2022.08.19 ON AIR

恋人やセックスを比喩するために使われるブルーズの中の動物たち/ブルーズ・パワー版「ブルース生き物図鑑」その3

Little Blue Bird / Johnnie Taylor(Stax)
Slim Harpo Sings “Raining In My Heart” / Slim Harpo (Excello)
Rag Mama Rag/Blind Boy Fuller(Vocation / P-Vine)
Sensation / John Lee Hooker (Modern/ACE)

ON AIR LIST
1.Little Blue Bird / Johnnie Taylor
2.King Bee / Slim Harpo
3.Bull Dog Blues/Blind Boy Fuller
4.Crawlin’ King Snake / John Lee Hooker
5.Hound Dog / Big Mama Thornton

昔、女性歌手アイドルの方に「私の青い鳥」という歌がありました。ブルーズ&ソウル・シンガーのジョニー・テイラーのLittle Blue Bird 「小さな青い鳥」も同じで、彼女が一緒にいたくれたら幸せなんだけど・・という日米共通の幸せの青い鳥ネタのブルーズ。
自分の回りを飛び回っているに青い鳥、つまり彼女に「俺の木に止まってくれないか。彼女が飛んでいるのを見ると彼女の翼を切りたくなる。そしたら2人で巣を作って君にいいもの買ってあげるよ」という内容。
想像するに男にモテる可愛い娘で夜遊びをしている。その娘を自分だけのものにしたいと願っている歌ではないでしょうか。
メンフィス、スタックス・レコードのドラム、プロデューサー、アル・ジャクソンはじめ鉄壁のバックで固めたブルーズ&ソウルの名曲。

1.Little Blue Bird / Johnnie Taylor

この曲は自分もウエストロード・ブルーズバンド時代にカバーして歌ってました。歌っているオリジナルのジョニー・テイラーはブルーズもソウルも歌えるシンガーで”Who’s Makin’ Love”や”Disco Lady”など大ヒットがありブラック・ミュージックでは重要なシンガーですが、残念ながらギターを弾かないので日本では人気が出ません。すごく素晴らしい歌手なのでアルバムを聴いて欲しいですね。何度も言いますが、ブルーズはヴォーカル・ミュージックでギター・ミュージックではありません。

次の曲は蜂を題材にしています。ブルーズでは有名な曲でローリング・ストーンズも1stアルバムでカバー。原曲はルイジアナのブルーズマン、スリム・ハーポ。
ダウンホームでありながらビートはステディでグルーヴ感があるエクセロ・レコード独特のサウンドです。ハーポというくらいでギターを弾きながらハーモニカも吹きます。歌声もすごくいい。全体にポップな感じもありブルーズを初めて聞く人も入りやすいブルーズではないかと思います。
歌詞は「俺は王様蜂(King Bee)。お前の巣の周りをブンブンと羽音をさせながら飛び回ってるんだ。お前の巣の中に入れてくれよ。ハツミツを作ってやるからさ。すごいハチミツを2人で作ろう」これセックスのことを歌っているんですが、最後の方で「俺は一晩中、羽音をブンブンさせることができる。お前の男がいない時にはもっとやれるんだ」になるんですが、まあ精力溢れる間男だと歌っているわけで笑えます。

2.I’m A King Bee / Slim Harpo

次は1930年代のギター・ラグの名手、ブラインド・ボーイ・フラーの曲で8小節で繰り返されるブルーズ。有名な”Key To The Highway”と同じような構成。やはりギターの名手はリズムがいい。歌詞が「ブルドッグを買ってシェパードとグレイハウンドも二匹買うつもりだ。そして背の高い黄色い女2人と黒人とブラウンの女を1人ずつゲットするんだ」とそのあとも歌詞に整合性がなく何を言いたいのかよくわかりません。

3.Bull Dog Blues/Blind Boy Fuller

次は蛇。ブルーズでは蛇は男のセックス・シンボルを意味します。こんな話ばかりですが・・。
この曲はトニー・ホリンズというブルーズマンが最初に歌ったそうですが、ジョン・リー・フッカーのバージョンでヒットしました。「オレは這い回る蛇の王様。俺の巣穴は他の奴には使わせない俺のものだ。俺は死ぬまで這い回ってやるさ」1949年の録音。終生這い回ったジョン・リーが歌い続けた彼の代表曲。

4.Crawlin’ King Snake/John Lee Hooker

もうこのジョン・リーのグルーヴとムードに取り憑かれてしまうと私みたいに次から次と彼のアルバムを買ってしまう病気になります。
これで三回ブルーズ・パワー版「ブルース生き物図鑑」やりましたが、Blues & Soulレコーズ誌のバックナンバーがまだあると思いますからぜひ読んでください。付録のCDも含めてブルーズのことを楽しく知ることができます。
このシリーズの第一回目が犬だったので最後も犬で。ブルーズにおいてはどちらかというとDogはあまりいい意味で使われてないようです。哀れな奴と意地汚い奴とか次の歌も女性にくっついて働かないヒモのことをDogと言ってます。おそらくDogとつくタイトルでいちばん有名なブルーズではないでしょうか。プレスリーのカバーでも有名ですが、1952年女性ブルーズ・シンガー、ビッグ・ママ・ソーントンが歌った大ヒット。

5.Hound Dog/Big Mama Thornton