2019.07.12 ON AIR

シカゴ・ブルーズの名門レーベル「チェスレコード」の兄弟レーベル「チェッカー」の蔵出しブルーズ vol.1

Blues From The Checker Vaults (ONE DAY MUSIC  DAY2CD245) 
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ON AIR LIST
1.All My Love In Vain/Sonny Boy Williamson II
2.Come On Baby/Rocky Fuller
3.Trouble Trouble/Lowell Fulson
4.Rocker/Little Walter
5.Crazy For My Baby/Willie Dixon

今日聴くのはここ数年レコード店でよくみかけるONE DAYレコードというイギリスのレーベル、レコード会社のコンピレーションです。
タイトルが”Blues From The Checker Vaults”というのですが、チェッカーと言うのは有名なチェスレコードの子会社というか兄弟レーベルでブルーズからリズム&ブルーズのたくさんミュージシャンが所属してました。このVaultというのはワインなんかのお酒の地下貯蔵庫という意味とか、貴重品の保管室という意味がありますが、Blues From The Checker Vaultsというのは「チェッカーレコードの貴重な倉庫からのブルーズ」という意味でしょう。
面白いのはサニーボーイ、エルモア・ジェイムズ、リトル・ウォルター、ロウエル・フルソン、J.Bルノアといった有名ブルーズマンが収録されているのに彼らのヒットしたものではなく、あまり有名ではない曲が選ばれているところです。
まずはサニーボーイ・ウィリアムスン
南部ですごい人気のあった彼をシカゴのチェスレコードがレコーディングに迎えたときは、ギターにロバート・Jr.ロックウッド、マディ・ウォーターズ、ピアノにオーティス・スパン、ドラムにフレッド・ビロウという錚々たるメンバーで出迎えました。この曲は1959年チェスがリリースした”Down And Out Blues”に収録されています。
ステディなミディアム・テンポのシャッフルビートが堪りません。まさにシカゴ・ビートです。
1.All My Love In Vain/Sonny Boy Williamson II
サニーボーイは南部にいた頃のブルーズも素晴らしくて、このチェスレコードで録音したものにひけをとらない素晴らしさなんですが、Sonny Boy Williamsonという名前を広く知らしめたのはやはりこのチェス・チェッカー録音。

次はロッキー・フラーという名前のブルーズマンなんですが、このコンピレーションの中でもひときわダウンホーム感がたまらん感じで印象に残ります。実はこのロッキー・フラーさんはルイジアナ・レッドというブルーズマンの若き日の芸名でなんですが、プレイボーイ・フラーとかギター・レッドとかいろんな芸名を使って最終的にルイジアナ・レッドになりました。そのルイジアナも別にルイジアナの出身でもルイジアナで活躍していたわけでもないんですね。ええ加減と言えばめちゃええ加減ですがおもろいです。本人に「なんで?」と理由を聞きたいところです。
2.Come On Baby/Rocky Fuller

次はB.B.キングが尊敬したロウエル・フルソン。フルソンは40年代半ばからレコーディングしていて初期の頃の録音はかなりいなたいです。モダン・ブルーズ・スタイルでやりながらもそのイナタさが残っていて、それが彼の大きな魅力になってます。
次の曲もホーン・セクションも入ってモダン・ブルーズ仕立てなんですが、フルソンの武骨な歌とギターがどこかいなたい男っぽさを感じさせてくれます。
とにかく歌がいいです。
3.Trouble Trouble/Lowell Fulson
フルソンは今日のこのチェッカー・レーベルでは1954年から約10年間在籍して”Reconsider Baby”というチャート3位まであがるヒットも出しました。
このチェッカーのあとケントレコードに移籍して”Tramp””Black Night””Too Many Drivers”とブルーズの名曲を残しました。

次はチェッカーと言えば、まずリトル・ウォルター。1952年にリリースしたインストルメンタル曲”Juke”がチャートの1位になって”Off The Wall”とか”Tell Me Mama”とか”My Babe”とかちょっと新しいリズム&ブルーズ的なテイストもありつつヒットを出していくのですが、当時まだ20代前半。キャデラックに女の子たくさん乗せてシカゴの街を走り回ってたそうです。親分マディ・ウォーターズの言う事だけは聞いたそうですが、あとはもう傍若無人。喧嘩も絶えない奴やったそうです。
1954年 ギター、デイヴ・マイヤーズとロバートJr.ロックウッド、ベースはウィリー・ディクソン、ドラムにフレッド・ビロウ、そしてハーモニカ、リトル・ウォルターという50年代シカゴ・ブルーズ鉄壁のメンバーで録音されたまさにロックしてロールするインストナンバー。
4.Rocker/Little Walter
うーん、やはりこれだけハーモニカで豊かな表現をできるブルーズハーモニカ・プレイヤーはいないですね。そしてリズムの素晴らしさ。
当時、50年代のシカゴのチェスレコードの全盛というのは、やはりベーシストでソングライターであったウィリー・ディクソンのプロデューサーとしての功績なくしては語れません。とにかく時間に遅れてくる奴、二日酔いでくる奴、酒がないと演奏できない奴、やたらギャラのことばかり言うやつ、とにかく一筋ならではいかないブルーズマンたちを集めてレコーディングですから。そこにちょっとした新しいエッセンスを落とした録音を残しました。その縁の下の力持ちウィリー・ディクソンの歌を聞いてみましようか。
5.Crazy For My Baby/Willie Dixon