2020.07.17 ON AIR

ジミー・ジョンスン 気を吐いた91才の新譜

Everyday 0f Your Life/Jimmy Johnson (Delmark/P-Vine Records PCD-24936)

ON AIR LIST
1.Every Day Of Your Life/Jimmy Johnson
2.Somebody Roan Me A Dime/Jimmy Johnson
3.I Need You So Bad/Jimmy Johnson
4.Better When It’s Wet/Jimmy Johnson

ジミー・ジョンソンという名前のギタリストはふたりいまして、ひとりはアラパマのマッスルショールズのスタジオミュージシャン、プロデューサーとして有名なジミー・ジョンソンで去年残念ながら亡くなっています。
今回聴くシカゴ・ブルーズのジミー・ジョンソンは1928年ミシシッビの生まれで、メンフィス経由で1950年にシカゴに移り住み、プロとして音楽を始めたのはちょっと遅くて31才。
弟のひとりがブルーズ&ソウルで有名なシル・ジョンソン、もうひとりがマジック・サムの録音でベーシストのマック・トンプソン。
ジミー・ジョンソンはブルーズのフレディ・キングやマジック・サム、そしてソウル系のデニス・ラサールやオーティス・クレイなど実にたくさんのミュージシャンのバックをしてきました。60年代終わりくらいから自分のシングルも出しましたがこれといったヒットは出ませんでした。
失礼ながら言えばマジック・サムやオーティス・ラッシュほどのスター性がなかった、華がなかったというか・・。またバック・ギタリストとしても例えばロバート・Jr・ロックウッドやマット・マーフィのように誰かのバックで、その曲に決定的に印象に残るようなギターを残したこともありません。
着実なバッキング・ギタリストですがテクニシャンと呼ばれるほどのギタリストでもない、失礼ながら・・。
でも、彼はずっとシカゴの音楽シーンにいて活動してきました。そして、なんと!91才で今回のアルバム・リリース。

まず一曲アルバム・タイトル曲
1.Every Day Of Your Life/Jimmy Johnson
以前からブルーズマンの高齢化が言われ続けてきましたが、ここ数年他界するブルーズマンも多くて全盛のシカゴ・ブルーズ・シーンを経験してきた人もこのジミー・ジョンスンとバディ・ガイくらいになりました。
彼はいままで三回来日してます。1975年にジミー・ドーキンスのバンドでギタリストとして初来日しました。その時のメイン・アクトはオーティス・ラッシュ。ラッシュは当時日本ですごい人気で、50年代にリリースしたコブラレコードからの曲が素晴らしくてその後ほとんど録音がなかったために伝説化していたところでの来日でした。日本でのブルーズブームも頂点に向かうところで日比谷野音はもうぎっしり超満員でした。
でも、その時のジミー・ジョンスンの印象ってほとんど僕はありません、失礼ながら。とにかくオーティス・ラッシュに気持ちが行ってしまってました。

1967年にフェントン・ロビンソンがリリース、ジミー・ジョンソンにとっては後輩にあたるフェントンですがジミーはフェントンのプレイが好きだったそうです。このSomebody Roan Me A Dimeはボズ・スキャッグスがカバーしたときに作詞作曲のクレジットを自分の名前にしてしまい、最後に裁判にまでなって結局フェントン・ロビンソンが裁判に勝ちました。しかし、ブルーズファンには「なんで貧しい黒人ブルーズマンの曲を金持ってるロックミュージシャンが自分の曲だとクレジットしてしまうのか」・・とボズは評判を落としました。
「誰かダイム(10セント)を貸してくれ、つき合ってたあの娘に電話しなきゃいけないんだ。長い間、あの娘に会ってなくて心配なんだ」
2.Somebody Roan Me A Dime/Jimmy Johnson
このアルバムを聴いていると91才の爺さんとは思えません。彼はツアーは止めたそうですが、いまでも地元シカゴのクラブには出ているそうです。
弟のシル・ジョンソンも何回か日本に来ているんですが、彼はなかなか才能もあるし時代の流れを読むことにも長けていて、ソウル・シンガーというカテゴリーですがブルーズも演奏して歌、ハーモニカもギターもこなしソングライターでもありプロデュースもします。1975年には”Take Me To The River”がR&Bチャートの7位になったり、82年にはファンクの”Ms.Fine Brown Frame”がヒットしたりと弟のシルはその時々でシーンに登場しました。しかしアニキのジミーはギター弾いて誰かのバックをやっても目立たない人で、失礼ですが60年代にはシングルも何枚か出したのですが売れませんでした。
60年代当時一緒にやっていたマジック・サムが歌っている曲をジミーは今回カバーしています。元々はB.B.キングのオリジナル。
3.I Need You So Bad/Jimmy Johnson

ジミー・ジョンソンはすごく秀でたブルーズマンでもなくスター性があるわけでもなかったのですが、ずっとシカゴのブルーズシーンで生きてきたわけです。いまも現役の年下のバディ・ガイは大きなフェスティバルにメイン・アクトで出たり、白人のロックコンサートにゲストで呼ばれたりするわけですが、僕はバディの大げさなパフォーマンスやこれみよがしに大音量でギターを弾きまくるスタイルが好きではないです。バディはショーマンとしてやっていると思うのですが、安っぽい感じがします。確かにライヴにはパフォーマンスも大切ですがもっと彼の内面的なブルーズを聴きたいところです。でも、あのパフォーマンスがすでにバディの売りになってしまってます。
そう考えるとジミー・ジョンソンはそういうショー的な売りもないです、失礼ながら。

彼がどういう風に考えて音楽を続けてきたのかわかりませんが、とにかく音楽から離れたくなかったのでしょう。
同じ年頃にはジミー・ロジャース、エディ・テイラー、マット・マーフィなどサポート・ギタリストとしても上手い人がたくさんいて、競争率の高かった時代だったと思います。
次はインストの曲なんですが、ジミーのおっさんは以外とこういうモダンなものをやりたがる人なんです。ラッシュと一緒に初めて来日した時も当時流行っていた「ソウル・トレイン」のインストのテーマ曲をやりまして、それがまあジョージ・ベンソンなら許せたんでしょうが、当時盛り上がっているブルーズ・ブームの中では評判よくなかったというか、なんかショボい演奏でした。そんなことをいま想い出しましたが、そういうモダンな新しいことをちょっとやるのが彼のご長寿の秘訣かも知れません。
僕も新しいリモート録音なんていうのに挑んでますが・・。
4.Better When It’s Wet/Jimmy Johnson

1980年にはメンフィスで初開催されたブルース・ミュージック・アワードで受賞し順調でしたが、1988年に巡業中に車の事故に遭いバンド仲間を失い、自身も怪我をして一時は音楽界から遠ざかりました。
91才ジミー・ジョンソンのニューアルバムを紹介しましたが、元気でまだまだがんばって欲しいです。
今日もリモート収録でした。まだまだコロナの収束が見えませんが、みなさんも気をつけてください。