ブルーズ史上貴重な音源「CHICAGO BOOGIE!シカゴ・ブルースの誕生 1947」
ON AIR LIST
1.I Just Keep Loving Her (Take 1)/OTHUM BROWN & LITTLE WALTER
2.Ora Nelle Blues (Take 1)/OTHUM BROWN & LITTLE WALTER
3.Little Store Blues (Take 1)/Little Walter & Jimmy Rogers
4.Money Taking Woman (Take 1)/Johnny Young, Johnny Williams
5.Worried Man Blues/Johnny Williams, Johnny Young
今日はブルーズ、とりわけシカゴ・ブルーズのとても重要なコンピレーション・アルバムを紹介します。P-Vine レコードからCDでリリースされたのが1998年でかなり前ですが・・。
タイトルの「シカゴ・ブルースの誕生 1947年」はまさにシカゴ・ブルーズの全盛の50年代に突入する前夜でシカゴには有能なブルーズマンがたくさん集まってきていました。ここで聴けるのはブルーズマンたちの故郷である南部の香りがまだ残っている頃の演奏です。
まず最初はアルバムの一曲目に収録されているハーモニカのリトル・ウォルターがギターのオーサム・ブラウンとデュオでやってるテイクを。歌はリトル・ウォルターです。
1.I Just Keep Loving Her (Take 1)/OTHUM BROWN & LITTLE WALTER
二人ともすごくパワフルで力が有り余っている感じですが考えてみればリトル・ウォルターはまだ17歳です。彼はのちにチェス・レコードで売れてスター・ブルーズマンになるのですがギターのオッサム・ブラウンは確かこのアルバムで聴ける音源しかない謎のブルーズマンです。才能があっても世に出る人と出れなかった人、あるいは音楽以外の道を選んだ人と様々な人たちがシカゴで蠢いていたんでしょうね。今度はギターのオッサムが歌っています。
2.Ora Nelle Blues (Take 1)/OTHUM BROWN & LITTLE WALTER
この歌、有名なブルーズ曲のThat’s Alrightの原型のようですね。オッサムの歌もいいですね。すごく好きなタイプのブルーズマンですが、このオッサム・ブラウンのように実力のありながらも消えていった人もたくさんいたのでしょう。
この時代、シカゴのウエストサイドという地域にあるマックスウェル・ストリートという通りにブルーズマンたちは集まってストリートで演奏していました。投げ銭ライヴですね。レコードデビュー前、売れる前はそのマックスウェルストリートで演奏して稼いでいるブルーズマンがたくさんいました。マックスウェル・ストリートにはいろんな出店があり衣料品から雑貨、食料品などあらゆるものが売られていてこの40年代から50年代はすごく活気があったそうです。
次は今のリトル・ウォルターと並んでやがてシカゴ・ブルーズの重要ブルーズマンとなるジミー・ロジャースとウォルターの二人のテイクです。二人とも後にマディ・ウォーターズのバンドでまたソロで歴史に残る録音をたくさん残したブルースマンですが、有名になる前にすでにこんな素晴らしい演奏をしていました。歌っているのはギターのジミー・ロジャース、ハーモニカがリトル・ウォルター
3.Little Store Blues (Take 1)/Little Walter & Jimmy Rogers
今日のこの音源はそのマックスウェル・ストリートにあった楽器とレコード、ラジオを売る店をやっていたエイブラムス兄弟が録音したもので、どのくらいセールスに力を入れたかわかりませんがまあインディーズもマイナー・インディーズのレーベルで「オラ・ネール」という名前でシングルを出していました。
次はライナーで永田清君が「マックスウェルストリートの顔役」と書いてますがジョニー・ヤングです。ジョニー・ヤングはマンドリンを弾きながら歌う人ですが、ブルーズにマンドリンはかなり珍しいです。
曲名が”Money Taking Woman”「彼女はいつも俺の金を全部持っていってしまう。一銭も俺に戻してはくれない。もう別れるよ。バイバイ」
4.Money Taking Woman (Take 1)/Johnny Young, Johnny Williams
今度はジョニー・ヤングの相棒、ギターのジョニー・ウィリアムスが歌います。Worried Man Bluesですからそのまま訳すと「心配な男のブルーズ」
「俺はブルーや、憂鬱や。好きな女に「あんたなんかいらんわ」と言われた。朝の三時やもう泣けてくるわ。あいつは行ってしもた、わけわからんまま・・・」
わけもわからんままって歌ってますけど。理由はあるんですよ。他の女に手を出したとか稼いだ金を全部じぶんで使ってしまうとか。その自分に都合の悪いことは歌わないんです。ただオレはひどい目に遇った・・としか歌わないんですよ(笑)
5.Worried Man Blues/Johnny Williams, Johnny Young
ずっと聞いていた感じるのはみんなリズムがいいことです。それぞれ芸風、歌い方は違いますがみんなとてもステディなビートを持ってます。それはマックスウェル・ストリートに集まってくる人たちをまず踊らせなければいけなかったからです。それができると投げ銭をしてもらえる。基本的に踊れない音楽はブルーズではダメなんですね。
今日はシカゴブルーズが黄金期を迎える前、まだ故郷南部の匂いをいっぱい持ったブルーズマンたちが一旗上げにシカゴに来た頃、1947年の録音を集めた「CHICAGO BOOGIE!シカゴ・ブルースの誕生 1947」を聞きました。たまに中古盤で見かけることがあるので欲しい方は根気よく探してみてください。そして発売元のP-Vineレコードさん、このアルバム再発できませんか?