2021.02.12 ON AIR

ブルーズ聞いて半世紀まだまだ知らないブルーズマンたちがたくさんいる

DOWN HOME BLUES / New York Cincinnati & The North Eastern States (Wienerworld WNRCD5104)

ON AIR LIST
1.I Love You, Baby/Wilbert “Big Chief” Ellis
2.Boa Hog Blues/Irene Wiley
3.Wrap Me Up Tigjht/Gabriel Brown
4.Gonna Pitch A Boogie/Bob Camp & His Buddies
5.Walkin’ Down Hill/Otis Hinton

半世紀近くブルーズを聞いているのにまだまだ聞いていない曲がたくさんあることに改めて嘆息している。
今日はこの前ON AIRしたDOWN HOME BLUES / CHICAGOの続編でニューヨーク編のアルバムCD4枚組ボックスセット
まずは一枚目の最初に2曲収録されているウィルバート”ビッグチーフ”エリス・・全く知らない、名前を聞いたこともないピアノ・プレイヤーのブルーズマン。ボックスに入っているブックレットを読むと1914年にアラバマのバーミンガムで生まれて叔母さんの家にあったピアノで独学でピアノを覚えて、10代の終わり頃には地元のダンス・パーティなどで弾き始めた。1939年から42年まで軍隊に行って除隊後はニューヨークに移り住んでタクシーの運転手やナイトクラブのマネージャーやっていた。その頃にのちにデュオで有名になるブラウニー・マギー&サニー・テリーのギターのブラウニーと知り合い1949年にレコーディングになるのだが何故かリリースされなかった。それで音楽では食べれなかったからかワシントンに移って彼の兄弟とリカー・ショップ、酒屋を始めて音楽をやりにニューヨークへ時々通う生活をしていたが60年代には音楽をやめてしまったらしい。70年代には故郷アラバマに戻り77年に心臓病で亡くなっている。
1.I Love You, Baby/Wilbert “Big Chief” Ellis
有名なシティ・ブルーズのピアニスト、リロイ・カーが作るような叙情的なブルーズでいい感じです。

次はアイリーン・ワイリーという女性シンガー。この人も初めて聞くシンガーでライナーを読むと1901年にミズリー州で20年代
にはアーカンソーでピアノを弾くお兄さんと二人でやってたんですが、その後20年代半ばにニューヨークに移り住みます。売れることを夢見て大都会へ行ったのでしょうか。ニューヨークでいろんなミュージック・ショーにでるうちにレコーディングのチャンスが来てオーケー、ブラウンズウイック、コロンビアといったレコード会社で録音するのですが、これと言ったヒットにはならずアイリーンはレビュー(歌と劇があるようなショー)にでます。40年代にも少し録音はあったがヒットにはならなかった。その後ピアニストのお兄さんがベビー・スモーカーで体を壊してしまってその看病のためにアイリーンは音楽をあきらめます。でも看病の甲斐もなく64年にお兄さんは亡くなり、アイリーンもおんがくシーンから消えてしまいました。娘さんによると79年に亡くなっています。
2.Boa Hog Blues/Irene Wiley
1946年ニューヨーク録音 たぶんニューヨークにはこういう女性シンガーがたくさんいたんでしょう。しっかりした歌だし声も悪くないしバックもしっかりしているし、これと言って悪いところはないのですが、あえて言えば曲がよくある感じでアイリーンの歌もすごく個性的というわけでもない。

次のガブリエル・ブラウン、何かコンピレーション・アルバムで聞いたような気もするが・・・。
ガブリエル・ブラウンはフロリダ出身で30年代から40年代に活動していたブルーズマンなのだが、当時にしては珍しい大学を出ている黒人ブルーズマンだった。1910年の生まれで30年代の中頃に黒人女性の作家であり民俗学者のゾラ・ニール・ハーストンがフロリダでフィールド・ワーク(現地調査)していた時に彼が演奏しているのを聞いて感銘を受けたのが最初。彼女は知り合いだったアメリカ国会図書館にブルーズやフォークを録音していたアラン・ローマックスに連絡してガブリエル・ブラウンは世に出ることになった。面白いのは映画「市民ケーン」で監督をやり、「第三の男」では主役をやったオーソン・ウェールズが監督する演劇の仕事にカブリエルは携わっている。何をやっていたのか、多分芝居に音楽をつけるようなことをしていたのだと思う。それ以降ニュージャージーに住んでニューヨークでの録音などあるが大きなヒットはなく1952年で録音は途絶え、音楽シーンからも消えてしまった。1972年に故郷フロリダでボートの事故で亡くなったとされている。
3.Wrap Me Up Tigjht/Gabriel Brown

次のボブ・キャンプというブルーズマンは本当に知られていない人だが、1945年録音のこのブギの曲なんかルイ・ジョーダン風でなかなかいいと思う。シカゴ生まれだけどニューヨークに録音に来ていたのか、住んでいたのか定かではないけれど、録音も少なく有名にはなれなかったのだろう。1956年に最後の録音セッションをシカゴでやって亡くなっている。
4.Gonna Pitch A Boogie/Bob Camp & His Buddies
ダンサブルなジャンプ・ブルーズでいいです。
確かこの曲はWe Gonna Pitch A Boogie Woogieというタイトルでハーレム・ファッツがヒットさせたのが最初だったと思います。

今日は最後まで私も知らないブルーズマン。オーティス・ヒントン。1925年ミシシッピの生まれで多分残されている音源は78回転のレコードの二曲だけ。1953年になぜニューヨークのスタジオで録音されたのかよくわかりません。1985年に故郷ミシシッピで60歳で亡くなってます。その残された二曲のうちの一曲です。
5.Walkin’ Down Hill/Otis Hinton

このDown Home Bluesのニューヨーク編は正式には”Down Home Blues/New York Cincinnati&The North Eastern States”というタイトルですが、とにかく知らないブルーズマンがたくさん収録されていて新たにブルーズを探す喜びや感動を感じています。
テレビなどで知っているミュージシャンのアルバムを買って聴く人が多いと思いますが、自分が全く知らないミュージシャンの音楽を聞いてそこからまた自分にとって新しいものを探していくのも音楽を聞く大きな楽しみだと思います。