2025.02.21 ON AIR

★祝来日!メイヴィス・ステイプルズ大特集「メイヴィスと黒人音楽の歴史」Vol.4

カーティス・メイフィールドとのコラボ、そしてアレサとの熱烈ゴスペルライヴ

Let’s Do It Again
Aretha Franklin Gospel Live
Mavis and Aretha

ON AIR LIST
1.Let’s Do It Again/The Staple Singers
2.Tonight I Feel Like Dancing/Mavis Staples
3.Oh Happy Day/Aretha Franklin & Mavis Staples
4.We Need Power/Aretha Franklin & Mavis Staples

来日するメイヴィス・ステイプルズの大特集4回目
1975年に所属していたスタックス・レコードが倒産してステイプル・シンガーズはカーティス・メイフィールドが立ち上げたカートム・レコードに移籍します。
その75年にぼくは初めてステイプル・シンガーズのライヴをロスアンゼルスで観ました。それはテレビの公開録音でした。その年にシドニー・ポワチエが監督主演し、ビル・コスビーなどが出演した映画”Let’s Do It Again”(邦題は「シドニー・ポワチエの一発大逆転」)のテーマソングだった”Let’s Do It Again”をステイプル・シンガーズが歌って大ヒットしていました。チャート一位になりラジオでもヘヴィ・ローテーションで流れていてそれでテレビ番組でも取り上げられ公開録音になったのだと思います。
ライヴは最も油がのっている時期のステイプルズですから最高でした。
このヒット曲を作ったのはカーティス・メイフィールド。
僕が75年にロスで買ったノイズ混じりのシングル盤から聞いてください。

1.Let’s Do It Again/The Staple Singers

映画も観に行きました。黒人街の映画館でしたがコメディ映画なので観客がめちゃ盛り上がって最後にこの曲が流れるとみんなが口ずさんで映画館から出て行きました。この曲はビルボードのポップチャート、ソウルチャート両方で1位となる大ヒットとなりました。
しかし、これ以降は78年のザ・バンドの解散コンサート「ラスト・ワルツ」に出演して”The Weight”を歌ったという話題以外にステイプル・シンガーズの情報は少なくなり、レコード会社もワーナーはじめいくつかの会社で録音はあったものの80年代はあまり脚光を浴びることはありませんでした。もちろんライヴ・ツアーは行っていたのですが黒人音楽のシーンはプリンスやマイケル・ジャクソンが先頭を切る時代に変わって行きました。
そこで再びメイヴィスのソロ・アルバムの話が持ち上がってきたのだと思いますが、77年にソロ”A Piece Of The Action”がリリースされました。カーティス・メイフィールドがプロデュースした映画のサントラであまり評判にもなりませんでした。そして次のソロが79年の”Oh What a Feeling”。このアルバムはアトランティック・レコードに移籍してアレサ・フランクリンを世に出した名プロデューサー、ジェリー・ウェクスラーの元で作られました。これも微妙なアルバムです。
80年代のディスコ・ミュージックやコンピューターサウンドも取り入れたことは悪くないのですが、中途半端でメイヴィスにフイットしませんでした。
1曲聴いてみましょう。

2.Tonight I Feel Like Dancing/Mavis Staples

「今夜、私は踊りたい気分よ」という歌ですが、個人的にはエスター・フィリップスの”What A Difference A Day Makes”を思い出すようなディスコ・ソウル。しかし、メイヴィスにはハマらなかった。それでもメイヴィスほどの歌手になるとある程度の高いクオリティで歌えてしまうのですが・・・。
メイヴィスのソロ・アルバムの歴史を振り返ってみるとメイヴィスが初めてソロ・アルバムをリリースしたのは1969年。ステイプル・シンガーズが所属したスタックスレコード系列のヴォルトレコードからリリースされた初アルバムが『メイヴィス・ステイプルズ』。その時メイヴィス30才。メイヴィスの歌の実力からするとちょっと遅い感じがしますが、やはり彼女はステイプル・シンガーズを音楽活動の主体に考えていてソロ活動を活発にやる気はなかったのでしょう。その当時二枚ソロ・アルバムをリリースしました。いろんな曲のカバーをメイヴィスに歌わせているのですが、プロデュースがしっかりしてなくてコンセプトが決まっていない感じです。よくあることですが、初期のアレサ・フランクリンなども歌が上手いが故にプロデュースが良くなくても何でもそつなく歌えるのですがこれと言った決め手にかけてしまう・・この二枚のメイヴィスもそんな感じでアルバムとしては印象の薄いものでした。
ところで今アレサの名前を出しましたが、実は1987年にアレサ・フランクリン自身プロデュースしてリリースしたデトロイトの教会でのライヴ・アルバムにメイヴィスがゲスト出演してます。そこに素晴らしい二人のデュオがあります。アレサ・フランクリンのゴスペル・ライヴ・アルバム”One Lord One Faith One Baptism”。アレサが子供のころから歌っている教会でのライヴ。振り返って見るとアレサもメイヴィスも幼い頃からゴスペルを歌って教会で育った経歴を持っています。
そして二人とも子供の頃からゴスペル界で名を馳せ、その後ソウル・シンガーとしてレジェンドとなりました。そのふたりがデュエットという信じられない曲です。
空に舞い上がるようなアレサの歌声と地を這うようなメイヴィスのコントラルトの歌声がすごくよくマッチしていて強力なゴスペル・グルーヴになってます。曲はエドウィン・ホーキンス・シンガーズの大ヒット曲です。6分以上ありますがあまりに素晴らしいので最後まで聞いてください。

3.Oh Happy Day/Aretha Franklin & Mavis Staples

実力のある素晴らしい歌手が二人になるとさらなる相乗効果でこんなすごい音楽になるんですね。アレサもメイヴィスも合わせるところは合わせているのですが、互いにめちゃパワフルで高みに向かって行ってます。アレサには72年にリリーサされた教会でのライヴ・アルバムの有名な”Amazing Grace”がありますが、このアルバムはあのアルバムほどきちんとプロデュースされていませんが、教会の熱気とシンガーとプレイヤーのグルーヴの凄さは引けを取らない出来です。いいアルバムなので是非ゲットして聞いてください。”One Lord One Faith One Baptism”
そしてメイヴィスのゲスト出演でこのアルバムは一層輝きを増しました。
もう一曲。

4.We Need Power/Aretha Franklin & Mavis Staples

80年代ステイプル・シンガーズとしてヒットは出なくなったのですがライヴの活動はやっていました。ビル・ウィザースがディスコ・ソングをやりたくなくて引退してしまった難しい時代でした。80年代はコンピーター・サウンド、ドラムマシン、ヒップホップの台頭と60年代70年代から歌ってきたシンガーにとっては苦難の時代でした。歌の力があっても難しく、メイヴィスへの強力なプロデュースが欲しかった時期です。
そこに現れたのがかのプリンスでした。ではその話はまた来週、Hey,Hey,The Blues Is Alright!