ホトケのレコード中古盤放浪記 その二
CDよりもレコードが欲しい!!!
ESQUERITA! / Esquerita

ON AIR LIST
1.Hey Miss Lucy/Esquerita
2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita
3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita
4.I’m Battle Over Hattie_Esquerita
5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita
このレコード中古盤放浪記は中古レコードを買うのが趣味な私の個人的な思いを話しながら音楽を聴いてもらうという趣向です。
CDで持っているアルバムなのにやっぱりレコードで欲しいというのがレコード・マニアの悲しいところで、今日聴くこのエスケリータもCDで持っているのに中古レコードでジャケットを見た途端に欲しいと思った1枚。正直に言うとそれほど好きという感じでもなかったのですがリトル・リチャードに与えた影響などを知り、やはりLPで欲しいと思っていたところにこのジャケットですから。あとで番組ホームページでジャケットを確認して欲しいのですが、とにかく一度見たら忘れられないインパクトのあるジャケ写です。
まず「ボンパドール」と呼ばれるリーゼントを食パンみたいに超盛り上げたヘア・スタイルに細い髭を生やしてキラキラにデコレイトされた派手なサングラスをかけて派手な衣装を来た男・・レコード・ジャケットにはエスケリータ!とだけ文字がある。見た目はR&Rのキング、リトル・リチャードに似ているので二番煎じかと思っていたら、実はリトル・リチャードにピアノを教えたのはこのエスケリータで、ピアノだけでなくファッションや高い声でホ~ッ!と叫ぶ(スクリームする)歌い方もオリジナルはエスケリータだったという。ということでリトル・リチャード・ファンとしてもこれはレコードで持っておきたいと購入。
今日聴くのはエスケリータの1958年のキャピタル・レコード・デビュー・アルバム。エスケリータ24才の時。キャピタル時代のシングルを集めたアルバム。まずは挨拶代わりのアルバムのサイドAの一曲目。
1.Hey Miss Lucy/Esquerita
ニューオリンズR&Bのテイストがたっぶりの曲で「ほゅ~っ!」という甲高いスクリームを出す芸風はやはりリトル・リチャードに似てます。というかリトル・リチャードがエスケリータに似てるのか・・・その辺はどうなのかわかりませんが、エスケリータは自分が最初だと言ってます。
ジャケット写真を見るともっとめちゃめちゃな人かと思いきや、すごくちゃんとした音楽性です。調べて見るとやはり歌は教会でゴスペルを歌って育ったようです。ピアノは全くの独学ですがめちゃ上手いです。次の曲はリズム・パターンがリトル・リチャードの”Slippin and Sliddin”と同じです。
2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita
リトル・リチャードがデビューした7年あと1958年にエスケリータがデビュー。ピアノを教えた先生エスケリータの方が後のデビューになったわけですが、58年というとR&Rのブームが下火になり始めた頃です。すでにリトル・リチャードがヒット曲を次々と出してすごく有名になっていたので同じような芸風なのでやはりエスケリータは二番煎じと思われたんでしょう。
しかし、デビューしたレーベルは大手のキャピタル・レコードです。でもあまりブロモーションしてもらえなかったのかも知れません。私も経験してますが大手のレコード会社だからプロモーションでプッシュしてくれるとは限りません。しかもR&Rのブームは下火に向かっていく時期ですから。彼の代表曲となるようなヒット曲が出なかったのが残念です。
次の曲もニューオリンズのR&Bの影響が強かったものでニューオリンズのファッツ・ドミノを思い出させるような曲調です。
3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita
ここでエスケリータの略歴。1935年11月20日サウス・カロライナ生まれ本名はエスキュー・リーダー(Eskew Reeder Jr.)です。ルーツはゴスペルで独学で覚えたピアノに魅せられて高校を退学して、ニューヨークのゴスペル・グループ、ヘヴンリー・エコーズに参加。1958年にソロとしてキャピトルからデビューしたがヒットも出ず、話題になることもなく故郷サウス・カロライナに戻りエスキュー・リーダーリーダーという名で活動、60年代にミニット、エヴァーレスト、オーケー、クロストーン、ブランズウィック、ノートンといろんなレーベルで録音するもヒットは出ず70年代にはシーンの第一線からは消えてしまっています。
4.I’m Battle Over Hattie/Esquerita
何曲か聴くとわかるのですが、リトル・リチャードと何が違うのかといえばまず楽曲、曲です。曲がリトル・リチャードはジャンプ・ブルーズやニューオリンズR&Bの影響があっても強烈なオリジナリティがあります。つまりエスケリータは曲が普通。悪くないですが普通。リチャードは「トゥッティ・フルッティ」、「のっぽのサリー」、「ルシール」、「リップ・イット・アップ」、「ジェニ・ジェニ」、「グッド・ゴリー・ミス・モリー」など印象に残るものがたくさんありました。あとは録音のバックバンドがリトル・リチャードはドラムがアール・パーマー、サックスにサックスのリー・アレン、ベースのフランク・フィールズ、ギターのジャスティン・アダムズなど優秀なスタジオ・ミュージシャンが揃っていました。それに比べるとエスケリータの方は劣る感じです。
歌はゴスペルをルーツにしたしっかりしたものですし、ピアノはリトル・リチャードに教えたくらいですから上手いです。もう少し早くデビューして何かきっかけさえあればエスケリータもR&Rのスターの仲間入りができた実力は十分あります。次の曲もエスケリータは素晴らしいのですがバック、特にドラムのビートがズレています。残念。
5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita
70年以降も歌っていたようですがシーンの表舞台に出ることはなかったエスケリータは51才で86年に亡くなっています。インタビューとか映像とかがほとんどない人で一体どんな人柄だったかもわからない謎の多い人です。ひとつ、リトル・リチャードは初めてエスケリータに会った時のことを「エスケリータは今まで俺が会った中で一番大きな手をしていた。俺の二倍はあった」と言ってます。ほんまか?!!(笑)
今回のジャケットで買ったと言ってもいいかも知れないこのエスケリータのキャビタル盤は今も時々中古盤屋さんで見かけます。興味のある方は是非。今回のレコード中古盤放浪記 その二は謎の多きロックンローラー、エスケリータでした。