2023.02.17 ON AIR

遠い昔に音楽は人種を越えていた
黒人音楽に素晴らしい曲をたくさん作った白人のソングライターたちその4

ドク・ポマス

The Best Of Th Drifters
DEUCES WILD/B.B.KING

ON AIR LIST
1.Save The Last Dance For Me/The Drifters
2.Boogie Woogie Country Girl/Big Joe Turner
3.This Magic Moment/The Drifters
4.Lonely Avenue/Ray Charles
5.There Must Be A Better World/B.B.King with Dr.John

このところ黒人音楽に素晴らしい曲を提供した白人のソングライターたちの特集をやっているのですが、”Hound Dog”や”Kansas City”を作ったジェリー・リーバーとマイク・ストーラーのコンビの作品、そして先週は”Dark End Of The Street”や”Do Right Woman,Do Right Man”を作ったダン・ペンとスプーナー・オーダムの作品を紹介しましたが、今日はまずこの曲を聴いてください。

1.Save The Last Dance For Me/The Drifters

この曲を聴いたことのない人はいないだろうと思うほどの有名曲。倍賞千恵子さんや越路吹雪さんの日本語ヴァージョンもヒットした名曲ですが、原曲は1960年にリリースされた黒人コーラス・グループ「ザ・ドリフターズ」。リードで歌っているのは”Stand By Me”で有名なBen.E. King。彼がドリフターズに在籍した当時に大ヒットしたものです。
ご存知の方も多いと思いますが、この曲を作ったドク・ポマスは子供の頃にポリオ(小児麻痺)を患い松葉杖がないと歩けない状態でした。だから女性とダンスをするのは難しかったのですが、彼女が他の男と踊っているのを見てる時に「最後のダンスだけは僕と一緒に踊って欲しい」という切ない想いを込めて作った歌でした。
ドク・ポマスは本名ジェローム・ソロン・フェルダーで1925年の生まれです。両親はユダヤから移民でアメリカにやってきました。彼は子供の頃からブルーズが好きで病気を持ってましたがステージで歌いブルーズ歌手を目指していました。その頃の彼の憧れは偉大なジャズ・ブルーズ・シンガーのビッグ・ジョー・ターナーでした。1956年にその憧れのビッグ・ジョー・ターナーにドクが書いた曲がスイングする軽快なブギのこの曲でした。

2.Boogie Woogie Country Girl/Big Joe Turner

ポリオという病を持ちながらプロのブルーズ・シンガーを目指すことも難しく、彼は付き合っていた彼女と結婚することを機にソングライターの道を目指すことにしました。その時にドクの曲作りのパートナーとなったのがピアニストのモート・シューマン。そこでドクのソングーライターとしての才能も花が開いて二人はエルヴィス・プレスリーやボビー・ダーリンといった50年代の人気歌手にもたくさん曲を作りました。
最初に聞いてもらったSave The Last Dance For Meをヒットさせたドリフターズには他にもいい曲を提供していて次の曲もR&Bチャート4位、ポップチャートで9位に入るヒットとなりました。

3.This Magic Moment/The Drifters

次は1956年アトランティックレコードからレイ・チャールズが歌いR&Bチャートの6位になったブルーズ。まだヒットがあまり出ていないレイ・チャールズの初期の礎になった曲です。ちなみに60年代にシカゴ・ブルーズのマジック・サムがこの曲のパターンを使って自分の代表曲となる”All Of Your Love”を作ったのは有名な話です。
「窓が二つあるオレの部屋は陽の輝きがない。あいつと別れてから暗くて淋しい部屋だ。泣きたい、死にたい、寂しい通りに住んでいるオレ」
彼女と別れたから住んでいる街も寂しい街に感じるという歌。

4.Lonely Avenue/Ray Charles

ドク・ポマスはドクター・ジョンともたくさん曲を作ってました。次の曲はその二人が作って1981年にB.B.キングがレコーディンングしました。アルバムタイトルにもなったこのThere Must Be A Better WorldでB.B.はグラミーを獲得しました。もうすでにドク・ポマスもドクター・ジョンもB.B.キングも天国へ行ってしまいました。
今日はB.B.のアルバム「デューシズ・ワイルド」でドクターとB.B.がデュエットしているヴァージョンで聴いてください。
「俺は時々不思議に思う・・俺は何のために戦っているんやろって。勝っていたはずやのに結局いつも負けてる。俺はつまづいてばかり。俺は分かっているもっともっとマシな、いい世界がどこかにあるはずやって。愛した女はみんな他の男を好きになる。そしてはじまることもなく愛は終わってしまう。この世で見つからないのならたぶんあの世で見つかるんだろうな。泣く代わりに笑うことを覚えるんや。でも、きっとどこかにもっといい世界がどこかにあるはずや」

5.There Must Be A Better World/B.B.King with Dr.John

50年代から60年代にかけて白人のソングライターたちの曲を黒人シンガーが歌ってたくさんのヒットがあった話をここ何回かしてきました。その音楽の世界ではとっくに人種の壁はなかったわけです。白人のキャロル・キングが作って黒人シンガーのアレサ・フランクリンが歌った「ナチュラル・ウーマン」もそうです。
音楽には黒人も白人も日本人もないです。素晴らしい曲があるだけです。