2023.03.03 ON AIR

本当にライトニンに駄作はないのか

The Rising Sun Collection/Lightnin’ Hopkins

ON AIR LIST
1.Trouble In Mind/Lightnin’ Hopkins
2.Get Up/Lightnin’ Hopkins
3.Katie Mae/Lightnin’ Hopkins
4.Goin’ To Louisiana/Lightnin’ Hopkins
5,Early In The Morning Blues/Lightnin’ Hopkins

テキサスの偉大なフルーズマンであるライトニン・ホプキンスがこの世を去ってもう40年にもなる。たった一度だけ日本に来たのが1978年。あれから43年か。自分が好きなブルーズマンの5本指に入るライトニンなので彼のアルバムは自分のコレクションの中でもかなり多いがそれでもまだアルバムがかなりある。今日聴いてもらうアルバムは時々ライヴを一緒にやっているギターの上村秀右くんからプレゼントしてもらったものだ。実はこのアルバム”The Rising Sun Collection/Lightnin’ Hopkins”はレコード屋で見たことがあったのだが、買わなかった。というのもこのThe Rising Sun Collectionのシリーズでリリースされているエスター・フィリップスとビッグ・ママを以前買ったのだが全く良くなかったからだ。演奏も歌も録音もよくなかった。それでライトニンも買わなかった。しかし「ライトニンに駄作なし」という言葉があるくらいで気にはなっていた。この「ライトニンに駄作なし」というのはギタリストでライターでもある小出斉くんが言った言葉だったと記憶している。確かにライトニンのアルバムにこれは良くないというのはない。でも、このThe Rising Sun Collectionはどうだろう・・録音されたのは1977年、このレーベルのオーナーが経営しているRising Sun Selebrity Jazz Clubでのライヴ録音。バックにベースとドラムが入っているがいつものように弾き語り感満載。
まず最初の一曲。古いトラッドなブルーズ。「心の中の厄介なことで私は憂鬱。でもいつの日か私の裏口にも太陽が差すだろう」というつらい毎日だけどいつの日か救われるだろうとかすかな希望を抱いたブルーズ

1.Trouble In Mind/Lightnin’ Hopkins

イントロが始まったらお客さんの歓声が上がり反応が良かったのでライトニンはご機嫌になってます。
たぶんというか、絶対にウィスキーをぐいぐい飲んでるのでテンションは上がってるんでしょう。景気づけに得意のライトニン・ブギのインストを次にやってます。
「ライトニンに駄作なし」という言葉は今までぼくが聴いてきたアルバムでは当たっている言葉で「このアルバムあかんな。ダメやなぁ」というのはありません。その一つの理由はいつもライトニンはグルーヴしているからです。リズムがいい。バンドがついていようがいまいが、弾き語りでも演奏をするスタンスが全くわかりません。おそらくニューヨーク・フィルハーモニーてとやっても同じです。つまりやっていることは基本いつも同じなのです。やっていることを変えることはありません。だからいつも同じなのです。その同じようなアルバムをぼくは何枚も持っているわけですが、なぜかライトニンのアルバムをみると買ってしまう。常習性があるんですね。

2.Get Up/Lightnin’ Hopkins

勝手に終わってしまうんですね。なんか思いつたことをどんどんやってほとんどライトニンのやりたい放題です。ある意味パンク的な破裂した感覚も魅力です。フレイズやリズムにユーモアもあって面白いです。
いま思ったんですが、僕がライトニンを好きな理由の一つはこういうやりたい放題の自由さにあるんだと思います。こういう風にやっても形になるというかカッコいいんですよね。
そして次のようなスロー・ブルーズに入って行くところもかっこいいわけです。1946年ライトニンのデビュー曲ですがオリジナルではKatie Mae Bluesになっています。

3.Katie Mae/Lightnin’ Hopkins

もうひとつライトニンの歌声の魅力ですね。
バックはドラムとベースなんですが、ベースはあまり存在感がないというかたぶん勝手気ままにやって行くライトニンについて行くのが精一杯なんだと思います。普通のワン・コーラス12小節形式なんかライトニンは無視してますから。気が向いた時にコード・チェンジするのでベースはついて行くの大変やと思います。まあ聴いてればライトニンのクセがわかってくるんですがね。
次の曲はライトニンがMCで”Mojo Hand”と言ってるのにアルバムのクレジットはなぜか”Goin’ To Louisiana”になってます。

4.Goin’ To Louisiana/Lightnin’ Hopkins

I’m Going To Louisiana と歌い始めたところでもうかっこいいです。女性の歓声も聞こえてライトニンは絶好調です。弾き語りのブルーズ・スタイルの素晴らしさを感じるブルーズマンです。
結論から言うとやっぱりこのアルバムも駄作どころか素晴らしい一枚でした。これをプレゼントしてくれた上村秀右、ありがとう。
ひな祭りの夜にライトニン、思い出に残る夜になった・・・か?
そして、やっぱり「ライトニンに駄作なし」