2022.12.16 ON AIR

「ニューオリンズR&Bを作った男 ヒューイ・ピアノ・スミス伝」の出版を記念して偉大なピアニストでありソングライター、ヒューイ・ピアノ・スミスを聴く


☆「ニューオリンズR&Bを作った男 ヒューイ・ピアノ・スミス伝」(ジョン・ワート著 陶守正寛訳 発行/DU BOOKS 発売/ディスクユニオン)
☆Best New Orleans Masters/Huey “Piano”Smith (PVCP-8111)

ON AIR LIST
1.Rockin’ Pneumonia And The Boogie Woogie Flu Pt.1 & 2/Huey “Piano” Smith
2.Blow Wind Blow/Huey “Piano” Smith && The Clowns
3.Sea Cruise/Huey “Piano” Smith & The Clowns
4.Don’t You Just Know It/Huey “Piano” Smith & The Clowns
5.Dearest Darling/Huey “Piano” Smith & The Clowns

ニューオリンズ・ミュージックにとても詳しい音楽ライターの陶守正寛(スモリマサヒロ)さんが、ニューオリンズの偉大なピアニストでありソングライターでもあるヒューイ・ピアノ・スミスの伝記本を翻訳され上梓されました。本のタイトルはで発行元はDU BOOKS 発売元はディスクユニオンです。この本を書いたのはアメリカ、ルイジアナに住んでいるジョン・ワートという音楽ライターの方で、この方が書いた原書を読んだ陶守さんが日本訳で出したいと彼に直接交渉し長い時間をかけてこの度出版となりました。
400ページを越えるなかなか読み応えのある本でヒューイ・ピアノ・スミスというミュージシャンやニューオリンズの音楽のことだけでなく、黒人音楽のショービジネス界の金銭的なことや権利関係などショー・ビジネスの裏側も知ることができる充実の本です。
中身はみなさんに読んでいただくとしてまずはヒューイ・ピアノ・スミスを一曲聞いてください。洋楽を好きな方、特に50,60年代のR&Bが好きな方ならどこかで耳にしたことのあるこの曲からどうぞ!
Pneumonia(ニュモーニア)は病気の肺炎のことでFlu(フルー)はインフルエンザのこと。
「若い奴らのリズムに俺もトリコになってしもた。ロッキンの肺炎とブギウギのインフルエンザやにかかったしもたで」
すごくファンキーな曲です。

1.Rockin’ Pneumonia And The Boogie Woogie Flu Pt.1 & 2/Huey “Piano” Smith

陶守さんが本のあとがきでヒューイ・ピアノ・スミスの音楽を知るきっかけがドクター・ジョンの1971年リリースのアルバム「ガンボ」だったと書いてますが、僕も全く一緒であの「ガンボ」のアルバムが最初にヒューイ・ピアノ・スミスはじめニューオリンズの音楽を知るきっかけでした。でも70年代初期にヒューイ・ピアノ・スミスのレコードを売っているレコード店が周りになかった。だからずっと名前だけ知ってるけど聞いたことのないミュージシャンでした。ちゃんとアルバムを聴いたのは70年代の終わり頃だったかも知れません。
そのドクター・ジョンが名盤「ガンボ」でカバーしてるヒューイの一曲が次の曲。
「風よ吹け吹け、最後の裁きの日まで、風よ吹け吹け私の悩みを吹き飛ばしてくれ」ヴォーカルはジュニア・ゴードン

2.Blow Wind Blow/Huey “Piano” Smith

大好きな曲です。

次は1959年にヒューイが自分のバンド「クラウンズ」の為にレコーディングをしていた曲から発売元のエースレコードがヒューイの歌を外して白人のロックンロール・シンガー、フランキー・フォードの歌をダビングして発売し、それがポップ・チャートで14位、R&Bチャートで11位の大ヒットになりました。本人に断りなしにそういうことをやるレコード会社は本当にひどいですが、ヒューイにお金もまともに支払ってないことは更にひどいです。そういう不当な扱いを受けていたヒューイが裁判を起こして権利を主張する話がこの本にでてきます。
今日はもちろんヒューイのオリジナルで聴いてもらいます。

3.Sea Cruise/Huey “Piano” Smith & The Clowns

素晴らしくスピード感のがあり、コーラス含めアレンジも含め本当に素晴らしい。この曲はのちにジャマイカのスカという音楽にも影響を与えたR&B史上大切な曲です。

次はヒューイが作った最高のパーティ・ソングです。日本でテレビ・コマーシャルに使われていたので知っている方もいるかと思います。これを聴いて一緒に歌ったら大抵の嫌なことは忘れます。これもR&Bの名曲です。
最初は「オレは物を大切にするんだ。知ってる?両方の足に左足の靴を履いてるんだ」と奇妙な歌詞から始まるんですが、途中から「オレが押して欲しい時にお前は押してくれる。わかるかな?おばはんは焦らして来るけど若い女はぎゅっと搾りとってくる。わかるかな?」とセクシャルな歌詞になります。最高の歌詞です。

4.Don’t You Just Know It/Huey “Piano” Smith & The Clowns

なんか嫌なことがあったらこの歌を思い出して「あっはっはっは」って歌ってください。

ヒューイ・ピアノ・スミスは歌は上手くないと思っていたらしく、いつも自分のバンド「クラウンズ」にはヴォーカリストを入れていました。何人かいたのですが一番有名なのがボビー・マーシャンです。

ファッツ・ドミノやプロフェッサー・ロングヘア、ギター・スリム、ドクター・ジョンなどと同じようにニューオリンズの音楽に大切なものを残したのがヒューイ・ピアノ・スミス。
今日ON AIRしたヒューイ・ピアノ・スミスの「ベスト・ニューオリンズ・マスターズ」というアルバムは1956年から64年までにACE レコードに残された音源で日本のP-Vine レコードからリリースされています。
アップ・テンポのパーティ・ソングはもう素晴らしいのですが、僕は次のような彼のバラードも好きです。

5.Dearest Darling/Huey “Piano” Smith & The Clowns

今回出版された「ヒューイ・ピアノ・スミス伝」はすごく充実した本です。年末年始の家で過ごされる時に読んで見てはどうでしょうか。アルバムを聴きながら読むといいかも知れません。
番組ホームページにアルバムと今回の本と写真も出していますので参考にしてください。