2020.07.24 ON AIR

いまの時代にもパワーをもつカーティスの曲、カーティス・メイフィールド・トリビュート盤

Moving On Up: The Songs Of Curtis Mayfield (PLAYBACK PBCD-010)

ON AIR LIST
1.Let’s Do It Again/The Staple Singers
2.Give Me Your Love/Barbara Mason
3.I’ve Been Trying/The Notations
4.Check Out Your Mind/Maxayn
5.Look Into Your Heart/Aretha Franklin

1999年にカーティス・メイフィールドが亡くなってもう21年が過ぎた。いまもなお多くのミュージシャンから敬意を払われているカーティス。そのカーティスの作った曲へのトリビュートアルバムがリリースされました。
アルバム・タイトルがMoving On Up: The Songs Of Curtis Mayfield
日本のリリースはBSMFレコードです。英語ですが一曲一曲丁寧な解説も入っています。

最初に聴いてもらうのは以前にもON AIRしましたが、1975年にカーティス自身のレコードレーベル「カートム」からリリースされた映画のサウンドトラック「Let’s Do It Again」に収録されているタイトル曲。歌っているのはステイプル・シンガーズ。
以前にも話しましたが、この「Let’s Do It Again」という映画が公開された75年に僕は偶然ロスの映画館で見ました。英語がすべてわからなくてもコメディなのですごく面白かったです。そして最後にタイトルバックが流れる後ろでこの曲が聴こえてきまして、あっメイヴィス・ステイプルズ!ステイプル・シンガーズ!だと興奮してそのままレコード屋に行った覚えがあります。いまもシングル盤もってます。
1975年R&Bチャート、ポップチャート共に1位
1.Let’s Do It Again/The Staple Singers
この映画は黒人俳優のシドニー・ポワチエが監督、主役していて邦題が「一発大逆転」でDVD化されているので興味のある方は是非。

次はバーバラ・メイソン
バーバラ・メイソンは70年代前半に「フィリー・ソウル」と呼ばれたフィラデルフィア・ソウルから出てきた女性ソウルシンガーです。都会的な柔らかいサウンドをバックに大人っぽいソウルをたくさん歌ってました。
今日聴くのは72年の”Give Me Your Love”というアルバムのタイトル曲で、カーティスはこのタイトル曲ともう一曲だけプロデュースしてます。
60年代中頃に10代で”Yes,I’m Ready”の大ヒットでデビューしたバーバラが、大人になった色っぽさもあり、キュートさもある歌声でいいです。
フィリー・ソウルの歌姫、バーバラ・メイソン
2.Give Me Your Love/Barbara Mason
カーティス・メイフィールド

次のコーラス・グループ”The Notations”はカーティスと同じシカゴで60年代の後半に結成されたグループですが、70年代中頃に少し有名になったのですがアルバムは一枚しか出てません。この曲もノーテーションズはシングルでリリースしたんだと思いますが、オリジナルは64年のカーティスのグループ「インプレッションズ」のアルバム”Keep On Pushing”に収録されていた曲です。ほぼオリジナル通りにカバーしていますが、やはり同じシカゴの大先輩コーラスグループ「インプレッションズ」の影響は強かったと思います。
「心から君が僕を愛していると思っていた。まだなぜ君のたったひとりの男になれないのかわかろうとしてきた」彼女が心変わりしてしまったことがわかっているけど、彼女にまだ愛が残っている
3.I’ve Been Trying/The Notations
本当にいい曲です。
この曲が入っている「インプレッションズ」のアルバム”Keep On Pushing”は是非聴いてもらいたいです。
カーティスは1958年に「インプレッションズ」を結成して音楽活動を始めたのですが、最初からソングライターとしての才能がありいま聴いてもらった”I’ve Been Trying”のような切ないラブソングから社会的な「ピープル・ゲット・レディ」みたいな曲まで書けた人です。プロデューサーとしても才能のあった人でステイプル・シンガーズ、アレサ・フランクリンなどの名盤を残しています。

この「Moving On Up: The Songs Of Curtis Mayfield」の一曲目の「マクサーン」というグループ名を見て、僕は「あれ?」と思ったのですが、このグループは70年代前半に活躍していたグループでグループ名は女性リード・シンガーのマクサーン・ルイスから取っています。実はそのマクサーン・ルイスは一時期日本に住んでいたことがありヴォーカルの先生やコーラスの仕事をしながら、僕の友達のギターの山岸潤史とライヴもやっていて聴きに行った想い出があります。元々彼女は60年代後半アイク&ティナ・ターナーのバックコーラス「アイケッツ」のメンバーで、アイケッツをやめてからこのマクサーンというグループを結成しました。一時期はテレビのソウル・トレインにも出たりソウル・ファンクの売れっ子でした。アルバムも3枚出しています。
とにかくすごくパワフルでソウルフルなヴォーカルで初めて聴いた時は、チャカ・カーンを聴いた時くらい驚きました。いまから聴いてもらうカーティスのカバー曲がマクサーンとしては最も有名かと思います。
1973年リリース
4.Check Out Your Mind/Maxayn
旦那がマイケル・アンドレ・ルイスと言ってこのバンドのキーボート・プレイヤーなのですが、74年にこのマクサーンが解散してからはモータウンレコードからマンドレという名前でシンセサイザーを多用したデジタル・ファンクというジャンルで活躍した人です。まあ懐かしい名前を見つけました。

カーティスは1990年にコンサートで会場の照明機材が上から落ちて体に当たり、それで下半身不随になってしまったのですが、そのあとに「ニューワールド・オーダー」という素晴らしいアルバムも出してくれたんですが、99年に糖尿病が悪化してなくなりました。まだ57才でした。
60年代のインプレッションズ時代も素晴らしいし、70年代に入ってソロになってからの「カーティス」とか「ルーツ」といったアルバムもクオリティが高い。映画のサントラもやり、プロデュースもやり、黒人ミュージシャンとして差別や貧困をなくそうと歌った人でもありました。
音楽だけでなくブラック・カルチャーの大きな存在でした。

最後に1976年カーティスがプロデュースしたアレサ・フランクリンのアルバム「スパークル」に入っている曲です。曲もすべてカーティスが書き下ろしてます。
5.Look Into Your Heart/Aretha Franklin
50万枚売れたゴールド・ディスクになり70年代アレサの久しぶりのヒット・アルバムになりました。ソウルの名盤です。

アルバムのタイトルのMove On Upというのは「動き出そう」という言葉で、自分の目的に向かっていろいろ困難なことがあるけど、とにかくMove On Up!
いい言葉ですね。いまコロナで混乱し人種差別反対の”Black Lives Matter”の動きの中、またカーティスのこの言葉が使われています。
今日もリモート配信ライヴでした。みんな、Move On Up!