2016.12.16 ON AIR

現在のテキサスのリアル・ブルーズ・アルバム”EASTSIDE KINGS”

EASTSIDE KINGS (P-Vine Records PCD-25208)

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ON AIR LIST
1.Goodlie Ooglie/ Peewee Calvin
2.Whisper In Your Ear/ Ray Reed
3.Cry To Me/ Soul Man Sam
4.Kidney Stew/Mac Mcintosh
5.Broke And Hungry/Birdlegg

 

 

 

 

この番組でON AIRしている曲は昔のブルーズ、R&Bが多い。それはそういう音楽の全盛が30年代から70年代あたりだからいいものを聴いてもらおうと選曲するとそうなってしまう。そして、もうひとつの理由は最近のものにいいと思えるものが少ないからだ。もちろん新しいブルーズ、R&B系の音楽にアンテナは張っているが、なんせ「いいなぁ」と思えるものが少ない。そんな中、「おおっ!」と久しぶりにツボに入ってきたのが今回聴いてもらう”EASTSIDE KINGS”だ。

テキサスのオースティン界隈で長年ブルーズやR&Bを歌っている歌手たちを集めて、ショーケース的に次々歌ってもらう形式をとったこのコンピレーション・アルバムは今年の9月にリリースされている。録音の核となってバックを務めているのは、このアルバムのレーベル「ダイアル・トーン」のボスでありベースのエディ・スタウト、キーボードがピーウィー・カルヴィン(彼の歌も収録されている)そしてギターがスティーヴ・フルトン、ドラムがリコ・レフォンテとチャールズ・ショウ。
テキサスのブルーズ・クラブで長年鍛えられて来た強靭なサウンドとグルーヴをバックに歌う歌手たちがまた百戦錬磨の個性派揃い。まずはキーボードを弾いているピーウィー・カルヴィンが歌うGoodlie Ooglie/ Peewee Calvin
カルヴィンの歌声は60~70年代メンフィスのルーファス・トーマスを想い出します。ファンキーで泥臭くていいです。ギターソロもテンション高くて気持ちいいけど、弾きすぎない感じがまたいい。

次のレイ・リードはダイヤルトーン・レーベルから2007年に”Lookin’ For The Blues”というアルバムをリリースしている。1940年生まれですから、いま76才。60年代中頃にテキサスのフォートワースという街で演奏をしていたけど、子供が11人もできてしまってその子供たちを育てるために音楽を断念して自動車工になっていたといういかにもブルーズな経歴。80年代の終わりにカムバックしてデビューアルバム”Lookin’ For The Blues”を出したのが67才!すごい!世のおっさんたちまだまだ遅くないですよ。Whisper In Your Ear/Ray Reed

次のソロモン・バークの名曲をカバーしているソウルマン・サムは、昔メンフィスのスタックスレコードで録音したこともあったけどデビューまで届かなかった。
歌うことがすごく好きなんだと感じられる実直な歌い方が本当にいい。ちょっとボビー・ブランドを想い出させる歌声で僕は好きだ。Cry To Me/Soul Man Sam

ファンキー・ブルーズやいまのようなR&Bの中にあってジャンプ系のKidney Stewを歌うのが、マック・マッキントッシュという名前のおっさん。「ふざけてんのか、その芸名」と突っ込みたくなるところですが・・・。この選曲も聴いてみると無理なくスムーズにアルバムに馴染んでいるのは、やはりバックが百戦錬磨の腕達者たちだからか。Kidney Stew/Mac Mcintosh

最後はリアル・ブルーズ
「「オレは一文無しで腹へっているのに オークランドって街はひどいところだ。いい時はみんないい顔するけど落ちぶれたら知らん顔さ。家族も助けようともしてくれない。自分のことは自分でやりなって言う。今夜寝るとこもなくてオレは一晩中通りをあるいているんだ」Broke And Hungry/Birdlegg

今回聴いたアルバム”EASTSIDE KINGS”は今年10月にP-Vine Recordsから日本盤でリリースされました。解説歌詞カードもついてます。
こういう生き生きしたブルーズの新譜をもっと聴きたいし、来日もして欲しいですね。