2022.09.23 ON AIR

エルヴィス・プレスリーに大きな影響を与えた歌手ロイ・ハミルトン

Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

On Air List
1.You Can Have Her/Roy Hamilton
2.Unchained Melody/Roy Hamilton
3.I’ll Come Running Back to You/Roy Hamilton
4.I’ll Come Running Back to You /Sam Cooke
5.Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

私も長い間ブラック・ミュージックを聴いて来たのですが、今日のロイ・ハミルトンは名前を知っているだけでなんとなくずっとスルーして来ました。しかしこの夏にエルヴィス・プレスリーを取り上げた映画「エルヴィス」が公開されて、エルヴィスに影響を与えたシンガーの中にロイ・ハミルトンの名前があり一度しっかり聴いてみようと今回アルバムをゲットしました。
エルヴィスは黒人のブルーズやR&B,ゴスペルそして白人の音楽であるカントリー&ウエスタンやヒルビリーに影響を受けて自分の歌唱スタイルを築き上げたシンガーです。貧しい白人家庭に生まれた彼は黒人たちが住むのと同じ地域に住んでいて自然と黒人音楽に親しんでいました。1950年代という時代に白人であるエルヴィスは音楽によって人種の壁を超えていったシンガーでもありました。その中に今日のロイ・ハミルトンが彼の大好きなシンガーとしていました。
ロイ・ハミルトンは1929年ジョージア州の生まれ。黒人シンガーとしては珍しくオペラやクラシックの歌唱法を勉強し、しかも教会でも歌っていたのでゴスペルの歌唱もできるシンガー。ハミルトンはエルヴィスはじめジャッキー・ウィルソン、”Good Rockin’ Tonight”の大ヒットがあるロイ・ブラウンはじめ多くのシンガーに影響を与えたシンガーです。特にプレスリーに与えた影響は強くて時々「ああ、こういう歌い方をエルヴィスは真似したんだな」とわかるところがいくつかあります。50年代の半ばに大手のエピック・レコードからデビューして”You’ll Never Walk Alone”がR&Bチャートの1位になり。そのあと次々とヒットを出すのですが、なんでも歌ういわゆるスタンダード・シンガーのスタンスなのでぼくはあまり興味がもてなかったのです。
エルヴィス・プレスリーはリトル・リチャードやジャッキー・ウィルソンなど黒人のブルーズ、R&Bシンガーの影響を受けたと言われているのですが、一番影響を受けたのは間違いなくこのロイ・ハミルトンでしょう。個人的にも2人は交流があったようです。

1.You Can Have Her/Roy Hamilton

基本的にバリトンの声なのですが高音へ行く時の声の伸び方が尋常じゃないです。音域の広さも歌のダイナミズムもすごいです。ライヴでこれを聴いたら興奮するでしょう間違いなく。
ロイ・ハミルトンはいくつかニックネームがあって”Mr.Rock And Soul”とか”The Gentle Giant”更には”The Golden Boy Of Song”なんていうのもあります。とにかく歌のうまさは最初から高く評価されていました。いろんな曲を聴いてみると彼を少し前に売れていたナット・キング・コールのように白人にも受けるシンガーにしょうとするレコード会社の意図が感じられます。バックはオーケストラでストリングスも入れてコーラスも入れてゴージャスなサウンドにしてますが、そこが僕があまり好きではないところです
次の歌なんかも彼の歌を聴かせるにはオーバー・アレンジで楽器が多すぎると思います。
白人のライチャス・ブラザースもロイの影響を受けたグループですが、次の曲は映画「ゴースト」で使われていたので知っている方も多いと思います。映画ではライチャス・ブラザーズのバージョンが使われてましたが、今日はロイ・ハミルトンで聞いてみてください。

2.Unchained Melody/Roy Hamilton

ロイさん、楽勝で歌っています。声の音域もすごく広いですし、元々の地声もいい声してます。そういう自分の特性を充分に発揮した上にクラシックの歌唱が入った朗々とした歌い方です。このあたりも好きになれるかどうかの分かれ目です。前今日のロイ・ハミルトンに強い影響を受けたジャッキー・ウィルソンも僕はすごく好きにはなれない。偉そうに言わせてもらうと歌いすぎ。歌が押しすぎというか目いっぱいありすぎて聴いているとしんどくなるんですね。こんな歌うまい人に本当に失礼ですれど。そこにオーケストラにストリングスと・・隙間がなくてちょっと息苦しい感じがします。

次はそのあたりを感じながら聴き比べを聞いてください。同じ曲ですが、ロイとサム・クックです。最初にロイを聞いてください。

3.I’ll Come Running Back to You/Roy Hamilton

4.I’ll Come Running Back to You /Sam Cooke

2人とも上手いのですが、この違いをなんて言うか難しいところです。どちらがいいと言うことではなくロイ・ハミルトンの方はやはりスタンダードな曲作りになっていて自分風のフェイクのテクニックを使ってを歌っていますがそのあたりが分かれ目で、サム・クックの方は歌も音もシンプルでサムが目の前で歌ってくれているような良さがあります。サムはこのあとソウル・ミュージックを作って行く偉大なミュージシャンになるのですが、この歌に関してもソウルの原型みたいなものを聞くことができます。ロイはやはり歌の上手いスタンダード・シンガーという立ち位置なんですね。
最後に”Mr.Rock And Soul”と呼ばれたロイのそのままのタイトルの曲です。

5.Mr. Rock and Soul/Roy Hamilton

エルヴィスはブルーズやカントリー・ウエスタンのカバーから始まり次第にスタンダード歌手になっていったのですが、そのプロセスで憧れたのがそしてお手本にしたのがロイ・ハミルトンでした。たぶんライヴを見たらロイ・ハミルトンの良さはもっとわかると思うのですが、ロイは1969年7月20日に心臓発作で40歳という若さで亡くなりました。