2022.11.18 ON AIR

17年ぶりのニューアルバムを発表したヒル・カントリー・ブルーズの重要ブルーズマン、ドゥエイン・バーンサイド

Acoustic Burnside/Duwayne Burnside (DOLCEOLA DOLC-1012)

ON AIR LIST
1.Going Down South/Duwayne Burnside
2.She Threw My Clothes Out/Duwayne Burnside
3.Alice Mae/Duwayne Burnside
4.44 Pistol /Duwayne Burnside
5.Bad Bad Pain/Duwayne Burnside

アフリカン・アメリカンからいいブルーズのアルバムがあまりリリースされてこない現状ですが、今日紹介するドゥエイン・バーンサイドの新譜「アコースティック・バーンサイド」は久しぶりにリアル・ブルーズを感じさせるアルバムです。実に17年ぶりのアルバムだそうで思わず「久しぶりすぎるやろ」とツッコミたくなります。
ドゥエイン・バーンサイドはノース・ミシシッピーの伝説のブルーズマン、R.L.バーンサイドの14人いる子供のひとりで(何番目かはわかりませんが)メンフィスの近くのホーリー・スプリングスというところで育ちました。父親のバンド「サウンドマシ-ン」に参加したのが最初ですが、自宅近くにある父R.L.の友達でもあるブルーズマン、ジュニア・キンブロウのジューク・ジョイントでも10代はじめからギグに参加していたようです。98年頃に自身のバンド「ミシシッピ・マフィア」を結成してアルバムもリリースしてましたが、ぼくがドゥエインの名前を知ったのはルーサー(g)とコーディ(ds)のディッキンソン兄弟を中心に1996年に結成されたブルーズロックバンド「ザ・ノース・ミシシッピ・オールスターズ」のメンバーとして参加した2001年頃。しかしドゥエインは2003年のアルバム「ポラリス」に参加した後2004年に脱退してます。2013年リリースの”World Boogie Is Coming”にはゲストとして参加してます。

最初の曲は父のR.Lも歌っていた曲でブラック・キーズなんかもカバーしていますが、元々南部に伝わるトラッドなブルーズ。こういう曲を聞くとブルーズの根底は民族音楽だと改めて思います。
プリミティヴなワン・コード・グルーヴで南部で伝承されて来たブルーズというのを感じさせる曲。途中で挟まれるドゥエインのギターのオブリガードにジミ・ヘン・テイストがあったりして土着的なのにジミヘンという面白い曲調になっています。
「オレは南へ降りていくよ。うすら寒い風も吹かない南へいくよ。オマエと一緒に行こうと思う。一緒に行こうと思うけど、でもオマエがどこに行こうが気にはしない。死んだ方がマシだ。土の中6フィートに埋められた方がマシだ」

1.Going Down South/Duwayne Burnside

次の曲などもノース・ミシシッピの伝統的なブルーズのスタイルなのに古い感じはしなくて、ギターソロやオブリガードにスピード感があっていい感じです。
2005年にリリースしたアルバム「Under Pressure」に収録された自作の曲で、オリジナル録音ではジミ・ヘンのようなサウンドでしたが今回はアコースティック・バージョンです。

2.She Threw My Clothes Out/Duwayne Burnside

彼女と喧嘩した時の歌ですかね。「あいつはオレの服を外に投げ捨てやがった。あいつにひどい目に合わされたよ」と歌ってるが、きっとその前に男の方がなんか悪さをしてるんだろうな・・・。
ザックザックというリズム・ギターのグルーヴとアグレッシヴなムード。こういうブルーズがすごくカッコいいなぁと僕は思うのですが、どうでしょう。

次の曲はもう踊るしかないいかにも北ミシシッピ・ブルーズの曲調。南部の湿気の多い暑いクラブの中で汗ダクダクになりながら、こういうグルーヴをずっと続けて客を踊らせているバンドの光景が目にうかびます。

3.Alice Mae/Duwayne Burnside

次はハウリン・ウルフなどが歌って来たトラッドなブルーズ。こういう曲も彼の体にしっかり入っているところがドゥエインの強みだと思う。
しかも古い音楽、古いブルーズとしてやっていなくて堂々と自分のブルーズとしてプレイしているそのあたりがとても頼もしい。
そしてこのブルーズの曲調がかっこいいと思い始めたら、あなたはブルーズを聞く耳と心を持ってる。そしてノース・ミシシッピにいつか行きたくなるはず。

4.44 Pistol /Duwayne Burnside

次の曲を聴いているとアコースティック・ギターを弾いてブルーズを歌ったジミ・ヘンドリックスを思い出します。
どの曲もそうなんですが、スピード感のあるリズムが素晴らしくてもうそれだけで聴けてしまいます。当たり前なんですがリズムが素晴らしい。

5.Bad Bad Pain/Duwayne Burnside

やっぱりカッコいです。このアルバム、今年のブルーズの新譜としてオススメです。
最後まで聴くとアコースティックもいいけれど、特にいまの曲なんかはやはりバンドで聞いてみたいなという気持ちになります。
こういうドゥエインのような南部のブルーズが体に宿っているブルーズマンがもっと活躍してくれると閉塞感のあるいまのブルーズ界が少し広がっていくのではないかと思います。来週は今日のドゥエイン・バーンサイドも在籍したノース・ミシシッピ・オールスターズの名盤をON AIR、お楽しみに!