2024.11.29 ON AIR

スタンダップ・ブルーズ・シンガー大特集

スタンダップ・ブルーズ・シンガーの大本命、ボビー・ブルー・ブランド その3

ON AIR LIST
1.It’s Not The Spotlight / Bobby Blue Bland
2.This Time I’m Gone For Good / Bobby Blue Bland
3.What A Difference A Day Makes / Bobby Blue Bland
4.3’Clock In The Morning/Bobby Bland & B.B.King
5.That’s The Way Love Is/Bobby Bland & B.B.King

先週、先々週に引き続きボビー・ブルー・ブランド。
ホビー・ブランドは1973年に長年在籍したデューク・レコードが大手のABCレコードに売却されたことでABCの所属となりました。73年頃黒人音楽はマービン・ゲイ、ロバータ・フラック、スティーヴィー・ワンダー、ダニー・ハサウェイなどが新しいソウル・ミュージックを作っていった時代でブルーズ系のミュージシャンにとってショー・ビジネスを生き抜くには辛い時代でした。それでもブランドが新しいレーベルで録音を続けられたのはやはり歌手としての実力を認められていたからでしょう。コアなブルーズ・ファンからはこの時代の録音は少しブルーズから遠ざかったコンセプトだったために無視されていますが、それでもやはり稀代の名シンガー、ボビー・ブルー・ブランドですから聞きどころはたくさんあります。
まず1973年移籍後の初アルバム”His California Album”から一曲。作詞作曲はキャロル・キングの元夫でもあるジェリー・ゴフィンと、キーボーディストのバリー・ゴールドバーグの共作でジェリー・ゴフィンの73年のアルバム『It Ain’t Exactly Entertainment』に収録されています。またロッド・スチュワートのカバーで知っている方も多いと思います。

1.It’s Not The Spotlight / Bobby Blue Bland

ぼくは75年にロッド・スチュワートが「アトランティック・クロッシング」というアルバムでカバーしているのを聞いたのが最初です。浅川マキさんが自分の日本語詞にして歌われたバージョンもよく知られています。
たぶんプロデュース側からの選曲でブランドは歌ったのだと思いますかせ、時代の音楽ではなくなったブルーズという厳しい音楽シーンの中で生き延びていくためには提案されたこういう歌も歌わなければならなかったのでしょう。
しかし、それだけでは終わらないブランド。次の曲はデューク時代にも録音していたブルーズで「とうとう彼女と別れる決心がついた」という曲です。R&Bチャートの5位まで上がりました。さすがボビー・ブルー・ブランド。

2.This Time I’m Gone For Good / Bobby Blue Bland

いいですね。ブランドの最高のディープ・ブルーズ・ヴォーカルです。

次は81年のアルバム”Try Me I’m Real ” このアルバムを買ったのは次の曲が収録されていたからです。
途中の名人芸のギター・ソロはシカゴ・ブルーズでも活躍し、その後ウエストコーストでソロ・アルバムも出していたフレディ・ロビンソン。
日本語のタイトルが「恋は異なもの」とつけられたこの名曲はもともとダイナ・ワシントンの大ヒット曲。ブランドの濃口ソース・ヴォイスでどうぞ。

3.What A Difference A Day Makes / Bobby Blue Bland

ボビー・ブルー・ブランドは84年までの約10年間にABCから10枚ほどのアルバムを出しました。やはりある程度のクオリティはあり歌に関しては聞きどころも多いのですが、このアルバムという決定打は出ませんでした。そんな中で記憶に残る一枚が1974年にリリースされたB.B.キングとのデュエット・ブルーズ・ライヴ・アルバムです。
ボビー・ブランドはかってのメンフィスでの仲間であり、ブルーズの盟友B.B.キングと二人が名義になったライヴアルバムをリリース。初めて一緒に歌う( Together For The First Time)と題された二枚組のアルバム。スタジオにお客さんを入れたスタジオライヴです。
B.B.はすでに”The Trill Is Gone”でグラミーを獲得しており、白人のロックの殿堂フィルモアでもライヴを敢行しており白人層まで含めた知名度という点ではB.B.の方が有名な存在です。しかし、黒人サーキットではB.B.を凌ぐ超大物のボビー・ブランドという立ち位置。リラックスしながらもここぞという時にはお互いに引かない場面があったりなかなか面白いアルバムです。バックはB.B.のバンドにブランドの右腕とも言えるメル・ブランドなども入っており大人数ですがうまくコントロールされています。
二人で語りをしたり笑いあったりしながら自分たちのヒット曲やブルーズのスタンダード・ナンバーを次々歌い繋いでいくメドレーなどなかなか楽しいアルバムです。

まずMCの後にすぐB.B.キングのヒット曲”3’Clock Blues”が始まります。最初はブランドから歌い始め呼応するようにB.B.がギターを弾き、2番はB.B.が歌い、3番は掛け合うように二人で歌うというコテコテなライヴです。

4.3’Clock In The Morning/Bobby Bland & B.B.King

世界を飛び回るB.B.キングとブルーズが生まれた同胞黒人のクラブを回り続けるボビー・ブランド。今思えばこの大きな柱である二人がいたからこそブルーズという音楽は80,90年代そして21世紀へと続いていく力になったのだと思います。
スタンダップ・シンガーであるボビー・ブランドの歌うブルーズのバックでB.B.のギターが聞こえてくるのはブルーズファンにとって贅沢な感じがします。
このライヴが評判になってTV番組の「ソウル・トレイン」にも二人で出演し、2年後の76年に再びライヴ・アルバム”Together Again…..Live”を二人でリリースします。ブランドにとってはシンガーとして高いクオリティを保ったアルバムは出し続けたものの、この70年代に決定打となるアルバムが出なかった時代にこのB.B.とのアルバムが話題になり良かったと思います。
最後の曲は1962年にR&Bチャート1位、ポップチャートでも33位まで上がったボビー・ブランドのヒット曲にB.B.が絡んで歌っています。バックがさっきのB.B.キング・サウンドからボビー・ブランド・サウンドに変わっているところも面白いというかすごいです。

5.That’s The Way Love Is/Bobby Bland & B.B.King

このアルバム”Bobby Blue Bland&B.B.King Together For The First Time”はR&Bチャートで2位まで上がりました。さて来週もう一回、スタンダップ・ブルーズ・シンガー・シリーズの大本命このボビー・ブランドの第二の全盛期80年代マラコレコード時代に突入します。
ではまた来週。