ブルーズ・ピアノの魅力あふれるオーティス・スパンの名盤がリリース
OTIS SPANN/Walking The Blues(BSMF 7029)

ON AIR LIST
1.It Must Have Been The Devil /Otis Spann
2.Otis’ Blues /Otis Spann
3.Going Down Slow(vol.St.Louis Jimmy)/Otis Spann
4.Half Ain’t Been Told/Otis Spann
5.This Is The Blues/Otis Spann
50年代から60年代にかけてシカゴ・ブルーズのシーンの中でとても重要なピアニストのオーティス・スパンのアルバム”Walkin’ The Blues”が日本のBSMFレコードから去年の12月に再発されました。このアルバムは61年にリリースされた名盤と呼ばれている”Otis Spann Is The Blues”と同じセッションで録音されたものでクオリティは”Otis Spann Is The Blues”と変わらない高いものです。
”Walkin’ The Blues”はオーティス・スパンが亡くなった直後、1972年にリリースされたものでギターに名人ロバートJr.ロックウッド。ヴォーカルにセントルイス・ジミーが4曲参加しています。
最初の曲「あの娘が心変わりしてしまったのは悪魔のせいだったに違いない」悪魔は他の男のことでしょう。多分。いや絶対。
1.It Must Have Been The Devil /Otis Spann
オーティス・スパンは50年代にシカゴ・ブルーズが全盛を迎えた時期のボスのマディ・ウォーターズの右腕やった人です。マディのアルバムにたくさん参加していますし、YouTubeで映像も残っているので観てください。
次の曲はオーティス・スパンがブルーズ・ピアニストとしていかに素晴らしいかよくわかるインストルメンタル曲です。左手で弾くウォーキン・ブルーズのリズムの安定感やグルーヴ感と右手で弾かれる多彩な力強いソロ。あの大きなグランドピアノが揺れている感じがわかります。
スパンは1946年にミシシッピからシカゴに出てきて尊敬するピアニスト、ビッグ・メイシオの教えを受けています。そのメイシオのピアノスタイルがルーツに聞こえます。
2.Otis’ Blues /Otis Spann
次のGoing Down SlowはこのアルバムにVocalで4曲参加しているセントルイス・ジミーことジミー・オーデンが1942年に作った曲
「楽しいこともたくさんあったけど、病で体が少しずつ悪くなりたぶんオレはもうだめだ。お袋に俺の罪を許してくれと伝えて欲しいという歌」
親不孝して生きてきた男が死が近づいていることを悟った歌です。ハウリン・ウルフやボビー・ブランドはじめカバー・バージョンも多くありブルーズの名曲の一つです。
このアルバムに参加しているギターの名手、ロバート・ロックウッド・ジュニアの抜群のバッキング・ギターも素晴らしいです。
3.Going Down Slow(vol.St.Louis Jimmy)/Otis Spann
セントルイス・ジミーのダウンホームな衒いのない歌が人生の終わりを迎えている男のブルーズを本当によく表現しています。
ところでオーティス・スパンが亡くなったのは1970年だったのですが、彼の生年月日が二つありまして1924年というのと1930年です。まあ昔のブルーズマンは生年月日がわからない人も多いのですが、このスパンの場合は1924年と30年って6年も違うし、生まれた場所も同じミシシッピなんですがベルゾーナとジャクソンと違っています。だから亡くなった年齢も40歳と46歳になってしまうわけです。
これはおそらくそういう届け出みたいなのが大雑把というか無頓着だったのと役所で管理する白人の黒人への対応がいい加減だったというのもあると思います。でも、6年ってなんやねんと思います。
4.Half Ain’t Been Told/Otis Spann
スパンは50年代中頃からシカゴ・ブルーズのボス、マディ・ウォーターズのバンドのピアニストとして、マディの右腕としてバンドのサウンドを支えました。ギターがブルーズの花形楽器になっていく60年代にピアノがいかにブルーズ表現にとって大切な楽器であるかを示した人でした。その転がるようなRolling Pianoはいつも力強くグルーヴしR&Rのチャック・ベリーの録音にも参加して印象に残るプレイをしています。そしてマディの代表曲”Got My Mojo Workin’”のイントロだけでグルーヴするピアノも忘れられません。ではもう一曲オーティス・スパンの見事なピアノ・プレイを聴いてください。スパンのブギ・ウギ・ピアノです。
5.This Is The Blues/Otis Spann
今はもうスパンのようにこういうブルーズ・ピアノを弾いて濃厚なブルーズ・ヴォーカルを聴かせてくれるブルーズマンもいなくなりました。
60年代にシカゴ・ブルーズ・ピアノの華を最後まで咲かせたブルーズマンでした。
今回BSMFレコードからリリースされたこの”Walkin’ The Blues”はブルーズの名盤と名高い”Otis Spann Is The Blues”と同じように素晴らしいアルバムです。
ギターのロックウッドとのピアノとギターの見事な絡みも聞けます。お勧めです。