追悼 ブリッティッシュ・ブルーズの先駆者、ジョン・メイオールvol.1
ON AIR LIST
1.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
2.Double Crossing Time/John Mayall & The Blues Breakers
3.Parchman Farm/John Mayall & The Blues Breakers
4.Ramblin’ On My Mind/John Mayall & The Blues Breakers (Vo.Eric Clapton)
5.They Call It Stormy Monday/John Mayall & The Blues Breakers
ブリティッシュ・ブルーズの先駆者の一人であり1960年代には「ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ」を率いて、ブリティッシュ・ブルーズ・シーンに大きな役割を果たしたジョン・メイオールが90歳で亡くなった。私も彼のブルーズを聴き教えられる事もたくさんありました。ありがとうございました。
私がいちばん最初に聴いたジョン・メイオールのアルバムは&ザ・ブルースブレイカーズの1966年リリース「Blues Breakers with Eric Clapton 」でした。これには個人的な思い出があります。リリースの翌年67年、当時17才の高校生だった自分が好きだったガール・フレンドがある日「ビートルズとかストーンズもいいんだけど、これからはこういうブルースが流行るみたいよ」と教えてくれました。彼女は音楽におませな女の子で当時日本のグループサウンズが演奏するディスコに行っていてそこでグループサウンズのバンドがカバー演奏するブルースブレイカーズの曲を知ってこのアルバムをゲットしてきました。当時は正直私はやっぱりビートルズの方が好きでそんなにいいと思わなかったのですが、一曲目のこの曲だけは心に残りました。
1.All Your Love/John Mayall & The Blues Breakers
オリジナルはシカゴのブルーズマン、オーティス・ラッシュ。
今のは歌がジョン・メイオール、ギターはエリック・クラプトン。クラプトンはその前に在籍していたヤードバーズがポップな方向に向かうのに納得できなくて脱退し悩んでいる時にジョン・メイオールと会いブルース・ブレイカーズに参加しました。1965年録音ですからクラプトンは20才。当時のイギリスでやはりこれだけキレのある正確なブルース・ギターを弾ける若者は少なかったでしょう。ギターの音色もすごく魅力的でこのアルバムのクラプトンが私はいちばん好きかもしれません。
ジョン・メイオールは1933年生まれでお父さんがジャズを好きで聴いていたそうです。当時のジャズが好きということは当然ブルーズも流れてくるわけです。そして13才くらいでギター、ウクレレ、ピアノを買ってもらって弾き始めていますから多分お金がある家庭に育ったのだと思います。美術学校を卒業してショーウィンドウの装飾をする仕事をしたりデザイン事務所でアート・ディレクターをしていたこともあるそうです。59年26才くらいからバンドも始めて29才の時にメイオールよりすこし先輩のアレクシス・コーナーと出会い、そこからメイオールはブルーズに向かって一直線に進みます。
ここで一曲メイオールのオリジナル・スローブルーズを。これでもクラプトンがいいギターを弾いてます。タイトルのDouble Crossing Timeは「裏切りの時」という意味。
2.Double Crossing Time/John Mayall & The Blues Breakers
60年代の初めにロンドンでブルーズのすばらしさに気づいていたのがアレクシス・コナーで彼の元にはストーンズのミック・ジャガー、ブライアン・ジョーンズ、キース・リチャーズなどが教えを乞いに集まり、メイオールの元にはクラプトンやピーター・グリーン、ミック・テイラー、のちにクラプトンとクリームを結成するジャック・ブルース、フリートウッド・マックのミック・フリートウッドとジョン・マクヴィーなどが集まりました。ジョン・メイオールとアレクシス・コーナーはブリティッシュ・ブルーズの真の先駆者でした。
次の曲はカントリー・ブルーズマン、ブッカ・ホワイトにも同名異曲がありますが、メイオールのこのバージョンはジャズ・ピアニスト&シンガーのモーズ・アリソンが作ったもの。バックの軽快なビートに乗ってメイオールが気持ちのいいハーモニカをプレイしてます。
3.Parchman Farm/John Mayall & The Blues Breakers
ジョン・メイオールは歌、ギター、キーボード、ハーモニカと一応ブルーズに関する楽器をいろいろプレイする人ですが、失礼ですがどれも突出しめちゃすごいと感じるものありません。でも、嫌だなと思うプレイもありません。ただ彼はブルース・ロックの黎明期のイギリスでどんな風にブルーズを演奏したらいいかということはよく理解していて、だから「ジョン・メイオール学校」と呼ばれたように彼の元にはブルーズをこれからプレイしたいクラプトンやピーター・グリーンなど若く才能のあるミュージシャンが集まったのだと思います。
次はこのアルバムでエリック・クラプトンが歌っている曲です。ロバート・ジョンソンの代表的な曲でたぶんこれがクラプトンのヴォーカルの初録音だと思います。
4.Ramblin’ On My Mind/John Mayall & The Blues Breakers (Vo.Eric Clapton)
クラプトン20才のヴォーカルでした。
ヤードバーズから人気のあったクラプトンが加入したことでブレイカーズの人気は上がり、このアルバムもイギリスのチャートで6位まで上がりました。しかし、リリースの数日後にはクラプトンはブレイカーズを辞めてジンジャー・ベイカーとクリームの結成に向かいました。結局、クラプトンは一年もブレイカーズにいなかったのですが、ジョン・メイオールと出会ったことでブルーズへの知識を深め、ブルーズで得た多くのものを使ってその後のクリームに向かいました。
面白いのはクラプトンも来週聴くピーター・グリーンも短い期間でブルース・ブレイカーズを辞めてしまうのですが、ジョン・メイオールはあまり引き止めもしなかったようで、「げんきで、またな」みたいな感じだったらしいです。
では最後にクラプトンのギターが火を吹いているギターソロが聞けるスロー・ブルーズを聞きましょう。ギターソロの途中から入ってきます。
5.They Call It Stormy Monday/John Mayall & The Blues Breakers
最後に亡きジョン・メイオールへ追悼のコメントをエリック・クラプトンが出しているのでその1部ですが読みます。
「私が本当に考えなければいけないことを彼から全て学んだ。誰かに気に入られようと気に入られまいとただ自分が演奏したい音楽を演奏すればいいんだと彼は教えてくれた」
ジョン・メイオールの冥福を祈ります。
来週もう一回ジョン・メイオールの追悼特集をします。来週はエリック・クラプトンの後にブルーズ・ブレイカーズに入ったピーター・グリーンの素晴らしいブルーズギターが聞けます。