2022.10.07 ON AIR

1969年、オーティス・スパンとフリートウッド・マックの見事なブルーズ・コラボアルバム

The Biggest Thing Since Colossus/Otis Spain With Fleetwood Mac(BLUE HORIZON BH4802)

ON AIR LIST
1.Walkin’/Otis Spain With Fleetwood Mac
2.My Love Depends On You/Otis Spain With Fleetwood Mac
3.It Was A Big Thing/Otis Spain With Fleetwood Mac
4.Ain’t Nobody’s Business/Otis Spain With Fleetwood Mac

8月に自分の弾き語りアルバム”Kick Off The Blues”のリリース・ツアーで東北に行った折に、仙台の「パラダイス・レコード」という大きな倉庫のようなお店を構えているレコード屋さんに立ち寄りました。すごい数のレコードがあって全て見ることはできなかったのですが、そこで買ったレコードを今日は聞いてもらおうと思います。
シカゴ・ブルーズの偉大なピアニスト、オーティス・スパンとイギリスのブルーズバンド、フリートウッド・マック名義のアルバムでタイトルが“The Biggest Thing Since Colossus”直訳すると「偉大な人からのいちばん大きなもの」
当時イギリスで人気No.1ブルーズバンドだったフリートウッド・マックのメンバーのギタリストのピーター・グリーン、ダニー・カーワン、そしてベースのジョン・マクヴィ、そしてシカゴ・ブルーズのドラマー、S.P.リアリーがバックを務めたアルバムです。
これはフリートウッド・マックが所属していたイギリスのブルーズのインディーズ・レーベル「ブルー・ホライズン」がニューヨークのスタジオで録音したもので1969年の録音。この年フリートウッド・マックはアメリカ・ツアーを敢行し憧れのシカゴのチェス・レコードのスタジオでバディ・ガイやウィリー・ディクソンと”Jam At Chess”というアルバムを録音しています。その時にオーティス・スパンも参加していたので多分その流れでスパンをメインにしたアルバムを作る話になったのだと思われます。まずは1曲

1.Walkin’/Otis Spain With Fleetwood Mac

ロックとラテンとブルーズをミックスしたようなこういう激しい曲にも意外とオーティス・スパンは対応できていて、スパンのちょっと違う一面を聞いた感じです。
1969年にこの曲はシングルカットもされているので推し曲だったのでしょう。
次はスローブルースを聞いてください。スパンのピアノとピーター・グリーンのギターの相性がいいことがわかります。
“My Love Depends On You”「俺の愛はオマエ次第」という曲名ですが付き合っている女性に振り回されて疲れてどうしたらいいかわからないと、彼女を見つけたら俺のところに連れてきてくれと歌って結局「俺の愛はオマエ次第なんだなぁ」という内容です。

2.My Love Depends On You/Otis Spain With Fleetwood Mac

フリートウッド・マックは60年代から70年代にかけてイギリスのブルーズバンドの中では最もセンスのいいブルーズバンドだったと僕は思ってます。ピーター・グリーンはブルーズを弾かせたらイギリスで一番だったと思います。
当時イギリスで人気だったクリームはブルーズをデフォルメして時にオリジナルの本質を無くしてしまうように感じることもありました。でも、それが新しいロック(ニューロック)と呼ばれて人気になったのですが、ぼくはオリジナルの曲の良さがなくなっている感じがする曲も多いです。もう一つイギリスの代表的なブルーズバンド、ジョン・メイオール&ブルースブレイカーズにある閉塞感のようなものがフリートウッド・マックにはなく、開放的で自由にブルーズをやり”Black Magic Woman”や”Albatros”のようなオリジナル曲も彼らならではのムードのある名曲でした。
次はミディアム・シャッフルの何気ない曲ですが、ギターにエフェクターをかけて弾くリフもいいムードを出しています。

3.It Was A Big Thing/Otis Spain With Fleetwood Mac

もうすこしピアノの音が大きいといいのですが。
次はオーティス・スパンの十八番と言ってもいい曲で”Ain’t Nobody’s Business”
スパンはこの曲を何度かレコーディングしていますが、このアルバムのバージョンも素晴らしい録音になっています。
ピーター・グリーンはギター・ソロもすごくいいのですがバッキングの時のオブリガードも少ない音数で曲にフィットとしたプレイをしてます。スパンのピアノが始まって4小節くらいで深いブルースのテイストが広がるところが素晴らしい。

4.Ain’t Nobody’s Business/Otis Spain With Fleetwood Mac

ピーター・グリーンのギターソロに呼応するように弾くオーティス・スパンのピアノ・・素晴らしいコラボだと思います。何か衝撃的なことがあるアルバムではないのですが、ずっと聞いているととても味のあるアルバムです。ピーター・グリーンやダニー・カーワンたちのプレイにはスパンへのリスペクトが感じられるし、スパンは白人のブルーズ大好きな若い彼らに溶け込もうとしているように感じます。マディ・ウォーターズもハウリン・ウルフもイギリスの白人ブルーズロック連中と録音を残しているのですが、どこか企画アルバムを仕事でやりましたという感じなのですが、このスパンとフリートウッド・マックは本当にいいコラボレーションができている内容のあるアルバムです。“The Biggest Thing Since Colossus”見つけたらゲットしてください。