2022.12.02 ON AIR

忘れじのロッキン・ブルーズマン、ターヒール・スリムの作品集

The Ultimate R&B Collection/Tarheel Slim (Firefly FF 1437)

ON AIR LIST
1.Wild Cat Tamer/Tarheel Slim
2.Number Nine Train/Tarheel Slim
3.Security/Tarheel Slim&Little Ann
4.Anything For You/Tarheel Slim&Little Ann
5.It’s Too Late/Tarheel Slim&Little Ann

今日は最近ゲットした大好きなターヒール・スリムのアルバムをOn Air!
アルバム・タイトルが”The Ultimate R&B Collection”
Ultimate(アルタマット)とは究極の、とか最高のという意味ですが、まあベスト盤的なアルパムなのでしょう。

ターヒール・スリムは本名:アルデン・バン 最初の芸名はアレン・バン。1923年ノースキャロライナ生まれでお母さんがブルーズマンのブラインド・ボーイ・フラーなどが好きで聞いていてスリムも14歳くらいからギターを弾き始め、いくつかのゴスペル・グループでギターを弾き録音に参加したこともある。
ニューヨークで初レコーディングしたのが1952年ですから29歳の時。ちょっと遅い感じもする。

最初の”Wild Cat Tamer”はニューヨークの有名プロデューサーのボビー・ロビンソンの元で彼の「ヒューイ・レコード」からリリースされたシングル。歌詞が面白い。
ワイルドキャットは「山猫」の意でタマーは「調教師、使い手」ということで「オレは山猫(オマエ)の調教師なんだ。オマエを手なづけてやるさ。トムもディックもハリーもオマエの手玉に乗っていたけど、オレはそうはいかない。オレの命令を聞くようになるのさ。トムは皿を洗って、ディックは床を磨いて、ハリーは洗濯してアイロンがけもお前にさせられていたけど、オレはそうはいかない。俺は山猫調教師なんだ。オマエを手なづけてやるさ」

1.Wild Cat Tamer/Tarheel Slim

リズムはR&Rやロカビリーにも通じるいわゆるロッキン・ブルーズ・グルーヴでワイルドな感じがよく出ている。トレモロがかかったギターの音もいい。
ソロを弾いているのはジミー・スプライルというギタリストで、ワイルドとあだ名がついていたくらいでワイルドなギター。
次の曲がいまの”Wild Cat Tamer”のシングルのB面。ふつうシングルのA面、B面は違う曲調の曲を入れるものだが、同じようなビートを使った曲で多分この2曲がターヒル・スリムの一番有名な曲だと思う。
私もレコーディングさせてもらったほど大好きな曲。
「ナンバー9列車に乗って彼女は行ってしまった」という失恋のロッキン・ブルーズ 。

2.Number Nine Train/Tarheel Slim

ギターのワイルドな感じがたまりませんが・・。いまの二曲は「ロカビリーの乱痴気パーティ」と呼ばれたくらいワイルドな印象を与えたようです。

ターヒールは1955年にアナ・リー・スタンフォードという女性と結婚して”The Lovers”という名前でデュオで歌い始めます。
そのデュオを50年代終わりに「ターヒール・スリムとリトル・アン」という名前に変えてデビュー。当時、”Let The Good Times Roll”のシャーリー&リーとかミッキー&シルビアとか男女ペアがR&Bで流行りました。

3.Security/Tarheel Slim&Little Ann

リトル・アンもいいでしょ?ターヒルも負けじとパワフルに歌ってます。

次は思いっきりニューオリンズ調の曲です。

4.Anything For You/Tarheel Slim&Little Ann

二人は65年くらいまでシングルをリリースして活躍していたが、ヒットがなくてその後二人とも音楽シーンから消えてしまった。それから70年代に入ってターヒールはいわゆる再発見されてフェスティバルに出たりシングルも出したがヒットには至らなかった。

ロッキンでファンキーな曲が二人の持ち味かと思いきや実は一番ヒットしたのは次の1959年にリリースされたマイナー調の悲しい曲でR&Bチャート20位まで上がりました。「もう遅すぎる」という別れの歌で女性の方が浮気したのか、家に訪ねて来たけど中に入れなかった男がもう君はいらないんだと言う。許して欲しいもう二度と同じようなことはしないわと女は言うが、もう遅いよオレには新しい彼女がいるんだというヘヴィな曲です。

5.It’s Too Late/Tarheel Slim&Little Ann

10代からギターを弾きゴスペルやコーラス・グループにも入り、ブルーズも歌いロッキン・ブルーズで時代の波に乗りR&B時代になってからはリトル・アンとデュオを組んで活躍したターヒール・スリムのバイオグラフィやディスコグラフィを見ていると頑張って生きた男の人生を見るようだ。結局大きな成功を収めたミュージシャンではないのだが、私の中には彼の曲がずっと残っている。77年に53才でこう頭ガンで亡くなったのだが、最後の三年間ぐらいは彼がどんな風に生きていたのかもわからない。リトル・アンとは最後まで添い遂げたのだろうか。