ホトケのレコード中古盤放浪記
その7
全く知らないミュージシャンの中古LPを買う時の心得
買ってよかった素晴らしいサンダース・キング
Saunders King/the first king of the blues

ON AIR LIST
1.Summer Time Boogie PT.1/Saunders King
2.Summer Time Boogie PT.2/Saunders King
3.S.K.Blues/Saunders King
4.Empty Bedroom Blues/Saunders King
5.Goin’ Mad/Saunders King
レコード店で中古盤を掘っていると全然知らんアルバムなんやけどでもなんかジャケット写真とかアルバム・タイトルとかミュージシャンの名前とか顔が気になるアルバムが出てくることがあります。そういう時は何かヒントがないか探すわけですが、輸入盤の場合はまずアルバムに英文ライナーノーツが書いてあれば、英文ライナーノーツをできる限り頑張って読みます。参加ミュージシャンやプロデューサー、作詞作曲家のクレジットとかも大切な情報源です。輸入盤の場合、日本盤のように帯やジャケット中のライナーや歌詞カードはまず入ってないので裏ジャケットに書かれている英文の情報があればそれを読むしかないわけです。まあネットで検索することもできますがレコード店にいるときはそれはやりたくないんですよね、もちろん裏ジャケに何にも書いてないアルバムもたくさんあります。そういう時はもうジャケット写真頼りで清水の舞台かに飛び降りるしかありません。
今日紹介するアルバムは清水の舞台かに飛び降りるほどの値段ではなかったですが、アルバムタイトルの”the first king of the blues”(ブルーズの最初のキング)というのがまず気になりました。ミュージシャン名はサンダース・キング(Saunders King)で全く知らない名前です。ライナーの最初にはB.B.やアルバート、フレディなどキングと付くブルーズマンはいるけど最初にキングとついたのはこのサンダース・キングなんやと力強く書かれています。
いろいろ話す前にまずこのアルバムのA面の一曲目を聴いてみましょうか。
1.Summer Time Boogie PT.1/Saunders King
聴いてすぐわかるのはジャズ・ジャンプ・ブルーズ系統ですね。名前も知らない初めて買うミュージシャンのアルバムですから「どんなんやろ」と不安もあるわけですが、家でターンテーブルに載せて一曲目を聴いて「これはしっかりしたミュージシャンのしっかりしたアルバムや」と一安心な感じです。
ライナーを読むと42年に自分の6人編成のコンボバンドを結成してレコーディングも初めています。キャブ・キャロウェィが広めたジャンプ・ブルーズがオーケストラからコンボになってルイ・ジョーダンが現れてジャンプが全盛に向かう頃ですね。
ここでこのアルバムを買った理由の一つはレコード・レーベルが”ace”だったことです。aceはイギリスのレコード会社でなかなか信用できるレーベルです。いいコンピレーション・アルバムを作ってたくさん再発しています。
さて、今のSummer Time Boogie PT.1の次にPT.2が収録されています。時々パート1.パート2というのがありますが、例えばジェイムズ・ブラウンの”Sex Machine”のシングル盤は演奏時間が長くてA面に収まり切れなくてB面に続きの演奏が入っています。レイ・チャールズの”What’d I Say”のパート1,2もそのタイプです。ではSummer Time Boogie PT.2を聴いてみますか。
2.Summer Time Boogie PT.2/Saunders King
ライナーを読み進むうちにこのサンダース・キングには1942年に「S.K. Blues」という大きなヒットがあったと書いてあります。あとでネットで検索したところこの「S.K. Blues」はエレキ・ギターをフィーチャーした最も初期の録音と書いてあります。つまりヒットしただけでなく歴史的な意味合いもある曲で「おお、これなかなかのアルバムやん」と嬉しくなる訳です。歌詞が「可愛いベイビー、おまえの柔らかい素敵な体を俺の膝の上に乗せなよ。お前の耳元で愛を囁きたいそして俺の悩みを聞いてもらいたいんだ」と最初歌ってるんですが、途中から「俺が買ってやったウィッグ(カツラ)を返してくれ。そして頭はハゲてしまえ。お前がずっと俺にちゃんとしないから頭の毛が全部なくなってしまうぞ」というひどい歌詞になります。
3.S.K.Blues/Saunders King
曲名のS.K.というのは名前のSaunders Kingの頭文字ですね。ギターソロも良かったですね。今の曲は後にビッグ・ジョー・ターナーやジミー・ウィザースプーンにカバーされたということですからやはりかなりヒットしたのでしょう。しかし今の曲1942年のヒットですからウィッグを女性にプレゼントする、買ってあげるようなことがそんな昔からあったんですね。すごいです、アメリカのウィッグ文化! 日本も最近はウィッグが普通になってきましたが、昔は「あの人カツラなんやて・・」とこっそり言う感じでしたよね。僕は女性でも男性でも綺麗に見えるならウィッグなんかどんどんやればいいと思います。ぼくはまだ地毛ですけどね。
そこでさらにライナーを読み込むと1909年にルイジアナで生まれウエストコーストに引っ越してオークランドでお父さんが教会をやっていたとのこと。つまりお父さんは牧師ですね。それで幼い頃から歌っていてピアノやバンジョーも練習したらしいです。若い頃は「サザン・ハーモニー・フォア」というゴスペル・グルーブにも参加して歌ってます。その後1938年にギターを始めてブルーズに入っていくわけですからギターを始めたのは29才ということになります。かなり遅いですね。
このアルバムに収録されている曲では他に”Empty Bedroom Blues”というのがR&Bチャート9位まで上がったヒットになっています。
4.Empty Bedroom Blues/Saunders King
Empty Bedroom Bluesというベッシー・スミスの同名曲がありますが、それとは関係ない曲です。
ネットにサンダース・キングのインタビューがアップされてまして、最初に好きになったギタリストはジャズで最初にエレキギターを使ったと言われているエディ・ダーラムとのことで、今度はエディ・ダーラムを探してみようと思います。
彼はやはりジャズ・ミュージシャンとの交流が多く、チャーリー・クリスチャン、ビリー・ホリディ、サラ・ヴォーンとも仕事をしたことがあるそうで逆にブルーズ・ミュージシャンとはあまり接触はなかったようです。
実はB.B.キングがサンダース・キングのファンだったこともわかりました。つまり、いろいろ調べてみたらサンダース・キングはかなり有名なミュージシャンだとわかりました。ぼくが知らなかっただけで・・。いや、まだまだ知らんこと多いです。失礼しました。
5.Goin’ Mad/Saunders King
予備知識のあまりない知らないミュージシャンのアルバムと初めて出会った時は家で初めてターン・テーブルに載せて聴くまでドキドキします。今回のサンダース・キングは「当たり!」でした。外れる時もあります。それも楽しいと言えば楽しい。でもやっぱり外れないようにレコードや音楽の知識をどんどん頭に入れることです。