2024.09.13 ON AIR

追悼ブリッティッシュ・ブルーズの先駆者、ジョン・メイオール vol.2

ON AIR LIST
1.The Stumble/John Mayall & The Blues Breakers
2.You Don’t Love Me/John Mayall & The Blues Breakers
3.The Supernatural /John Mayall & The Blues Breakers
4.Someday After a While (You’ll Be Sorry) /John Mayall & The Blues Breakers
5.Hard Road/John Mayall & The Blues Breakers

先週に引き続き先ごろ7/22に90才で亡くなったジョン・メイオールの特集です。先週はエリック・クラプトンがジョン・メイオールのバンド「ブルース・ブレイカーズ」に在籍した時に残したアルバムから聴きましたが、クラプトンが一年も経たずバンドを辞めてしまった後に加入したギタリスト、ピーター・グリーンが在籍した67年のアルバム”Hard Road”を聞きます。クラプトンはすでに腕利きのギタリストとしてイギリスでは名の知れた存在でした。ピーター・グリーンはまだそれほど名は知られていませんでしたが、クラプトンに負けない自信があったようです。ではまずそのギターの腕前を聞いてみましょう。クラプトンはブルーズ・ブレイカーズでフレディ・キングのインスト”Hideaway”を録音しましたが、それに対抗するかのようにピーター・グリーンは同じフレディ・キングのこのインスト曲を録音しています。

1.The Stumble/John Mayall & The Blues Breakers

ギターの音色がいいですね。クラプトンの”Hideaway”もいいんですが、この”The Stumble”も負けず劣らず攻撃的なワクワクするギターです。まあこれだけ弾ければクラプトンの後釜としてメイオールも納得したでしょう。
ジョン・メイオールのバンドは「メイオール学校」と呼ばれるようにいろんなミュージシャンが出入りしてストレートにブルーズを演奏する経験をしました。そしてその経験を生かして次のステージに向かって行ったわけです。
クラプトンはやめた後に「クリーム」を結成しブルーズをルーツにした新しいロックへの試みをしました。ピーター・グリーンも一年ほどで辞めてしまいブルーズ・ブレイカーズのベースのジョン・マクビーと以前ブレカーズに在籍していたドラムのミック・フリートウッドと「フリートウッドマック」を結成し歴史に残る曲を録音しました。またその後にブルーズ・ブレイカーズに参加したミック・テイラーは後にローリング・ストーンズに加入してロックの名曲を残すことらなります。そういった新しいブルーズロックの動きが後にハード・ロックの母体ともなっていきます。つまりジョン・メイオールはイギリスのブリティッシュ・ブルーズだけでなく広くブリティッシュ・ロックやハードロックの土台作りにも貢献した人と呼べます。彼自身に大きなヒット曲があったわけではありませんが、若いミュージシャンにロックをやる上でのブルーズの重要性を教えた人でした。次は多くのブルーズマン、ロック・ミュージシャンにカバーされた黒人ブルーズマン、ウィリー・コブの1960年のヒット。歌とハーモニカはジョン・メイオールです。

2.You Don’t Love Me/John Mayall & The Blues Breakers

ジョン・メイオールはブルーズのカバーそして自作のブルーズなどたくさんの録音を残した人でしたが、ブルーズを志す若い人に自由にそのミュージシャンがいいところを出せるようにするプロデュースをしたり、前回ON AIRしたクラプトン参加のアルバムでもクラプトンが初めて歌を録音した”Ramblin’ On My Mind”が収録されてましたが、メイオールがクラプトンに歌うことを勧めたのではないかと思います。次の曲もピーター・グリーンがフリートウッドマックで発表し大ヒットとなった”Black Magic Woman”の原曲となっているようなマイナー・キーのラテン調リズムです。

3.The Supernatural /John Mayall & The Blues Breakers

ピーター・グリーン・ワールドが全開という感じです。こういう個性的なフィーリングをピーター・グリーンはずっと持っていくんですがその感覚の素晴らしさに気づいて自分のバンドで録音させたジョン・メイオールの先見の明もあったと思います。
次の曲もフレディ・キングがオリジナルですが、メイオールの歌もいいですしピーター・グリーンのギターも火を吹いてます。別れを告げられた男が「いつの日かお前は後悔する、オレを哀れんでくれるな。心は真っ暗だけど俺は一人寂しく列車に乗って行くよ」と。

4.Someday After a While (You’ll Be Sorry) /John Mayall & The Blues Breakers

メイオールは高めの歌声なんですが、黒人ブルーズマンで高い歌声といえばJ.B.ルノアーでした。そのJ.B.ルノアの素晴らしさに早くから気づいていたのもメイオールでルノアが亡くなった時に「J.B.ルノアの死」という曲をリリースしてルノアを追悼しました。
彼が録音したカバー曲を見てみるとシカゴ・ブルーズを中心にフレディ・キングのようなモダン・ブルースそしてロバート・ジョンソンのような戦前のカントリー・ブルーズと多彩なレパートトリーがあります。つまりブルーズという音楽全般を彼は自分で探索したミュージシャンで、自分のバンドに参加したミュージシャンに聞くべきブルーズを示唆した人だったと思います。

5.Hard Road/John Mayall & The Blues Breakers

思い出しましたがもう50年以上前、1971年に京都会館のジョン・メイオールが初めて来日したコンサートに行きました。ドラムはいなかったのですが、ベースはキャンド・ヒートの名ベーシスト、ラリー・テイラー。ギターはこの人もあまり話題にならないですが同じキャンド・ヒートの素晴らしいギタリスト、ハービー・マンデル。ジョン・メイオールは主にキーボードとハーモニカそして歌。ドラム・レスのトリオ編成でしたがすごくいいコンサートでした。僕はブルースに突入する頃で初めてライヴで聴いたブルースでした。そして翌72年に僕は塩次伸二とウエストロード・ブルーズバンドを結成するのですが、塩次伸二もピーター・グリーンが大好きでこのアルバム「ハード・ロード」を二人でよく聴いてました。そして、バンドの名前を考える時にこのアルバムタイトルの「ハード・ロード」からロードをもらって、頭には関西にいるということでウエストをつけて「ウエストロード・ブルーズバンド」としました。

ジョン・メイオールさん、ありがとうございました。