2025.05.30 0N AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その8

LPのタイトルとコンピレーション曲の興味だけで買ったら充実したいいアルバムだった

The Real R&B (Tasty Records Mono)

ON AIR LIST
1.Little Queen Bee/Slim Harpo
2.Goin’ Crazy Over T.V. /Jimmy Anderson
3.Baby Let’s Play House/Arthur Gunter
4.Still Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
5.I Had A Dream Last Night/Lonesome Sundown

中古レコード店で「本物のR&B」(The Real R&B )と題された派手なオレンジ色のジャケットに手が止まりました。参加ミュージシャンを見るとスリム・ハーボ、サイラス・ホーガン、ライトニン・スリム、ロンサム・サンダウンなどの名前でルイジアナのエクセロ・レコードの音源のコンピレーション・アルバムとわかる。実際ジャケット裏の英文ライナーには「エクセロからのセレクト」と書いてあ理、リリースしているのは”Tasty Records”(テイスティ・レコード)はイギリスのサウス・マンチェスターのレコード会社。
リリースは1964年だけどライナーを読むと前に”Authentic Rhythm And Blues”というやはりエクセロ・レコードの音源を使ったコンピレーションを出していてそれが評判が良かったのでまたリリースしましたとある。ライナーの最後には「多くの人がリズム&ブルーズって何?って訊くがこのレコードがその答えを出していると思う」と自信満々にかいてあります。
まずA面の一曲目。エクセロ・レコードの一番の売れっ子スリム・ハーポの曲から。
曲名”Little Queen Bee”「私の可愛い女王蜂に新しい王様ができた。新しい王様はきっと彼女を幸せにしてくれるだろう」と始まる曲は昔付き合っていた彼女にまだ未練があって自分のところに戻って欲しいと思っていたけれど彼女には新しい男がいてそれは無理だったという失恋ブルーズです。

1.Little Queen Bee/Slim Harpo

スリム・ハーポにはローリング・ストーンズもカバーし、今やスタンダードになっている”King Bee”という大ヒットがありそれのアンサーソングを自分で作った感があります。
以前エクセロ・レコードの特集をやったときにシカゴ・ブルーズの大ヒット・メーカーだったジミー・リードが南部ルイジアナのブルーズマンたちにも及ぼしていた大きな影響の話をしましたが、今から聞いてもらうこのアルバムに入っているジミー・アンダーソンはジミー・リードと間違えるくらいめちゃ似てます。笑うくらい似てます。ちょっとブルーズ知っている人に「ジミー・リードの未発表曲が出た」と言うて聞かせたらまず信じると思います。

2.Goin’ Crazy Over T.V. /Jimmy Anderson

歌もハーモニカもギターもサウンドもリズムも曲も全てジミー・リード調です。ルイジアナのレイドバックしたフィーリングにシカゴのダウンホーム・ブルーズマン、ジミー・リードのレイドバック感が合うんでしょうね。なんか無理して真似してる感じがないところがいいです。絶対本人は「オレ、ジミー・リード命やねん」と言うてたと思います。
今日紹介しているこのThe Real R&Bというアルバムには歴史的な一曲が入ってます。それがアーサー・ガンターの”Baby Let’s Play House”という曲で1954年にエクセロ・レコードからリリースされました。これがなんとR&Bチャートの12位まで上がる健闘ぶりを見せました。するとこの曲を翌55年にかのエルヴィス・プレスリーがカバー・リリースしました。こっちはR&Bチャートではなく白人のカントリー・チャートで5位まで上がりました。黒人の曲を白人がカバーしてヒットさせるというのはたくさんありましたが、アーサー・ガンターがR&Bチャート、プレスリーがカントリー・チャートというのも50年代半ば当時の人種で分かれるチャートの感じがよく分かります。多分白人のリスナーはこれはカントリー・ウエスタンの曲やと思って聴いていたと思います。いやいやカントリー&ウエスタンやなくてね、素晴らしくダンサブルなロッキン・ブルーズですよ。

3.Baby Let’s Play House/Arthur Gunter

次は一曲目に聞いたスリム・ハーポをもう一曲聞こうと思うのですが、タイトルが”Still Rainin’ In My Heart”です。このタイトル聞いただけでスリム・ハーポを知っている人ならニヤッと笑うと思います。じつはそのStillのない”Rainin’ In My Heart”という曲がハーポの代表曲で同名のアルバムまで作られたくらいでなんです。だから「その続編みたいな感じで作ったらまた売れるんとちゃうか」と盛り上がって作ったんやと思います・・知らんけど。メロディは全く同じです。
「俺の心の中にはまだ雨が降ってる。そして俺らはまだ離れ離れや。今になって俺が間違ってたとわかるけど、でもベイビーお前が必要なんや、帰ってきてくれよ」「俺は賢くはなかったとわかってる。そやから俺の心にはまだ雨が降ってんねん」とヨリを戻したいという未練タラタラの歌ですが、まああかん、彼女は戻らんでしょうね。

4.Still Rainin’ In My Heart/Slim Harpo

最初の”Rainin’ In My Heart”が61年にヒットして半年後にはこの続編が録音されたということはやはり柳の下にドジョウが二匹を狙ったと思いますが、ちっょとそれはあんまりやなという意見があったのかリリースされたのは3年後の64年になってます。あまりヒットしませんでした。やっばりな。
このアルバムを録音したエクセロ・レコードのスタジオ・ミュージシャンがいつも素晴らしいと思うのですが、メインのシンガーにダウンホームなレイドバックした歌手が多いので全体がレイドバックしてるように思うのですが、ビートはすごくタイトにグルーヴしていて決してゆるくはないんですよ。次の曲のリズム・ギターのビートの裏打ちなんか素晴らしいです。

5.I Had A Dream Last Night/Lonesome Sundown

このロンサム・サンダウンという芸名もなんかルイジアナらしいといえばそうですが、直訳すると「さみしい日没」ですよ。芸名につけますかね。この芸名は南部の有名プロデューサーにつけられたんですが、「今日から君、ロンサム・サンダウンいう名前でいくから」と言われた時どんな気持ちやったんですかね。サンライズやなくてサンダウンやからね・・・・
何かとツッコミどころの多いアルバムですが、このエクセロのブルーズはどこかポップなテイストがあって重くなくてカラッとしてるところが特徴です。
「The Real R&B」というアルバム・タイトルとコンピレーション曲目の興味だけで買ったら充実したいいアルバムだった今日の「ホトケのレコード中古盤放浪記 その8」でした。