2020.07.03 ON AIR

Sam Cooke-3

永遠に聞き継がれるサム・クックのヒット曲

The Man & His Music/Sam Cooke (RCA R32P-1041)

ON AIR LIST
1.Twistin’ The Night Away/Sam Cooke
2.Shake/Sam Cooke
3.Nothing Can Change This Love
4.Another Saturday Night/Sam Cooke
5.A Change Is Gonna Come/Sam Cooke

サム・クックは子供の頃からゴスペルを歌い始め、高校生の時には「ハイウェイQC’s」というグループで注目を浴び、その後ゴスペル・カルテットの「ソウル・スターラーズ」のリード・シンガーに抜擢されゴスペル界の新しいスターになりました。そのスターラーズに次第にポップ・ミュージックへの転身を考えていましたが、所属のスペシャルティ・レコードは乗り気ではなかった。そこでレコード会社をキーンレコードに移籍してジャズ・スタンダードを歌いながらポップ界のスターを目指しました。そして、1957年の”You Send Me”の大ヒットを放ったのを皮切りに自分のオリジナルソングをたくさんヒットさせました。
それらのヒット曲は60年代に作られて行くソウル・ミュージックの土台となり、レイ・チャールズやジェイムズ・ブラウンそしてモータウン・レコードの曲と並んで70年代へ続くソウル・ミュージックの原型を作りました。
今日はそのサム・クックの素晴らしいヒットソングを聴いてもらおうと思ってます。
最初の軽快なこのダンス・ミュージックは当時Twistというダンスが流行り、サムもそれに乗ってこの曲をリリースしたのですが、たくさんのミュージシャンが歌ったツイスト曲の中でも当時の代表的な一曲です。
「老いも若きも一晩中ツイストで踊ってるよ」という他愛ないパーティソングですが、イントロから何かいいことが始まるようなメロディで、聴いていると何か心がウキウキして明るくなります。
1.Twistin’ The Night Away/Sam Cooke
62年、R&Bチャート1位、ポップチャート9位。こういうポップな曲が黒人にも白人の若者にもウケて、片方でジャズ・スタンダードを歌いながらコパ・カバーナという白人の高級ナイトクラブでもショーをやり、テレビや映画にも出てサムは黒人白人という人種を乗り越えた活動を始めてスター街道をまっしぐらに進みます。

次の曲はオーティス・レディングの豪快なカバー・バージョンでご存知の方もいるかと思います。オーティス・レディングは1965年の”Otis Blue”というアルバムで歌っています。
タイトルのシェイクというのは60年代半ばに流行ったこれもダンスのことで、その踊り方を教えている歌です。これもパーティソングですがドラムのリズムパターンはじめ、アレンジが斬新で素晴らしいダンス・ナンバーだと思います。
2.Shake/Sam Cooke

サム・クックのすごいところというのは自分で自分をプロデュースできることです。アレサ・フランクリンやレイ・チャールズでもそうらしいですが、ひとつの曲を歌う時に頭の中にサウンドとかアレンジとかリズムとかが浮かぶそうです。いまでは自分で曲を作って、歌って自分で演奏して自分でプロデュース、アレンジするという人はたくさんいますが、サムの60年代最初にはほとんどいませんでした。
もっと言えばサムは自分のパブリック・イメージ、つまり世の中への自分の見せ方もしっかり作っていたような気がします。

とにかく歌を歌うことに関してはサムの独壇場で上手いのはもちろんなんですが、歌の説得力がすごくあり、次のラブソングも男の自分でさえこんな風に歌われたらそれは「ホレてまうやろ」になります。
昔僕もカバーしてレコーディングしていますが、聴いてもらえば僕が歌いたくなった気持ちわかると思います。
「もし、どんなに遠いところに行っても毎日君に手紙を書くよ。君への愛は変ることはないよ。君はとても大切な人で君はスイートなチェリーパイ、ケーキでアイスクリーム、シュガーそしてスパイス、僕の夢の女の子なんだよ」
スイートなラブソングです。
3.Nothing Can Change This Love/Sam Cooke
サビの最初にYou’re The Apple Of My Eyesと出てくるむんですが、この言葉は目の中に入れても痛くないほど大切な、可愛い人という意味で、この表現もいいです。

「また、土曜の夜がやってきた、そしてオレには誰もいないんだ。給料もらったから金はもってるんだけど。女の子とすごく話したいんだ。ひとりなんて最悪だよ」
お金があるのにせっかくの土曜日を一緒に過ごす彼女がいない。
4.Another Saturday Night/Sam Cooke
RCAレコードでヒットを連発して白人も巻き込みスターになっていく傍ら、サム自身のレーベル「SAR」からは黒人同胞のための音楽をつくり始め、サムはすごく忙しいシンガーであり、ソングライターであり、プロデューサーであり、そして会社を経営するビジネスマンとなりました。
黒人同胞へのサムの思いは当時の公民権運動、人種差別撤廃運動を通じてサムの中でどんどん大きくなっていきました。彼が亡くなる前に発表した次の曲はそういう差別や格差をなくして黒人に自由と貧困から脱出を願う彼のゴスペル曲だと僕は思います。
「川のそばの小さなテントで生まれ、その川の流れる様のように流れつづけてきた。そして長い月日が過ぎた。でも、もう変っていくんだ。きっと変っていく」
サムがこの曲に込めた自由と平等、格差差別を無くすことはいまだにアメリカで完全に実現されていません。ずっと差別され、貧しく、教育も受けられず、過酷な仕事につかされてきたけど、そろそろ時代が変って僕たちも幸せになれるはずだよという彼の思いはこの2020年になっても実現していないようです。最近のアメリカでの人種差別による暴動のニュースを知るとそうおもわざるを得ません。
5.A Change Is Gonna Come/Sam Cooke
1964年12月11日にサムはバーで知り合った女性とモーテルに入ってちょっと浮気をしょうとしたのでしょうか。その女がサムがシャワーを浴びている間にサムのサイフとかズボンを持って逃げました。それでサムはほぼ全裸で怒ってモーテルの管理人室に「あの女おらんか、隠してるやろ」と怒鳴り込んだのを、怖くなった女性の管理人がサムをピストルで撃ってサムはあっけなく亡くなりました。裁判で管理人は正当防衛で無罪になったのですが、いろいろと謎のあるサムの死でした。本当に残念な死です。