2021.02.19 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.25
メンフィス・ブルーズ vol.2

Bootin’ /The Best Of The RPM Years/Rosco Gordon (ace CDCHD 694)

King Of The One Man Bands (Key Postwar Cuts 1949-1954) /Joe Hill Louise (JSP Records JPS 4208)

A Sun Blues Collection/RHINO(SUN) R2 70962)

ON AIR LIST
1.Booted/Rosco Gordon
2.No More Doggin’/Rosco Gordon
3.Just A Little Bit/Rosco Gordon
4.Boogie In The Park/Joe Hill Louise
5.Mystery Train/Little Junior’s Blue Flames

前にも一度このブルーズ・スタンダード曲集でメンフィス特集をやり、その時はB.B.キング、ボビー・ブランドなどの名曲を取り上げたが、今日の一曲はその二人とほぼ同時期にメンフィスで人気のあったロスコー・ゴードンから選曲。
ロスコー・ゴードンはマーティン・スコセッシ総監督の映画”The Blues Musical Jauney”の「メンフィスへの道」というフィルムに登場したので覚えている方もいるかも知れません。
歌手でピアニストで素晴らしいソングライターでもあるのですが、映画の中で確かタワーレコードみたいなところで「オレのアルバムなんかもうないよな」なんて弱気なこと言ってましたが、いやいやあなたの作った曲は今も生きてますよと言いたい。
1952年R&Bチャートに13週間1位をキープしたブルーズからリズム&ブルーズに移り変わる時代の大ヒット曲。
1.Booted/Rosco Gordon
いまの曲はシャッフルのビートだがピアノの左手でこのビートの裏のリズムを強調しているのがロスコーのリズムの特徴だ。そしてこのウチャウチャウチャウチャというリズムが遠く海を渡りジャマイカに届いて、ジャマイカ独特のスカというリズムになり、それがその後レゲエになった。
ぼくも知らなかったのですが、ジャマイカでは60年代アメリカのブルーズやソウルがすごく人気でそれを自分たちのビートやサウンドでやっていてスカが生まれ、そのあとにレゲエが生まれたという話。
だからロスコーは世界的な音楽の功績を残した人としてもっと評価されるべきです。

次の曲も同じような彼のロスコー・シャッフルの曲で52年にチャート二位まで上がった。「愛してるって言われておまえのために金使って酒も奢ったけど、もう俺を振り回すのごめんやで」
ファンキーだけど歌にどこかダウン・ホームなゆったり感があるところがミソかな。
2.No More Doggin’/Rosco Gordon
ファンキーなテイストがあるブルーズでまさに黒人音楽がブルーズからR&Bへ移行して行ったのがわかる時代だ。

日本のブルーズ・ファンの間では完全にスタンダードになっている次の”Just A Little Bit”はマジック・サムのヴァージョンでよく知られているが、実はロスコーの曲。
私も最初はサムのヴァージョンを聞いた。ロスコー・ゴードンがオリジナル録音。1959年。
サムのパキパキのソリッドなヴァージョンとは違うどこかゆるいファンキーさがあり、歌も明るい感じでいい声してます。
どっちのバージョンも素晴らしいけどとにかく曲がいいです。
ほんのすこしだけ君の愛が欲しい。永遠に君が欲しい・・と熱愛の曲。
3.Just A Little Bit/Rosco Gordon

次の曲はスタンダードというほど有名ではないけれどどうしてもこの手のタイプの曲をスタンダードに入れておきたい。
1940年代から50年代にメンフィスで活躍していたジョー・ヒル・ルイス。彼はワンマンバンド、つまり歌とギターとハーモニカそしてドラムのバスドラとハイハットを一人で演奏するスタイルで鳴らしたブルーズマン。ロスコー・ゴードンやB.B.キング、ボビー・ブランドが人気になる前の時代にメンフィスの人気者だった。
確かB.B.キングが若き日のメンフィスの思い出でこのジョー・ヒル・ルイスのことを話していました。メンフィスの有名な歓楽街であるビール・ストリートで人気があった、そんなストリート感が彼のブルーズにはある。同じワンマン・バンドのドクター・ロスと並んでワンマンバンドの双璧。
モダン・レコードやメンフィスの有名レコードレーベル「サン・レコード」に録音を残しているが、サン・レコードのオーナー、サム・フィリップスは「ジョー・ヒル・ルイスはいつも身なりがおしゃれでこざっぱりしていた。一匹オオカミ的でつるまない男だったが、フレンドリーで寂しい男ではなかった」と言っている。
「日が暮れるまで彼女と公園でブギして街でもブギして朝までブギして、喧嘩するときもあるけどまた仲直りして一晩中ブギ」
4.Boogie In The Park/Joe Hill Louise

『サン・レコード」が有名になったのはロックンロールのエルヴィス・プレスリーが初録音したからだが、実はオーナーのサム・フィリップスはブルーズが大好きで駆け出しのB.B.キング始めハウリン・ウルフ、ルーファス・トーマス、リトル・ミルトンなどブルーズマンをたくさん世に出している。次のジュニア・パーカーもその一人。まだリトルがついてリトル・ジュニア・パーカーと呼ばれていた頃の曲
「16両編成の列車がオレの彼女を連れて行ってしまった」
5.Mystery Train/Little Junior’s Blue Flames
私もカバー録音していますが、エルヴィス・プレスリー、アーロン・ネヴィル、ザ・バンド、ジュニア・ウエルズ、ポール・バターフィールドなどブルーズ、ロック問わず多くのミュージシャンにカバーされた曲です。このTrainつまり列車というのがブルーズの歌詞の中ではよく出て来るキーワードの一つで、自分が列車の乗ってどこかへいくという歌もあれば、この歌のように彼女が行ってしまうというのもあります。