2019.07.05 0N AIR

いまも輝く60年代サザンソウルシンガー、ボビー・パウエルの名唱

In Time/Bobby Powell (P-Vine PLP-712)
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ON AIR LIST
1.In Time/Bobby Powell
2.C.C.Rider/Bobby Powell
3.It’s Getting Late In The Evening/Bobby Powell
4.Cry To Me/Bobby Powell
5.Into My Own Things/Bobby Powell

ボビー・パウエルを最初に聴いたのはサザン・ソウルが好きな友達に作ってもらったカセットテープでした。1970年代中頃だったか。
そのカセットはあまり有名ではないサザンソウル・シンガーたちの珍しいシングル盤を録音したもので、その中でもボビー・パウエルの歌がすぐに気に入りました。
それで彼のレコードを探したけれど、当時彼のアルバムに出会うことはなかったのだけど、1980年に日本のP-Vineレコードがジュエルというレーベルのリリースを始め、そこで初めてボビー・パウエルのアルバム、今日聴いてもらう”In Time”と出会った。
では、まず僕がそのカセットで心を揺さぶられたボビー・パウエルの名唱、名曲です。

1.In Time/Bobby Powell
サザン・ソウルの匂いがプンプンする名曲でバックのリズムとサウンドもすべてが南部の素晴らしいテイストに彩られています。P-Vineからアルバムがリリースされた80年頃、日本ではちょっとしたサザン・ソウル・ブームでサザンソウル・フリークスの間では「ボビー・パウエルいいよね。日本に来ないかな」と話題に昇りました。当時オーティス・クレイやO.V.ライト、アン・ピーブルズとかサザン・ソウルのシンガーたちが相次いで来日していたので期待しましたが、彼の来日はなかったです。

ボビー・パウエルは盲目のシンガーでピアノも弾きます。同じように盲目でピアニストのレイ・チャールズの影響をやはり受けているようで、次の曲なんかにそのテイストが少し感じられます。
昔からあるブルーズで最初の録音は1920年代半ばの女性シンガー、マ・レイニーですが、57年にR&Bシンガーのチャック・ウィリスがカバーしてR&Bチャートのトップになりました。とにかくたくさんのカバーがあります。C.C.Riderの表記もSee See Riderというのもあります。そこからEasyRiderにもなっています。
See See RiderやEasy Riderは尻軽女、尻軽男という意味や浮気者という意味があって、この歌は「尻軽女よ、自分のやったことを見てみなよ。オレを惚れさせといてなんやオマエには男がおるんやんか。なんやねん」という歌です。
ボビー・パウエルのこの曲はR&Bチャートの12位まで上がりました。レイ・チャールズやボビー・ブランドなどが歌いそうなゴスペル・テイストのブルーズになってます。
2.C.C.Rider/Bobby Powell
ボビー・パウエルの1965年録音の”C.C.Rider”
チャック・ウィルス、レイ・チャールズ、ジャズブルーズのジミー・ウィザースプーン、ロックンロールのジェリー・リー・ルイス、ロックではグレイトフル・デッド、ブルーズではレッド・ベリー、ビッグビル・ブルーンジー、ライトニン・ホプキンス、ミシシッピー・ジョン・ハート、そして僕の大好きなエスター・フィリップスとまだまだいるんですが、これだけカバーされている曲も珍しいです。このブルーズに共感する人が多いということですね。

次はいかにも60年代のソウルという曲で途中のサックス・ソロなんかも60年代ソウルのムードたっぷりです。ウィルソン・ピケットやソロモン・バークが歌いそうな曲です。
3.It’s Getting Late In The Evening/Bobby Powell

このジュエルからリリースされているボビー・パウエルのアルバムは元々もっと小さな「ウィット}というレコード・レーベルからリリースされていました。
アメリカには一攫千金をねらった本当に小さなレコード会社がたくさんあります。当然売れなくてシングル、2,3枚出して終わりというレーベルもあります。この「ウィット」というレーベルは60年代中頃に出来たのですが、このボビー・パウエルのヒットおかげで結構シングルをリリースしています。ちなみにレーベル名の「ウィット」とはプロデューサーのライオネル・ウィットフィールドからつけた名前だそうです。

ボビー・パウエルはルイジアナのバトン・ルージュの生まれでやはり最初は教会のゴスペル・シンガーとして歌を始めています。
60年代に入ってR&Bの世界でデビューするのですが、その頃は南部のサザンソウルもすごく活気があった時代でオーティス・レディングはじめ、サム&デイヴやウィルソン・ピケット、O.V.ライトと素晴らしい歌手がたくさんいた頃です。彼もそういったシンガーにひけを取らない素晴らしいシンガーだということが次の一曲でもわかります。
もう教会にいるような気分させられるゴスペル・テイストのソウル・ナンバーで盛り上がったときのパウエルのシャウトがダイナミックです。
4.Cry To Me/Bobby Powell

ボビー・パウエルは70年代半ばくらいまではチャートに上がるようなヒットも出していたのですが、1980年頃からゴスペルの世界に戻ってしまいショービジネスの世界からはすっかり足を洗ったようです。
まだ生きていると思いますが、歌えるなら一度ライヴを聞きたいシンガーのひとりです。
最後は70年代初期の録音なのでファンク・テイストも入った重量感のあるダンスナンバーです。
5.Into My Own Things/Bobby Powell
2012年にはP-VineレコードがCDでこのアルバム”In Time”をリリースしているのでまだ中古屋さんにあるかも知れません。探してみてください。いいアルバムです。