2024.11.08 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

不滅の名曲バラードを残した不世出のスタンダップ・シンガー、ジョニー・エース

ON AIR LIST
1.My Song/Johnny Ace
2.Don’t You Know/Johnny Ace
3.Pledging My Love/Johnny Ace
4.How Can You Be So Mean/Johnny Ace
5.Saving My Love For You/Johnny Ace

先週と先々週On Airしたリトル・ウィリー・ジョンにも匹敵する名シンガー、ジョニー・エースが今回のスタンダップ・ブルーズ・シンガーです。
ジョニー・エースは50年代前半素晴らしいブルーズマンたちが群雄割拠していたメンフィスの音楽シーンに登場してB.B.キング、ボビー・ブランドたちと並ぶ人気のシンガーでした。そのふたりとクラブが立ち並ぶメンフィスの”ビールストリート”から名前をとった”ビールストリーターズ”というグループにも参加していた実力の持ち主。
時代はブルーズからR&Bそしてソウルへと流れていく激しい変化の時代。その中で飾り気のないバラードを歌って真っ先に全国的なシンガーとなったのはB.B.よりもボビー・ブランドよりも早いジョニー・エースでした。
先週聞いたリトル・ウィリー・ジョンもバラードがすごく上手い歌手でしたが、ジョニー・エースはウィリー・ジョンより歌声の音域も低くて柔らかく奥深い朴訥な感じもある男っぽい声です。その歌声で珠玉のバラードを残したシンガーです。
まずデビューの1952年、22才の時にデューク・レコードで録音した最初の曲”My Song”
「君は涙して僕と別れると言った。いま君がいなくなって1時間が1年のように思える、だから愛する人よ、僕は僕の歌を歌う。僕はまだ愛してる。帰ってきてくれないか。僕たちは永遠に一緒のはずだよね」
「僕の歌」”My Song”

1.My Song/Johnny Ace

バックのサウンドのイナタさとジョニー・エースの飾らない歌声。歌い上げないでもソウルフルでじんわりと心に染み入ってくる歌。バラードシンガーの一つの手本みたいな人だと思います。実際B.B.キングもブランドもこのジョニー・エースの歌い方を研究したと言われてます。そしてアレサ・フランクリンが68年にこの曲を録音しています。

次の曲はまさに50年代中頃に流行ったジャンプ系のブルーズでスタンダップ・シンガーの本領発揮という感じです。
「オレが君のことすごく好きなこと、愛してること知らんのか」

2.Don’t You Know/Johnny Ace

どこかイナタさもあるバックのバンドがめちゃスイングしていて気持ちいいブルーズです。日本人でブルーズを好きだという人たちはギター・サウンドが好きな人が多いのですが、こういうオーケストラをバックにしっかりアレンジされたブルーズというのが苦手な人も多いんですがバックのギターにまで耳が行ってないのが残念です。いい録音には必ずいいギタリストが参加しています。                           
デビューしてすぐに全国的に売れまくっていたジョニー・エースは “Cross My Heart,” “Please Forgive Me,” “The Clock,” “Yes, Baby,” “Saving My Love for You,” そして”Never Let Me Go.” とヒット連発でその年のラジオで「最もONAIRされたシンガー」に選ばれました。
しかし1954年にビッグ・ママ・ソーントンとその年の長いツアーを終えてテキサスに着いて最後のライヴの前に彼は楽屋で酔っ払い、玉が入ってないと思った拳銃をふざけて自分の口に向けて撃ってしまったのです。それはクリスマスの夜でした。ロシアン・ルーレットの遊びで自分を撃ったという話もあるようですがちょっとふざけてみたのが真相のようです。それを目の前で見てしまったビッグ・ママは本当に髪の毛が逆立ったそうです。それにしても同時代の名シンガー、サム・クックは33才、リトル・ウィリー・ジョンは30才、そしてジョニー・エースは25才と次の世代を担う名シンガーが次々と若くして亡くなったのは本当に残念。
生涯に21曲しか録音しなかったのに8曲がヒット・チャートインしたジョニー・エース。その内3曲が1位という凄さですが、次は彼が亡くなった後にリリースされ10週間1位となった不滅のバラード。プロデュースしたジョニー・オーティスの演奏するビブラフォンの甘い音が印象的です。

3.Pledging My Love/Johnny Ace

1954年12月から10週連続1位の”Pledging My Love”

実は僕は自分のバンド”ブルーズ・ザ・ブッチャー”でジョニー・エースのジャンプ・ブルーズ・ナンバー”How Can You Be So Mean”をカバー録音しているのですが、ジョニー・エースはバラード・シンガーとして有名ですがアップテンポの曲でも見事な歌を残しています。丸みのある太い男らしい声で軽快に歌うのも彼の魅力です。「オレがおらん時にオマエは新しい男とキスしているやろ。オレの心は重くて冷たくなってる。これ以上続けたらオレは気狂ってしまう。オマエはどうしてそんなに意地が悪いんや。どうしてそんなにひどいことができるんや」

4.How Can You Be So Mean/Johnny Ace

次の曲ですが、内容がすぐに一緒にはなれないけど「僕の愛は君のために取ってあるんだ」という歌だと思う。「僕たちは一緒になるのにそんなに時間はかからない。そして一緒になったらその日から僕は君に愛してもらうよという内容。でも、なんで今すぐ一緒になれないのか気になります。大丈夫かこの男という勘ぐりもありますが、まあまあ・・ということで。

5.Saving My Love For You/Johnny Ace

この曲はリトル・ミルトン、アーマ・フランクリン、タイロン・ディヴィスと多くのシンガーがカバーしています。

ブルーズからR&Bに移っていく時代にやはり重要なのは歌の力と曲の良さだったと思います。ジョニー・エースには亡くなってからリリースされた「メモリアル・アルバム」という有名なアルバムがあります。是非、ゲットしてください。