2020.12.18 ON AIR

「78才とはとても思えないパワフルでソウルフルなドン・ブライアントの新譜」

You Make Me Feel/Don Bryant (Fat Possum Records CDSOL-5483)

ON AIR LIST
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
2.99 Pound/Don Bryant
3.A Woman’s Touch/Don Bryant
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant

4年前に74才でニューアルバム”Don’t Give Up On Love”を発表したドン・ブライアントが78才になった今年またニューアルバムをリリース!
高齢になるとまず声が出るのかという心配があるが、1曲目の最初の歌声を聞いて「バリバリやん」と78才の力強い歌唱にまず安堵。
安定した歌声で78才とは思えない。そして彼の実直な歌い方に「ああ、サザン・ソウル」と胸が熱くなる。
シャウトからファルセットまで喉がまったく衰えていないどころか歌の表現がまた深くなったように思える。
1曲目は新曲の”Your Love Is To Blame”。いまも曲を作る意欲が彼にはあり、それを最初に持ってくる誇りと気力に頭が下がる。
1.Your Love Is To Blame/Don Bryant
ドンは今更説明することもなく、60年代からメンフィス・ソウルの優れたソングライターとしても高く評価されている。ジョン・レノンが”One Of The Best Soul Records Of All Time”と言った名曲”I Can’t Stand The Rain”は奥さんのアン・ピープルズとの共作で、他にも”A Love Vibration”、”99 Pounds”など奥さんのアン・ピープルズに書いた曲があり、今回のアルバムではその”99 Pounds”が歌われている。
2.99 Pound/Don Bryant
今の曲は奥さんアン・ピープルズの1972年のアルバム”Straight From The Heart”に入っている。
70年代メンフィス・ソウルのトップ女性シンガーとして奥さんが売れた頃は、シンガーとしての活動は少し控えて裏方として彼女をサポートしていた。奥さんのアン・ピーブルズは素晴らしい歌手でチャーミングな女性で人気もすごくあり、70年代メンフィス・ソウルのクイーンだった。いまは病で彼女はリタイアしてしまい、もうステージを見ることもできないし、アルバムもリリースされない。でも、ドンはいい時も悪い時もずっと彼女に寄り添って生きてきた。そして、こうして長いアンとの人生の中で生まれて来る愛の歌をいまも僕たちに届けてくれている。

次の曲はドンが書いた新曲です
「何も育たない庭のように、家庭ではない家のように私は感じる。メロディのない歌のように、いつもひとりでいる男のように感じる。私に必要なものそれは女性のふれあいだ」僕はこの歌を聞いた時にひとりでいる中高年の男を思い描いた。死別したのか離婚したのか、理由はわからないが年老いてひとり暮らす男には燃えるような恋ではなくそっと手に触れてくれるような柔らかい愛が必要なのだ。静かにでも心のこもったふれあいが・・。
3.A Woman’s Touch/Don Bryant

1978年にO.V.ライトの来日公演がO.V.の体調不良ため中止になり、そのピンチヒッターとして来日したのがオーティス・クレイだった。O.Vへの期待が大きかったためにファンの間ではオーティス・クレイってどうなん?という感じで来日公園を迎えた。しかし、それは素晴らしいオーティスのソウル・ショーだった。自分が好きな、自分が信じた音楽にやはり間違いはないんだと確信させてくれたライヴだった。そのライヴでオーティスが歌った次の曲を作ったのがドン・ブライアントだ。
「列車が駅を出て行ってからぼくの人生は坂を下っていくようなものだ。流す涙に慰めもない。生きる気力を君はうばいさってしまった。君がいなくなってから僕は少しずつ死んでいくようなものだ。帰ってきてくれないか、ベイビー」 
4.I Die A Little Each Day/Don Bryant
本当にいい曲を作ります。
ドンはソウル・シンガーとしては大きなスターになった人ではなかったのですが、この晩年になってからの彼の頑張りは素晴らしいです。やっぱりいい曲を書く人でいい歌を歌う人です。
そして、今回のこのアルバムを後ろで支えているドラムのハワード・グライムス、オルガンのチャールズ・ホッジズ、キーボードのアーチー・ターナー・・とかってのメンフィス・サウンドの要たちが元気でいまも演奏していることが何より嬉しい。コロナが収まったらもう一度彼らと一緒に来日して欲しい、ドン・ブライアント。
もう一曲。
5.Walk All Over God’s Heaven/Don Bryant
78歳、現役。