者もいらない。だって彼がドクター・フィールグッドと言う名前の医者だから。病気も苦しみも直して、めっちゃ気持ちよくさせてくれるから」
かなり官能的な歌詞でこれはアレサのオリジナルなんですが、インタビューで「この曲はとてもセクシャルですよね」と言われたアレサは「いや、これはセクシャルな歌ではなく恋愛の歌だ」と否定したという。思えば、アレサにはセクシーな、女を表に出して勝負するような歌はあまりないです。それは幼い頃から教会で育ち、ゴスペルを歌ってきたから彼女の中に培われたものなのかはっきりわかりませんが、・・・とにかく何を歌ってもどこかに品がある歌を歌った人です。
さあ、このセクシャルな歌をみなさんはどう聴きますか
1.Dr.Feelgood(Love Is A Serious Business)/Aretha Franklin
どうでしたでしょうか。彼がドクター・フィールグッドというだけでも僕なんかいろいろ想像してしまいますが・・。

彼女はこの曲以外にも”Think”,”Rock Steady”などいい曲を書いた優れたソングライターでもありました。
いま聴いてもらったのは”the delta meets detroit aretha’s blues”というコンピレーション・アルバムに収録されているもので、タイトルにブルーズとついているとおりアレサのブルーズっぽい曲を集めたものです。録音はすべてアトランティック・レコードなんですが、実はアトランティックに録音する前にアレサはコロンピア・レコードに在籍していて、その時にも”Aretha Sings The Blues”という「アレサ、ブルーズを歌う」というアルバムも出しています。ソウルの女王と呼ばれていましたが、とてもブルーズのテイストの強いシンガーでもありました。そのアレサの憧れだった女性シンガーがジャズシンガーのダイナ・ワシントンです。40年代から50年代に活躍してすごい人気だったダイナはジャズにしてはブルーズ色が濃くて「ブルーズの女王」とも呼ばれました。ダイナは男性遍歴も多く何度も結婚離婚を繰り返し、最後は麻薬中毒で亡くなりましたが女性の強さと弱さと可愛さが混在した歌はすごく魅力的です。亡くなったあとすぐにアレサはダイナへの追悼盤を録音したくらいダイナが好きだったのです。

次の曲もアレサのオリジナルのブルーズでギターをエリック・クラプトンが弾いてます。当時クラプトンはクリームの時代でレコード会社がアレサと同じアトランティック。「カラフルクリーム」というアルバムをレコーディングしている時にアレサのレコーディングを覗きにきていて、その時にアトランティックの社長のアーメット・アーディガンがクラプトンにギターを弾いてみたらと薦めたらしいです。クラプトンは天下のアレサフランクリンのバックでギターを弾くのにビビって、うまくいかなかったらしいです。それでクラプトンは翌日アレサがいない時にギターをもう一回入れ直したんですね。それがこの曲。
2.Good To Me As I Am To You/Aretha Franklin
当時イギリスでいちばんのロックギタリスト、エリック・クラプトンもソウルの女王、アレサの前では緊張して上手く指が動かなかったわけです。
僕なんかアレサとは口もきけないと思います。
いまの曲は68年の”Lady Soul”というアレサのアルバムに入ってるのですが、そのアルバムにはもう一曲”Sice You’ve Been Gone”という彼女のオリジナルも収録されています。そういうオリジナル曲の作詞作曲者の名前にアレサと一緒に当時の旦那のテッド・ホワイトの名前がクレジットされているのですが、旦那は印税欲しさに名前を入れただけで作詞も作曲もしてません。このぐうたらな旦那がずっとアレサを精神的に悩ましていたのは有名な話ですが、黒人音楽のトップに立ってもアレサは決して幸せではなく、一日にタバコを3箱吸ってお酒にも頼るほどヘヴィ・ドランカーだった時期です。
次はレイ・チャールズの1961年のアルバム”The Genious Sings The Blues”に収録されているのを、アレサはカバーしたのだと思います。レイのライヴではよく歌われていたブルーズです。
3.Night Time Is The Right Time/Aretha Franklin
レイ・チャールズはアレサの有名な71年のフィルモアのライヴアルバムに飛び入りゲストで出てきてふたりで歌う感動的なシーンがありますが、やはりサム・クック、レイ・チャールズ、そしてアレサ・フランクリン、この3人が60年代にソウル・ミュージックの土台を作ったことに間違いはないと思います。
この3人ともがゴスペルを持ち込んで新しくソウル・ミュージックを作ったのですが、この3人ともがブルーズ・テイストが強くてブルーズのアルバムもそれぞれ作っているところに、60年代の黒人音楽の土台作りが見えるような気がします。
来週アレサのゴスペルを聴きますが、有名な牧師さんの娘であり教会で育ってきたようなアレサですが私生活、日常生活ではすごくブルーで、そのゴスペルの聖なる心とブルーズの俗な心の揺れ動く気持ちが素晴らしい黒人ポップ・ミュージック、つまりソウルを作ったのだと僕は思います。
次は元々カントリーのウィリー・ネルソンの曲ですが、B.B.キングが素晴らしくブルージーなカバーを残したことでいまやブルーズとして捉えてる人も多いと思います。アレサもこの録音の少し前にリリースされていたB.B.のヴァージョンを聴いてたのかも知れません。
「ナイトライフ・・夜の生活はよくないと知ってるけどねでも、夜の生活が私の生活なの」
4.Night Life/Aretha Franklin

来週はアレサの音楽の原点であるアレサのゴスペルを聴きますが、改めて彼女が残した素晴らしい歌の多さにどれをON AIRしょうかと悩む日々です。
では、また来週!