2016.09.30 ON AIR

サザンソウル、ノーザン・ソウル、ディープ・ソウル・・
そしてファンク60年代ブラック・ミュージックの先端 その1 

01

Otis Redding/Respect(RHINO R2 71430)

02

Marvin Gaye/Anthology (MOTOWN/BMGビクター B18D-61025~26)

03

Barbara George Golden Classics/I Know (Collectables COL-5141)

04

Smokey Robinson & The Miracles(Motown 5316ML)

05

Garnet Mimms & The Enchanters/Cry Baby(United Artists LAX 304)

ON AIR LIST
1.These Arms Of Mine/Otis Redding
2.Hitch Hike/Marvin Gaye
3.I Know (You Don’t Love Me No More)/Barbara George
4.You’ve Really Got A Hold On Me/Smokey Robinson & The Miracles
5.Cry Baby/Garnet Mimms & The Enchanters

この春にサザン・ソウル・シンガーのドン・ブライアントが来日してすごくいいライヴだったらしいのですが、僕は都合がつかず聴きに行けませんでした。それでいま言った「サザン・ソウル」という言い方を僕も無意識によくするのですが、この前若い人にサザン・ソウルってなんですか?と訊かれました。サザンソウルというのはその名前のとおり南の「南部のソウル」ということで主に60年代にブルーズやゴスペル、R&Bから作られた土着的な南部のイナタさを持ったソウルのことだと僕は思ってます、このサザン・ソウルに対抗する言葉がノーザン・ソウル、それはデトロイトのモータウンレコードに代表される北部の洗練された都会的なソウルです。もうひとつゴスペル色の強いソウルをディープ・ソウルという言い方をすることもあります。これはニューヨークのアトランティックレコードなどからリリースされたもので録音は南部のアラパマのマッスルショールズなどで行われたものが多いです。

60年代になってサム・クックやレイ・チャールズ、ジェイムズ・ブラウンが登場してきてソウルという言葉が生まれたのですが、さっき言ったサザンソウルでまず僕の頭に浮かぶのはこの人、オーティス・レディング
「君を抱く事ができないこの両腕が寂しい」と歌った1962年R&Bチャートの20位に入った”These Arms Of Mine”
These Arms Of Mine
ジョニー・ジェンキンスと言う歌手の運転手でスタジオに付いていったオーティスは、ジェンキンスの録音が早く終わったので「歌わせて欲しい」と言って自分で作ったこの曲を歌った。それが発売されることになりヒット。あの時オーティスが「歌わせて欲しい」と言わなければ、彼がのちにソウルの王様と呼ばれることもなかっただろうし、スタックスレコードがサザンソウルの中心になることもなかった。
さて、同じ1962年北部のソウル、ノーザン・ソウルの拠点モータウン・レコードからリリースされたものを聴いてみましょう。
ローリング・ストーンズにもカバーされたマービン・ゲイが歌ったこの曲
Hitch Hike
この頃はまだそんなに洗練されていないモータウン・サウンドでR&B的なテイストが強いです。まだ荒削りな感じの音作りで生々しくてこのモータウン初期の曲僕は好きですけどね。「彼女を探しにお金がないからヒッチハイクでいかあかんねん」ストーンズが3年後の65年カバーしたんですが、やっぱりこの曲にあるブルーズ、R&Bテイストをストーンズは感じたんでしょね。

そて、その同じ62年の曲をもうひとつ。今度は南部でもニューオリンズ。ポップ・チャートの3位まで上がる大ヒットした曲です。ポップなんですが、どこか洗練されてないところがいいです。
この曲を歌ったバーバラ・ジョージはこの曲以外にヒットはなくていわゆる「一発屋」なんですが、この曲は不滅の名作です。ピアノが作り出すサウンドに乗ってバーバラの元気な歌声、途中のコルネットのソロというかメロディがまたなんともニューオリンズらしくていいです。元気に「あなたはもう私のことを愛してないのね」と歌う彼女の健気な感じがええやないですか。
I Know (You Don’t Love Me No More)

まったく同じ年1962年にメンフィス、デトロイト、ニューオリンズとそれぞれ違う街で作られたヒットしたソウルの先駆けの曲を聴いてみましたが、やはりアメリカは広いのでそれぞれの地域でそれぞれ違うサウンドやグルーヴの曲が作られてます。まだソウルと呼ぶにはR&Bのテイストの方が強い時代ですが、次の63年リリースされたモータウンレコードからリリースされた大ヒット曲がですが、かなりソウルという感じに近くなっていきます。僕も大学のアマチュア時代歌ってましたが、この曲めちゃ難しいです。とくにコーラスが。スモーキー・ロビンソン&ミラクルズの名曲です。
You’ve Really Got A Hold On Me

I Don’t Like You But I Love You「君ことを好きなんやなくて愛してるんや」という最初の一節とそのメロディがいいですね。あんまり好きすぎてつらいから君と別れたいけどそれができない・・いいですね。外人の彼女が出来た時に使ってください。I Don’t Like You But I Love You
後のモータウンレコードに比べるとまだ洗練されてないですが、リードのスモーキー・ロビンソンの歌声とかコーラスアレンジがひと足先都会的な匂いがします。このミラクルズがモータウン初期にかなり貢献したグループです。

次はジャニス・ジョップリンのカバーで知っている人も多いと思います。オリジナルはいまから聴いてもらう1963年リリースのガーネット・ミムズ&エンチャンターズ
聴いてもらうわかるんですが、ノーザンソウルというより南部のサザンソウルの匂いがするんですが、実は歌っているガーネット・ミムズは北部ペンシルバニア州フィラデルフィアの出身で、ペンシルバニア州はアメリカの北東部でニューヨークの方です。それでこの曲はニューヨーク録音なんですが、この頃からニューヨークで録音されるゴスペル・テイストのサザンソウル系のソウルで「ディープソウル」と呼ばれるものが出てきます。バックの明らかにゴスペルタッチのコーラスと熱唱するガーネット・ミムズ。途中の語りもゴスペルテイストにあふれて本当にソウルの名曲中の名曲です。ガーネット・ミムズ&エンチャンターズ最高です。
Cry Baby
来週はいま聴いてもらったディープ・ソウル系の主役、ソロモン・バークや全盛期に突入するノーザンソウルのモータウンそしてサザンのスタックスとニューヨークのアトランティックなど豊かな60年代のソウルの熟成を聴きます。アメリカ60年代の同じ年に南部、北部、いろんな街でどんなソウルが録音されていたのか聴き比べてみたいと思います。
サザン・ソウル・ファンもモータウン派の人も是非聴いてください。もちろんブルーズ系のヒットもON AIRします!