2026.03.20 ON AIR

70年代のブルーズ3大キングの行方

グラミー賞を獲得した70年代のB.B.King Vol.1

ON AIR LIST
1.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins
2.The Thrill Is Gone/B.B.King
3.So Excited/B.B.King
4.Key To My Kingdom/B.B.King
5.You’re Losin’ Me/B.B.King

70年代の三大キングの話、今日はB.B.キングです。
B.B.キングは1957年のデビューアルバム”Singing The Blues”からほぼ毎年のようにアルバムをリリースしていました。ヒット曲も他の二人よりダントツに多くてまさにブルーズ界のキングはB.B.キングでした。しかし、それは同胞の黒人たちに対してであり、白人のファンを取り込むことには他の二人より遅れを取っていました。前も聞いてもらいましたが、フレディ・キングは1960年に”Hide Away”がR&Bチャート5位、ポップチャートでも29位に入り、またその曲をエリック・クラプトンがカバーしたことから広く名前が知られることになりました。アルバート・キングもエリック・クラプトン在籍の「クリーム」に”Born Under A Bad Sign”がカバーされたり、68年にはロックの殿堂「フィルモア」でライヴ録音した”Live Wire/Blues Power”をリリースしてその熱いライヴ・パフォーマンスが高く評価されロック・ファンにも知られることになりました。そんな中、B.B.キングは白人層での認知度が上がらず内心焦っていたようです。
そんな中、1969年にリリースしたアルバム”Completely Well”に収録された”The Thrill Is Gone”がヒットします。
この曲のオリジナルは1951年にロイ・ホーキンズというブルーズマンが歌ったマイナー調のミディアム・スローテンポの曲でR&Bチャートの6位まで上がったそうですが、ぼくはそんなにいい曲とも思えないです。B.B.は好きだったらしくいつか録音したいと思っていたということです。それをビル・シムジクというイーグルスを手がけたどちらかというとロックのプロデューサーが大幅にアレンジしました。
それがグラミー賞(最優秀R&Bボーカル・パフォーマンス賞)を獲得します。これはブルーズマンとしては初めてのグラミーで当時ブルーズ界ではかなりの驚きがありました。
リスナーの皆さんは原曲を聴く機会もほとんどないと思うのでロイ・ホーキンスの1951年のオリジナルをちょっと聴いてみましょうか。

1.The Thrill Is Gone/Roy Hawkins

古い歌謡曲みたいでしょ?戦前のね。僕はあまり好きやないんてせすよ。これをプロデューサーのビル・シムジクがアレンジしてストリングスも入れ、B.B.の素晴らしい歌唱力でグラミー賞を獲得しました。

2.The Thrill Is Gone/B.B.King

エレキ・ピアノにストリングスとゴージャスなアレンジですが、一部のブルース・ファンからは「こんなストリングスなんか入っててブルーズちゃう」という批判も多くありました。まあストリングス入れたらブルーズちゃういのも変ですよね。サックスいいけどよくて同じ楽器のひとつであるストリングスはダメというのもなぁ・・。
激しいショー・ビジネスの世界を生きてきたB.B.は初めての全米ヒットにめちゃくちゃ嬉しかったようです。しかもグラミーまで受賞したのですから。そしてこの大ヒットがなければB.B.は日本に来ることもなかったかもしれないし、私もB.B.の前座をやることもなかったです。とにかくこの曲がB.B.を「世界のB.B.キング」にした曲です。
この”Completely Well”というアルバムは当時のニューヨークの腕利きのスタジオ・ミュージシャンたちがバックを務めてます。ベースにジェリー・ジェモット、ドラムにハービー・ラヴェル、ギターのヒュー・マクラッケンなど。ソウル・ファンクのテイストが濃い音作りですが意外とB.B.はグルーヴにハマってやってます。「君のことを考えるとワクワクする。いつも素敵な君を抱きしめていたい」

3.So Excited/B.B.King

アルバムの一曲目に入っていてオープニングにふさわしいワクワクする曲ですね。リズム・セクションの作るファンク・グルーヴが素晴らしい。B.Bはこの曲を当時ライヴでもよく歌ってましたが、B.B.はファンクのことを「ブルーズがスピリットを失わずにいかにして現代に適応していくか、その見本とも言えるのがファンクだ」と言ってます。つまりブルーズとファンクは太く繋がっているものなんです。
この1970年頃はT.ボーン・ウォーカーもフレディ・キングも先週ON AIRしたアルバート・キングもみんな8ビート、16ビートのファンク・ブルーズに挑戦していた時代でした。
僕はこのアルバムに”Key To My Kingdom”というすごく好きな曲ありまして、日本語に訳すと「私の王国の鍵」です。「お金やゴールドや名声を私は求めていない。私の王国への鍵は君の瞳の輝き。君の愛は僕の王冠」B.B.の素晴らしい歌声が聴ける熱烈なラブソングです。

4.Key To My Kingdom/B.B.King

このアルバムは一曲一曲しっかりアレンジされていて、たぶんベースのジェリー・ジェモットやギターのヒュー・マクラッケンもヘッド・アレンジでアイデアを出していると思いますが、当時の黒人ミュージシャンにとってはB.B.キングのレコーディングに参加できるのは名誉なことだったらしいです。

5.You’re Losin’ Me/B.B.King

今日聴いてもらったB.B.キングの”Completely Well”がリリースされた1969年という年はブルーズやロックやラテンやファンク、ジャズなどいろんな音楽が互いに影響し、融合し合う時代でクロスオーバー・ミュージックと呼ばれました。それはのちにフュージョンと呼ばれる音楽に変わっていくのですが、そういう時代の流れにB.B.キングは対応できたということだと思います。B.B.にとって新たなところへ出ていくきっかけになった重要なアルバムでした。