2025.04.04 ON AIR

ホトケの中古盤放浪記 その一

オークランド・ブルーズのボス、ジミー・マクラクリンの「イナタシャレ」たブルーズ

The Best Of Jimmy McCracklin (MINIT LP-40009)

ON AIR LIST
1.The Walk/Jimmy McCracklin
2.Just Got To Know/Jimmy McCracklin
3.Tramp/Lowell Fulson
4.Think/Jimmy McCracklin
5.Every Night,Every Day/Jimmy McCracklin

放送開始から祝900回目です。ディレクターの玉田君が急に「今回で900回目です」と。途切れずにずっとやってこれて嬉しいです。今や私の大きなライフ・ワークです。頑張って続けてブルーズのアーカイヴスをたくさん残しておきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。

私の唯一の趣味はほぼ半世紀続いている中古盤の収集です。自分が住んでいる街にはレコード屋さんがないので大きな街に出かけた時とかツアーで巡る街でレコード屋さんに行ってます。まったく自分が欲しいものがない時もなんとなく行くこともあります。また私はいわゆるコレクターではないのでレアで高額なものには手を出しません。だから今回から紹介していくアルバムは全て中古盤でそこそこの値段のものです。
まず今日は私がアルバムを探す時の常套手段の一つであるベスト盤のゲットです。まずベスト盤が出せるミュージシャンというのは何曲かヒット曲がある人です。またそのミュージシャンのアルバムを集める時にまずベスト盤で最初にどういう感じのミュージシャンなのか、本当に自分のセンスに合うミュージシャンなのか知ることができます。ライナーノーツやクレジットさらにネットなどでそのミュージシャンの情報を自分の中に蓄積します。そして気に入ればそのミュージシャンのいろんなアルバムを買い始めます。
今日はウエストコースト・ブルーズ特にベイエリアという地域でロウエル・フルソンと並ぶ偉大なブルーズ・シンガー、ジミー・マクラクリンです。聴くアルバムは”The Best Of Jimmy McRacklin”。確か中古で1000円くらいでゲットしたブツです。
レコーディング・レーベルはMINIT リリースは1967年
レーベルのミニットはニューオリンズで50年代終わりに立ち上げられアレン・トゥーサンをプロデューサーに立ててアーニーK.ドウはじめニューオリンズR&Bをたくさんリリースしました。レーベルを見るのも大切です。
少しジャケットが痛んでますが盤がしっかりしていればそういうことは私は気にしません。
このアルバムがリリースされた67年はミニット・レコードはもう手広くいろんなミュージシャンを手がけていてジミー・マクラクリンのかってのヒット曲の再録音も含めて彼のアルバムを作ったのでしょう。
まずは1958年にCHECKERレーベルからリリースされて大ヒットした「The Walk」

1.The Walk/Jimmy McCracklin

このThe WalkはR&Bチャートで5位、ポップチャートでも7位まで上がるヒットになりました。イントロのリフがフレディ・キングの大ヒット”Hideaway”に使われていることも有名です。

ジミー・マクラクリンはフレディ・キングだけでなくB.B.キングやマジック・サムにも影響を与えた人で次の曲もマジック・サムがカバーしています。
「知りたいんや、知りたいんや、ほんまに知りたいだけなんや」と始まる印象的な歌ですが、好きな彼女が遊びまわっていて落ち着いてくれない。俺を利用しているだけやないのか・・知りたいんや。つまり彼女の本当の気持ちを知りたいという歌です。

2.Just Got To Know/Jimmy McCracklin

84年に来日したこともあったのですが、日本ではあまり人気が出なかったです。人気が出なかった理由はいつも言っていることですが、日本ではギターを弾くブルーズマンしか人気が出ないからです。困ったもんです。
しかし、マクラクリンはシンガー&ソングライターであり、ピアニストでリリースしたアルバムが30枚以上あり、その30枚から4枚がゴールド・レコードになってますからアフリカン・アメリカンの間での人気のほどがわかります。
ベイエリアと呼ばれるオークランドあたりではブルーズ、R&B界隈のボス的存在でした。ウエストコーストのブルーズ・シーンといえばテキサスから来た偉人ロウエル・フルソン。僕はそのロウエル・フルソンとジミー・マクラクリンがどこか似たテイストがあるなと思っていたのですが、実は私も歌って録音もしている有名曲があるのですが実は次のこの曲はロウエル・フルソンとジミー・マクラクリンの共作なんです。ちょっとだけ聞きましょうか。

3.Tramp/Lowell Fulson

この”Tramp”という曲はロウエル・フルソンが歌ってヒットさせた曲ですが、ジミー・マクラクリンが歌ったものがあれば聞きたかったですね。二人は仲が良かったそうです。
1965年のヒット。

4.Think/Jimmy McCracklin

無骨な歌の感じとその中にあるブルーなテイスト・・そのあたりがロウエル・フルソンにも似ています。ほとんどの歌を自分で作って、しかも何曲もヒットを持っているソング・ライターとしての才能も素晴らしいです。ブルーズとR&Bの間くらいにいるのでブルーズン・ソウル・シンガーと呼んでもいいのですが、ボビー・ブランドやジョニー・テイラーあたりとはまた違う味があり、それがオークランド・ブルーズの味ではないかと思います。
マクラクリンの作るブルーズの曲の特徴の一つに今のようにコーラスが入っている曲が多いことです。コーラスが入っていることでポップな感じがしてR&B的なファンキーなテイストになっています。

5.Every Night,Every Day/Jimmy McCracklin

このEvery Night,Every Dayもマジック・サムがカバーしていたと思います。
ジミー・マクラクリンは2012 年12 月20 日に91 歳で亡くなりました。ブルーズマンとしては大大往生だったと思います。今日聴いてもらったようにダウンホームで無骨な歌ですが、どこかファンキーでポップさもある「イナタシャレ」のブルーズを残したジミー・マクラクリン。意外と中古盤屋で見かけることも多いのでぜひゲットして聴いてみてください。次回も中古盤放浪記でリトル・リチャードに大きな影響を与えた謎多きロックンローラー、エスケリータです。