2017.03.03 ON AIR

ローリング・ストーンズの新譜「ブルー&ロンサム」とその原曲を聴く Vol.3

img01

BLUE & LONESOME/The Rolling Stones(LP 571494-4)

img02

Rooster Blues&Lightnin’ Slim’s Bell Ringer/Lightnin’ Slim(Excello CDCHD 517)

img03

Sings Gospel Blues/Little Johnny Taylor(Jewel P-Vine PJ-103)

img04

South Side Blues/Elmore James&Eddie Taylor&Jimmy Reed(COBBLESTONE 9001)

ON AIR LIST
1.Hoo Doo Blues/The Rolling Stones
2.Hoo Doo Blues/Lightnin’ Slim
3.Everybody Knows About My Good Thing/The Rolling Stones
4.Everybody Knows About My Good Thing/Little Johnny Taylor
5.Ride em On Down/The Rolling Stones
6.Ride em On Down/Eddie Taylor

今回選ばれた曲のブルーズマンの中で一般的にいちばん名前が知られていないのが、リトル・ジョニー・テイラーといまから聴くライトニン・スリムだと思います。ライトニン・スリムは50年代ナッシュビルのエクセロというレコード会社でデビューしたのですが、このエクセロにはストーンズが昔カバーしたKing BeeやShake Your Hipsなどのオリジナルのブルーズマン、スリム・ハーポが在籍してました。だから同じエクセロ・レーベルのこのライトニン・スリムも当然知っていたと思います。スリム・ハーポより更にダウン・ホームなフィーリングのライトニン・スリムは僕も大好きです。
「もしお前の女が陽気になったり、外で遊び始めたら誰か他の女を探したほうがいい。その女はお前を落ち込ませるに違いない。そうなったらもう女の好きにさせた方がええよ。そのやっかいな浮気女は浮気な男のとこに行くんやから」
まあ、女が他に男作ったら早く別れた方がいいよという歌。女性は気持ちが変ったら元には戻りまへん。
1.Hoo Doo Blues/The Rolling Stones
こういうダウンホームな感じを自分たち風にやるのがストーンズは上手い。
では次は原曲。1957年の録音です。
2.Hoo Doo Blues/Lightnin’ Slim
原曲は歌とビートがゆったりとしたダウンホームな南部のブルーズ。

次の曲は僕としてはストーンズがカバーするするには向いてなかった感じがします。とくに歌が・・。元々の原曲を聞いてなかったらそう思わなかったかも知れませんが、もうこの原曲が好きで昔から聞いているので・・・。原曲のリトル・ジョニー・テイラーという人は一般的にそんなに知られてませんが、ゴスペル出身のモダン・ブルーズ系のすごく歌の上手いシンガーです。しかも歌だけでなく、アレンジしっかりされててあまりにも原曲が出来すぎているのでどうかなという感じです。
My Good Thingsは自分の女房のことで自分が家にいない間にやってくる郵便局員とか牛乳屋とかが自分の女房と出来てるんとちゃうかという疑心暗鬼な歌です。直訳すると「オレのええもんをみんなが知ってる」まずはストーンズを聞いてみましょう。
気合いの入ったスライド・ギターはゲストのクラプトンです。
3.Everybody Knows About My Good Thing/The Rolling Stones(3分40くらいでFO)
ミック、ちょっと気合いは入り過ぎですよね。こういうモダン・ブルーズよりもハウリン・ウルフ、リトル・ウォルターのようなシカゴブルーズとか、ライトニン・スリムのような南部のいなたいブルーズの方がミックの歌に向いてると思います。
では、リトル・ジョニー・テイラーの原曲は1971年録音
4.Everybody Knows About My Good Thing/Little Johnny Taylor

次はシカゴ・ブルーズ黄金時代のギターの名手エディ・テイラーのカバーです。この曲なんかは今回のストーンズのアルバムでいちばん良かったように思います。
5.Ride em On Down/The Rolling Stones
エディ・テイラーはシカゴ・ブルーズのヒット・メイカー、ジミー・リードの右腕でシカゴ・ブルーズのグルーヴを作ったひとりです。スタジオやバック・ギタリストとしての役割が多くてソロ・アルバムはあまりないのですが、シカゴブルーズでは絶対に外せないブルーズマンです。
6.Ride em On Down/Eddie Talor

最後に鹿児島のブルーズ・バー”Mojo”のマスターのこうたろうくんが、ストーンズのアルバムを聞いた印象をTwitterでこうツイートしてました「ストーンズも素晴らしかった。しかし、オリジナルは堪らない」と。僕もほぼその意見です。
ストーンズの気持ちとか心意気もすごくよく分かるし、自分たち流にそれぞれの曲をしっかりカバーしていてやっぱりいいバンドだなぁと思います。
でも、その片方でオリジナルのもつグルーヴとかサウンドの素晴らしさ、そしてオリジナルの歌の重さと深さをすごく感じました。自分もカバーをやっている身として、すごく学習する機会になったし、改めてカバーの難しさを感じました。
そして、このストーンズの新しいアルバムからオリジナルの黒人ブルーズに耳を傾ける人が増えることをなによりも願っています。
「ブルーズ&ソウル・レコード」というブルーズの雑誌にはストーンズが今回カバーした曲のオリジナルが全部付録CDに入ってます。解説もついているので、是非ブルーズ&ソウル・レコード」を買って聞き比べてください。