2023.03.10 ON AIR

ある日、私の胸に響いた歌声は全く知らない82歳の男の42年ぶりのアルバムでした

Tommy McLain/I Ran Down Every Dream

ON AIR LIST
1.I Ran Down Every Dream/Tommy McLain
2.No Tomorrows Now/Tommy McLain
3.I Hope/Tommy McLain
4.Before I Grow Too Old/Tommy McLain
5.That’s What Mama Used to Do/Tommy McLain

歌声だけで歌の意味がわからなくてもすごく惹かれるということがありませんか。
僕は今日聴いてもらうトミー・マクレインの歌声を初めて聴いた時に何か心を持って行かれるような強い魅力を感じました。今日は少しブルーズから離れて最近僕がヘビロテで聴いているトミー・マクレインのアルバムです。
60年代から活動して現在82歳になるこのシンガーの名前をうっすら知っているだけでまともに聴いたことは一度もありませんでした。ところがある日パソコンで別のミュージシャンのアルバムをネットで買おうとしていた時、トミー・マクレイン40数年ぶりのアルバム・・・と出てきて真っ白なヒゲを生やした彼が写っているちょっと変わったアルバム・ジャケットを見ました。名前はどこかで見たことのある・・・と思って何気なくそのプロモーション映像の矢印をクリックしました。すると流れてきたのがこのアルバムのタイトル曲でした。

1.I Ran Down Every Dream/Tommy McLain

この歌声に心が惹かれました。邦題が「夢から醒めて」でした。

「遠い昔を思い出すとフラフラと生きて、恋をしたり恋に破れたりしていた。そして音楽には関わり続けてきた。若かった頃はどんなやつの意見も変える情熱があった 。それからたくさん見た夢は消え去り、私が書いた歌詞のように忘れてしまった。でもそれが私の人生。真新しい調べとともに目覚める時まだ生きている自分に気づく。いろんな夢を駆け抜けた。いいことも、悪いことも、そしていくつかの話は決して喋らないけどね。」
この歌詞そのものが夢のような歌詞でバックのサウンドと相まって不思議な魅力を作っています。そして、そこに年輪を重ねたマクレインの歌声。その歌声には悲しみや孤独や後悔や優しさが詰め込まれています。
次の歌は「行くところもなく、金もなく、愛してくれる女性もいない、この街で迷っているオレに明日はない」

2.No Tomorrows Now/Tommy McLain

広いアメリカの夜の寂しさが漂ってます。アメリカで真夜中に車を運転してるときや人の少ない夜中のハンバーガー屋でこういう気持ちになったことを思い出しました。
トミー・マクレインはスワンプ・ポップの伝説的シンガーと言われているのですが、スワンプ・ポップというのはR&RにニューオリンズのフルーズやR&Bそこにザディコやケイジャンというルイジアナ独特の音楽がミックスされたもの。以前この番組でON AIRしたボビー・チャールズやクッキー&カップケークスもそう呼ばれることがあります。トミーを聞いていてもわかるように叙情的でちょっと涙腺を刺激するようなメランコリーな匂いがある音楽です。
トミー・マクレインは1966年に”Sweet Dreams”という曲がスマッシュヒットだけで全国区のミュージシャンではないのですが、スワンプポップ好きの人たちには伝説となってました。彼はそのヒットの後にヒット曲はなかったのですがルイジアナ、テキサス周辺をベースに活動を続けていました。
全体的な特徴の一つが歌詞がシンブルなのに何か含みがあるところでその辺も好きなところです。
次の曲は曲名もI Hope、私は願うですごくシンブルです
「いつかどこかで私たちはもう一度逢うのだろう。もうあなたを愛さない。私はそう願う。踊り明かそう。明日には君は行ってしまうのだろう。泣きたいよ。さよなら。君のことを忘れるように僕は願うよ」自分が君を忘れることを願うと言う切ない歌です。

3.I Hope/Tommy McLain

次は「老いぼれる前に」という曲名で作ったのはボビー・チャールズです。
「毎晩踊りに出かけるつもり、全ての街の灯を見るつもり、全部華々しくやるつもりだ。老いぼれる前に急がなくては・・」

4.Before I Grow Too Old/Tommy McLain

僕も老いぼれかけているのでいろんなやりたいことを急いでやらんとね。

次の曲はお母さんの腕の中で泣いてる小さな男の子を見て自分がお母さんから受けていた優しさを思い出す歌
「ママがやってくれたこと」

5.That’s What Mama Used to Do/Tommy McLain

トミー・マクレインは40数年ぶりのこのアルバム「I Ran Down Every Dream」が生涯最後のアルバムになるだろうと言っているようです。そんなこと言わずにまたリリースして欲しいです。このアルバムにはマクレインのことを敬愛しているエルビス・コステロ、ヴァン・ダイン・パークスなどが参加しニューオリンズのアイヴァン・ネヴィル、ジョン・クリアリーも参加してます。
ぼくは最初に聞いた彼の歌声だけですぐに好きになりましたが、ゆっくり聴くとても味わい深い曲がたくさんあります。
82歳のトミー・マクレイン42年ぶり素晴らしいアルバムでした。