2024.11.01 ON AIR

ブルーズは歌だ!スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

ジェイムズ・ブラウンはじめ多くのシンガーに敬愛された稀代のシンガー、リトル・ウィリー・ジョン vol.2

ON AIR LIST
1.Let Them Talk/Little Willie John
2.Leave My Kitten Alone/Little Willie John
3.Leave My Kitten Alone/The Beatles
4.Sleep/Little Willie John/Little Willie John
5.I’m Stickin’ With You Baby/Little Willie John

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集は先週に引き続きリトル・ウィリー・ジョン。彼が活躍したのは50年代の中頃から60年代にかけてですから黒人音楽の主流はブルーズからR&Bへ、さらにソウル・ミュージックに移行していく時代です。曲調も色々なスタイルの曲が生まれリトル・ウィリー・ジョンにも様々な曲が提供されましたが、どれも難なく歌ってしまうところがすごいというか腹立ついうか・・(笑)。
今日の1曲目はリトル・ウィリー・ジョンを代表する曲で僕もいつか録音したい大好きな曲です。
歌詞の内容は「彼女とのことを悪く言いふらしてる奴らは言わせておけよと。どんなに君のことを愛しているか世界中の人に知ってもらいたいくらいだ。あいつらは俺たちの愛をぶち壊したいんだよ。でも、俺たちの愛はずっと続くんだよ・・・」と熱烈な愛の歌です。ウィリ・ジョンの強力な歌唱力にただただ感嘆するばかりです。

1.Let Them Talk/Little Willie John

この曲にはロバータ・フラックがテンポを落としてしっとりと歌い上げた素晴らしいカバー・バージョンもあります。

次の曲は1959年リリース。R&Bチャート13位。タイトルが”Leave My Kitten Alone”「オレのKitten(オレの子猫ちゃん)に手を出すなよ」という意味です。この曲のことを調べていたらビートルズがカバーしていることがわかりまして、そのアルバム僕持ってました。
この曲はビートルズが1964年にリリースした”Beatles For Sale”のためにレコーディングしたが長くお蔵入りになっていて94年に『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』に収録されました。”Beatles For Sale”はビートルズがたくさんカバーをやっているアルバムですが、しかしすごくメジャーな曲でもないこの曲をどうしてビートルズが知ったのか知りたいです。この曲を選んだビートルズの選曲のセンスの良さにも改めて感心します。どうもリード・ヴォーカルをとったジョン・レノンがこの曲を好きだったようです。ウィリー・ジョンのオリジナルの良さを壊さず、自分たちのテイストでカバーしてます。ジョン・レノンの素晴らしい歌唱が聞けます。ということでウィリー・ジョンとビートルズと両方聞いて見ましょうか。
最初にリトル・ウィリー・ジョン

2.Leave My Kitten Alone/Little Willie John

バックで「ミャ」っていうおもろい女性コーラスが入っているのはたぶん子猫の声を模したものだと思います。
次はそのミャは入ってないビートルズ・ヴァージョン。たぶんビートルズがデビューする前のハンブルグのクラブとかリバプールのキャバーン・クラブの下積み時代に何度もこの曲をやっていたんだと思います。

3.Leave My Kitten Alone/The Beatles

ビートルズもいいんですよね。リズムがすごくグルーヴしていて歌がしっかりしていてさすがビートルズです。

リトル・ウィリー・ジョンに戻ります。次の曲は1960年にR&Bチャート10位 Popチャート13位まで上がった曲です。
Sleepですからタイトルの意味は「眠る」
歌詞は「私たちは眠るのがめちゃ好き。一日の終わりにその日の喜びが消え去るとき、夢の中で日々の甘い思い出が繰り返される。眠っている間に眠ってる時に眠っている間に」

4.Sleep/Little Willie John

とてもPopなサウンド作りです。黒人音楽のヒット・チャートだけでなく白人のPopチャートにも13位まで上がった感じがわかります。ストリングスを入れたソフトなアレンジですがやはり白人層にも売れたいという制作側の気持ちがあったのでしょう。
歌が上手い人というのは逆に言うとなんでも歌えるのでいろんなプロデュースを受けやすく、ウィリー・ジョンもジャズやスタンダードにも手を出していますが、結局オリジナルのR&Bを歌った時にこそその本領を発揮しています。その辺はサム・クックなんかも同じでサムも先輩のナット・キング・コールを狙ったようなジャズ・アルバムを出しています。しかしキング・コールはもともとジャズ・フィールドのミュージシャンなので、ゴスペルからR&Bでスターになったサム・クックとは違います。サムももちろん歌が上手いのでクオリティはあるのですが、ジャズは「なんか違うなぁ」と言う感じがします。
やはりウィリー・ジョンもジャズ風味より次のようなJumpブルーズ風のR&Bの方が僕は好きです。

5.I’m Stickin’ With You Baby/Little Willie John

リトル・ウィリー・ジョンはもっとたくさんの人に知られてもいい優れたシンガーなのですが、同時代のサム・クックほど白人に受けずポピュラーにならなかったのですが、黒人ミュージシャンの中では偉大なシンガーとして認められています。そして海を渡ったイギリスのビートルズのように白人でも彼の歌の素晴らしさをわかっているミュージシャンもいたというのがなんとも嬉しいですね。
ウィリー・ジョンは喧嘩した相手をナイフで刺して殺してしまい、服役中の68年に刑務所で亡くなってしまいました。わずか30才でした。
スター・シンガーになるには歌唱力や曲の良さだけではなく、マネージメント側の売り出し方ビジネスのつながり、レコード会社のプロモーションの力、また本人のルックスや受ける印象などいろんな要素が必要です。しかし。歌だけで言えばウィリー・ジョンはとてつもない歌の才能と天性の資質があったシンガーでした。
今回の「スタンダップ・ブルーズ・シンガー」特集は不世出の名シンガー、リトル・ウィリー・ジョンでした。