2025.04.11 ON AIR

ホトケのレコード中古盤放浪記 
その二

CDよりもレコードが欲しい!!!

ESQUERITA! / Esquerita

ON AIR LIST
1.Hey Miss Lucy/Esquerita
2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita
3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita
4.I’m Battle Over Hattie_Esquerita
5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita

このレコード中古盤放浪記は中古レコードを買うのが趣味な私の個人的な思いを話しながら音楽を聴いてもらうという趣向です。

CDで持っているアルバムなのにやっぱりレコードで欲しいというのがレコード・マニアの悲しいところで、今日聴くこのエスケリータもCDで持っているのに中古レコードでジャケットを見た途端に欲しいと思った1枚。正直に言うとそれほど好きという感じでもなかったのですがリトル・リチャードに与えた影響などを知り、やはりLPで欲しいと思っていたところにこのジャケットですから。あとで番組ホームページでジャケットを確認して欲しいのですが、とにかく一度見たら忘れられないインパクトのあるジャケ写です。
まず「ボンパドール」と呼ばれるリーゼントを食パンみたいに超盛り上げたヘア・スタイルに細い髭を生やしてキラキラにデコレイトされた派手なサングラスをかけて派手な衣装を来た男・・レコード・ジャケットにはエスケリータ!とだけ文字がある。見た目はR&Rのキング、リトル・リチャードに似ているので二番煎じかと思っていたら、実はリトル・リチャードにピアノを教えたのはこのエスケリータで、ピアノだけでなくファッションや高い声でホ~ッ!と叫ぶ(スクリームする)歌い方もオリジナルはエスケリータだったという。ということでリトル・リチャード・ファンとしてもこれはレコードで持っておきたいと購入。
今日聴くのはエスケリータの1958年のキャピタル・レコード・デビュー・アルバム。エスケリータ24才の時。キャピタル時代のシングルを集めたアルバム。まずは挨拶代わりのアルバムのサイドAの一曲目。

1.Hey Miss Lucy/Esquerita

ニューオリンズR&Bのテイストがたっぶりの曲で「ほゅ~っ!」という甲高いスクリームを出す芸風はやはりリトル・リチャードに似てます。というかリトル・リチャードがエスケリータに似てるのか・・・その辺はどうなのかわかりませんが、エスケリータは自分が最初だと言ってます。
ジャケット写真を見るともっとめちゃめちゃな人かと思いきや、すごくちゃんとした音楽性です。調べて見るとやはり歌は教会でゴスペルを歌って育ったようです。ピアノは全くの独学ですがめちゃ上手いです。次の曲はリズム・パターンがリトル・リチャードの”Slippin and Sliddin”と同じです。

2.Crazy,Crazy Feeling/Esquerita

リトル・リチャードがデビューした7年あと1958年にエスケリータがデビュー。ピアノを教えた先生エスケリータの方が後のデビューになったわけですが、58年というとR&Rのブームが下火になり始めた頃です。すでにリトル・リチャードがヒット曲を次々と出してすごく有名になっていたので同じような芸風なのでやはりエスケリータは二番煎じと思われたんでしょう。
しかし、デビューしたレーベルは大手のキャピタル・レコードです。でもあまりブロモーションしてもらえなかったのかも知れません。私も経験してますが大手のレコード会社だからプロモーションでプッシュしてくれるとは限りません。しかもR&Rのブームは下火に向かっていく時期ですから。彼の代表曲となるようなヒット曲が出なかったのが残念です。
次の曲もニューオリンズのR&Bの影響が強かったものでニューオリンズのファッツ・ドミノを思い出させるような曲調です。

3.Baby,You Can Depend On Me/Esquerita

ここでエスケリータの略歴。1935年11月20日サウス・カロライナ生まれ本名はエスキュー・リーダー(Eskew Reeder Jr.)です。ルーツはゴスペルで独学で覚えたピアノに魅せられて高校を退学して、ニューヨークのゴスペル・グループ、ヘヴンリー・エコーズに参加。1958年にソロとしてキャピトルからデビューしたがヒットも出ず、話題になることもなく故郷サウス・カロライナに戻りエスキュー・リーダーリーダーという名で活動、60年代にミニット、エヴァーレスト、オーケー、クロストーン、ブランズウィック、ノートンといろんなレーベルで録音するもヒットは出ず70年代にはシーンの第一線からは消えてしまっています。

4.I’m Battle Over Hattie/Esquerita

何曲か聴くとわかるのですが、リトル・リチャードと何が違うのかといえばまず楽曲、曲です。曲がリトル・リチャードはジャンプ・ブルーズやニューオリンズR&Bの影響があっても強烈なオリジナリティがあります。つまりエスケリータは曲が普通。悪くないですが普通。リチャードは「トゥッティ・フルッティ」、「のっぽのサリー」、「ルシール」、「リップ・イット・アップ」、「ジェニ・ジェニ」、「グッド・ゴリー・ミス・モリー」など印象に残るものがたくさんありました。あとは録音のバックバンドがリトル・リチャードはドラムがアール・パーマー、サックスにサックスのリー・アレン、ベースのフランク・フィールズ、ギターのジャスティン・アダムズなど優秀なスタジオ・ミュージシャンが揃っていました。それに比べるとエスケリータの方は劣る感じです。
歌はゴスペルをルーツにしたしっかりしたものですし、ピアノはリトル・リチャードに教えたくらいですから上手いです。もう少し早くデビューして何かきっかけさえあればエスケリータもR&Rのスターの仲間入りができた実力は十分あります。次の曲もエスケリータは素晴らしいのですがバック、特にドラムのビートがズレています。残念。

5.Believe Me When I Say R&R Is Here To Stay/Esquerita

70年以降も歌っていたようですがシーンの表舞台に出ることはなかったエスケリータは51才で86年に亡くなっています。インタビューとか映像とかがほとんどない人で一体どんな人柄だったかもわからない謎の多い人です。ひとつ、リトル・リチャードは初めてエスケリータに会った時のことを「エスケリータは今まで俺が会った中で一番大きな手をしていた。俺の二倍はあった」と言ってます。ほんまか?!!(笑)
今回のジャケットで買ったと言ってもいいかも知れないこのエスケリータのキャビタル盤は今も時々中古盤屋さんで見かけます。興味のある方は是非。今回のレコード中古盤放浪記 その二は謎の多きロックンローラー、エスケリータでした。

 

2025.04.04 ON AIR

ホトケの中古盤放浪記 
その一

オークランド・ブルーズのボス、ジミー・マクラクリンの「イナタシャレ」たブルーズ

The Best Of Jimmy McCracklin (MINIT LP-40009)

ON AIR LIST
1.The Walk/Jimmy McCracklin
2.Just Got To Know/Jimmy McCracklin
3.Tramp/Lowell Fulson
4.Think/Jimmy McCracklin
5.Every Night,Every Day/Jimmy McCracklin

放送開始から祝900回目です。ディレクターの玉田君が急に「今回で900回目です」と。途切れずにずっとやってこれて嬉しいです。今や私の大きなライフ・ワークです。頑張って続けてブルーズのアーカイヴスをたくさん残しておきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。

私の唯一の趣味はほぼ半世紀続いている中古盤の収集です。自分が住んでいる街にはレコード屋さんがないので大きな街に出かけた時とかツアーで巡る街でレコード屋さんに行ってます。まったく自分が欲しいものがない時もなんとなく行くこともあります。また私はいわゆるコレクターではないのでレアで高額なものには手を出しません。だから今回から紹介していくアルバムは全て中古盤でそこそこの値段のものです。
まず今日は私がアルバムを探す時の常套手段の一つであるベスト盤のゲットです。まずベスト盤が出せるミュージシャンというのは何曲かヒット曲がある人です。またそのミュージシャンのアルバムを集める時にまずベスト盤で最初にどういう感じのミュージシャンなのか、本当に自分のセンスに合うミュージシャンなのか知ることができます。ライナーノーツやクレジットさらにネットなどでそのミュージシャンの情報を自分の中に蓄積します。そして気に入ればそのミュージシャンのいろんなアルバムを買い始めます。
今日はウエストコースト・ブルーズ特にベイエリアという地域でロウエル・フルソンと並ぶ偉大なブルーズ・シンガー、ジミー・マクラクリンです。聴くアルバムは”The Best Of Jimmy McRacklin”。確か中古で1000円くらいでゲットしたブツです。
レコーディング・レーベルはMINIT リリースは1967年
レーベルのミニットはニューオリンズで50年代終わりに立ち上げられアレン・トゥーサンをプロデューサーに立ててアーニーK.ドウはじめニューオリンズR&Bをたくさんリリースしました。レーベルを見るのも大切です。
少しジャケットが痛んでますが盤がしっかりしていればそういうことは私は気にしません。
このアルバムがリリースされた67年はミニット・レコードはもう手広くいろんなミュージシャンを手がけていてジミー・マクラクリンのかってのヒット曲の再録音も含めて彼のアルバムを作ったのでしょう。
まずは1958年にCHECKERレーベルからリリースされて大ヒットした「The Walk」

1.The Walk/Jimmy McCracklin

このThe WalkはR&Bチャートで5位、ポップチャートでも7位まで上がるヒットになりました。イントロのリフがフレディ・キングの大ヒット”Hideaway”に使われていることも有名です。

ジミー・マクラクリンはフレディ・キングだけでなくB.B.キングやマジック・サムにも影響を与えた人で次の曲もマジック・サムがカバーしています。
「知りたいんや、知りたいんや、ほんまに知りたいだけなんや」と始まる印象的な歌ですが、好きな彼女が遊びまわっていて落ち着いてくれない。俺を利用しているだけやないのか・・知りたいんや。つまり彼女の本当の気持ちを知りたいという歌です。

2.Just Got To Know/Jimmy McCracklin

84年に来日したこともあったのですが、日本ではあまり人気が出なかったです。人気が出なかった理由はいつも言っていることですが、日本ではギターを弾くブルーズマンしか人気が出ないからです。困ったもんです。
しかし、マクラクリンはシンガー&ソングライターであり、ピアニストでリリースしたアルバムが30枚以上あり、その30枚から4枚がゴールド・レコードになってますからアフリカン・アメリカンの間での人気のほどがわかります。
ベイエリアと呼ばれるオークランドあたりではブルーズ、R&B界隈のボス的存在でした。ウエストコーストのブルーズ・シーンといえばテキサスから来た偉人ロウエル・フルソン。僕はそのロウエル・フルソンとジミー・マクラクリンがどこか似たテイストがあるなと思っていたのですが、実は私も歌って録音もしている有名曲があるのですが実は次のこの曲はロウエル・フルソンとジミー・マクラクリンの共作なんです。ちょっとだけ聞きましょうか。

3.Tramp/Lowell Fulson

この”Tramp”という曲はロウエル・フルソンが歌ってヒットさせた曲ですが、ジミー・マクラクリンが歌ったものがあれば聞きたかったですね。二人は仲が良かったそうです。
1965年のヒット。

4.Think/Jimmy McCracklin

無骨な歌の感じとその中にあるブルーなテイスト・・そのあたりがロウエル・フルソンにも似ています。ほとんどの歌を自分で作って、しかも何曲もヒットを持っているソング・ライターとしての才能も素晴らしいです。ブルーズとR&Bの間くらいにいるのでブルーズン・ソウル・シンガーと呼んでもいいのですが、ボビー・ブランドやジョニー・テイラーあたりとはまた違う味があり、それがオークランド・ブルーズの味ではないかと思います。
マクラクリンの作るブルーズの曲の特徴の一つに今のようにコーラスが入っている曲が多いことです。コーラスが入っていることでポップな感じがしてR&B的なファンキーなテイストになっています。

5.Every Night,Every Day/Jimmy McCracklin

このEvery Night,Every Dayもマジック・サムがカバーしていたと思います。
ジミー・マクラクリンは2012 年12 月20 日に91 歳で亡くなりました。ブルーズマンとしては大大往生だったと思います。今日聴いてもらったようにダウンホームで無骨な歌ですが、どこかファンキーでポップさもある「イナタシャレ」のブルーズを残したジミー・マクラクリン。意外と中古盤屋で見かけることも多いのでぜひゲットして聴いてみてください。次回も中古盤放浪記でリトル・リチャードに大きな影響を与えた謎多きロックンローラー、エスケリータです。

 

2025.03.28 ON AIR

ブルーズ・ピアノの魅力あふれるオーティス・スパンの名盤がリリース

OTIS SPANN/Walking The Blues(BSMF 7029)

ON AIR LIST
1.It Must Have Been The Devil /Otis Spann
2.Otis’ Blues /Otis Spann
3.Going Down Slow(vol.St.Louis Jimmy)/Otis Spann
4.Half Ain’t Been Told/Otis Spann
5.This Is The Blues/Otis Spann

50年代から60年代にかけてシカゴ・ブルーズのシーンの中でとても重要なピアニストのオーティス・スパンのアルバム”Walkin’ The Blues”が日本のBSMFレコードから去年の12月に再発されました。このアルバムは61年にリリースされた名盤と呼ばれている”Otis Spann Is The Blues”と同じセッションで録音されたものでクオリティは”Otis Spann Is The Blues”と変わらない高いものです。
”Walkin’ The Blues”はオーティス・スパンが亡くなった直後、1972年にリリースされたものでギターに名人ロバートJr.ロックウッド。ヴォーカルにセントルイス・ジミーが4曲参加しています。

最初の曲「あの娘が心変わりしてしまったのは悪魔のせいだったに違いない」悪魔は他の男のことでしょう。多分。いや絶対。

1.It Must Have Been The Devil /Otis Spann

オーティス・スパンは50年代にシカゴ・ブルーズが全盛を迎えた時期のボスのマディ・ウォーターズの右腕やった人です。マディのアルバムにたくさん参加していますし、YouTubeで映像も残っているので観てください。
次の曲はオーティス・スパンがブルーズ・ピアニストとしていかに素晴らしいかよくわかるインストルメンタル曲です。左手で弾くウォーキン・ブルーズのリズムの安定感やグルーヴ感と右手で弾かれる多彩な力強いソロ。あの大きなグランドピアノが揺れている感じがわかります。
スパンは1946年にミシシッピからシカゴに出てきて尊敬するピアニスト、ビッグ・メイシオの教えを受けています。そのメイシオのピアノスタイルがルーツに聞こえます。

2.Otis’ Blues /Otis Spann

次のGoing Down SlowはこのアルバムにVocalで4曲参加しているセントルイス・ジミーことジミー・オーデンが1942年に作った曲
「楽しいこともたくさんあったけど、病で体が少しずつ悪くなりたぶんオレはもうだめだ。お袋に俺の罪を許してくれと伝えて欲しいという歌」
親不孝して生きてきた男が死が近づいていることを悟った歌です。ハウリン・ウルフやボビー・ブランドはじめカバー・バージョンも多くありブルーズの名曲の一つです。
このアルバムに参加しているギターの名手、ロバート・ロックウッド・ジュニアの抜群のバッキング・ギターも素晴らしいです。

3.Going Down Slow(vol.St.Louis Jimmy)/Otis Spann

セントルイス・ジミーのダウンホームな衒いのない歌が人生の終わりを迎えている男のブルーズを本当によく表現しています。
ところでオーティス・スパンが亡くなったのは1970年だったのですが、彼の生年月日が二つありまして1924年というのと1930年です。まあ昔のブルーズマンは生年月日がわからない人も多いのですが、このスパンの場合は1924年と30年って6年も違うし、生まれた場所も同じミシシッピなんですがベルゾーナとジャクソンと違っています。だから亡くなった年齢も40歳と46歳になってしまうわけです。
これはおそらくそういう届け出みたいなのが大雑把というか無頓着だったのと役所で管理する白人の黒人への対応がいい加減だったというのもあると思います。でも、6年ってなんやねんと思います。

4.Half Ain’t Been Told/Otis Spann

スパンは50年代中頃からシカゴ・ブルーズのボス、マディ・ウォーターズのバンドのピアニストとして、マディの右腕としてバンドのサウンドを支えました。ギターがブルーズの花形楽器になっていく60年代にピアノがいかにブルーズ表現にとって大切な楽器であるかを示した人でした。その転がるようなRolling Pianoはいつも力強くグルーヴしR&Rのチャック・ベリーの録音にも参加して印象に残るプレイをしています。そしてマディの代表曲”Got My Mojo Workin’”のイントロだけでグルーヴするピアノも忘れられません。ではもう一曲オーティス・スパンの見事なピアノ・プレイを聴いてください。スパンのブギ・ウギ・ピアノです。

5.This Is The Blues/Otis Spann

今はもうスパンのようにこういうブルーズ・ピアノを弾いて濃厚なブルーズ・ヴォーカルを聴かせてくれるブルーズマンもいなくなりました。
60年代にシカゴ・ブルーズ・ピアノの華を最後まで咲かせたブルーズマンでした。
今回BSMFレコードからリリースされたこの”Walkin’ The Blues”はブルーズの名盤と名高い”Otis Spann Is The Blues”と同じように素晴らしいアルバムです。
ギターのロックウッドとのピアノとギターの見事な絡みも聞けます。お勧めです。

2025.03.21 ON AIR

エルモア・ジェイムズのマストな曲が収録されたアルバムがCDリリース 

Elmore James/ヒッツ&レアリティーズ(2CD / BSMF-7745)

ON AIR LIST
1.Dust My Broom/Elmore James
2.The Sky Is Crying/Elmore James
3.Bobby’s Rock/Elmore James
4.Rollin’ & Tumblin’/Elmore James
5.Baby Please Set A Date/Elmore James

2/26にBSMFレコードからエルモア・ジェイムズがニューヨークの「ファィア&エンジョイ」レコードに録音した音源がCD二枚組でリリースされました。59年から63年のエルモアの晩年となる四年間に録音されたブルーズ名曲が収録されていますのでアルバムとして欲しい方は是非この機会にゲットしてください。最近はこういうリイシュー・アルバムもCDであまりリリースされなくなっているのでCDとして欲しい方はぜひ。間違いなくクオリティの高い演奏が聴けます。晩年と言っても亡くなったのが45才という若さですからブルーズマンとしては脂ののった時期です。ずっと心臓が悪かったらしくて死因も心臓発作と言われています。
エルモア・ジェイムズというと看板曲となっているのが1952年に先輩のロバート・ジョンソンの”Dust My Broom”をカバーしたもの。チャート9位まで上がりました。何度かタイトルを変えたりもして録音しているのですが今回のアルバムにも入っています。まずそのブルーム調とも言われるスライドギターによる三連符で始まる”Dust My Broom”を。

1.Dust My Broom/Elmore James

もう今の曲はぼくにとってはいつも通ってる定食屋の鯖塩定食見たいなもんで安定の旨さです。安心するというかいいですよね。

次はこれもエルモア・ジェイムズを代表する曲”The Sky Is Crying”
空が泣いていると歌い始める次の歌。涙がストリートを流れていく。雨と涙を彼女を失った悲しみの例えに使ってもうお前はオレを愛してないんだ。そして涙が私のドアまで流れてきていると最後に歌われる素晴らしい歌詞です。たくさんカバーがあるのですが、アルバート・キングやスティービー・レイボーンのようにスライドギターを弾かないでこの曲をカバーしてる人もいます。
1960年エルモア・ジェイムズがブルーズの歴史に残した名曲。

2.The Sky Is Crying/Elmore James

ブルーズの名曲と呼ぶのに本当にふさわしい曲で歌詞、曲、歌、ギター、バックの演奏どれも素晴らしいです。ほとんどの人がこの曲にギターソロがあるよう思っているのですがギター・ソロはないんです。イントロの4小節と歌と呼応するオブリガードのギターだけなんですが、ギターソロがあるように感じる彼のスライド・ギターの魅力が伝わってきます。そしてそのギターの音色の素晴らしさ。
エルモアというと最初に聞いてもらったスライドギターで三連符のダスト・マイ・ブルーム・スタイルの曲が有名でその手の曲もたくさん作っていたのですが、それ以外の曲にもいい曲がたくさんあります。次のインストルメンタルの曲は“Elmore’s Contribution To Jazz”と並んでファンキーなインスト曲で私のお気に入りです。

3.Bobby’s Rock/Elmore James

エルモアは南部ミシシッピーの出身なのでその音楽のルーツはミシシッピ・デルタ・ブルーズ。ロバート・ジョンソンやチャーリー・パットンといったミシシッピの先達の影響を受けてますが、その素晴らしい歌に関してはゴスペルのテイストがあります。次の曲なんかは曲調はワンコードのプリミティヴなミシシッピ・ブルーズ・スタイルですがエルモアの歌にゴスペル・テイストがあるという熱い曲です。

4.Rollin’ & Tumblin’/Elmore James

最初に聞いてもらったエルモアの代表曲”Dust My Broom”のイントロのギターを「ダスト・マイ・ブルーム」という曲名から「ブルーム調」とか「プルーム・スタイル」と呼びます。スライド・ギターでチャチャチャ・チャチャチャ・・・・と三連符を繰り返し弾くスタイルのことですが、これがヒットしたのでエルモアは同じようなイントロを使った曲をたくさん作りました。しかもキーはほとんどオープンDです。なので初めてエルモアのアルバムを聴いた人は「なんや、これ全部おんなじ曲やん」と言う人もいますが、違います。しばらく聴いていると曲によってそのイントロの違いがわかってきます。実際、私も初めてエルモアのアルバムを聴いたときは「詐欺みたいなレコードやな、スロー以外はほとんどおんなじやん」と言ってました。しかし、いま聴くとこのイントロを弾いたエルモア・ジェイムズは偉大だと思います。もう一曲ブルーム調の曲を最後に。

5.Baby Please Set A Date/Elmore James

そういえばビートルズの”For You Blue”という曲でジョージ・ハリソンが「エルモア・ジェイムズはこの曲を知らんやろけど」みたいなことを言ってるのが録音に入ってましたが、ビートルズも知っていたエルモアですよ。やはりこのブルーム調というのは世界的な不滅のフレーズ。弾いてみるとわかるんですが、なんとも言えないギターのオープンチューニングの開放感がありやみつきになります。
59年から63年のエルモアの録音を集めたElmore James/ヒッツ&レアリティーズが2/26にBSMFレコードからリリースされましたのでその中から5曲聴いてもらいました。持っていない方はゲット!

 

2025.03.14 ON AIR

メイヴィス・ステイプルズ大特集vol.7

来日するメイヴィス・ステイプルズの偉大な父、ポップス・ステイプルズ

ON AIR LIST
1.Father Father/Pops Staples
2.Jesus Is Going To Make Up (My Dying Bed)
3.People Get Ready/Pops Staples
4.Waiting For My Child/Pops Staples
5.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers

来日するメイヴィス・ステイプルズの特集をずっとやってきたのですが、最後にメイヴィスの音楽を語る上で外せない彼女のお父さんローバック・ポップス・ステイプルズを聞こうと思います。メイヴィスが歌い始めたきっかけはお父さんと子供たちで作ったファミリー・ゴスペル・グループ「ステイプル・シンガーズ」だったのですが、1950年代の初めからお父さんが亡くなった2000年までグループは続きました。歌だけでなく精神的な大きな影響もお父さんから受けていてメイヴィスの口からはいつも「お父さん」という言葉が出てきます。

お父さんのローバックは1914年南部ミシシッピの生まれで当時のほとんどの黒人の子供たちと同じようにろくに学校にも通えず畑仕事を手伝わされていました。人種の差別と貧困は生まれた時からいつも彼につきまとっていました。少年の頃は当時の南部のスター・ブルーズマンだったチャーリー・パットンやサン・ハウスに憧れていましたが、同時にその頃ゴスペル・グループにも参加していました。B.B.キングなどもそうですが教会ではゴスペル・グループで歌い、お金を稼いだり女性にモテたいためにブルーズを酒場で歌うというのはよくあったことです。彼のギターがブルースっぽく感じるのはその頃に身につけたものでしょう。
ポップスは1935年21歳の時にシカゴに出てやはりゴスペル・グループに参加していましたが、1948年34歳のときに自分の息子や娘とファミリー・ゴスペル・グループ「ステイプル・シンガーズ」を結成します。最初は奥さんも参加していたそうですが録音としては残っていません。初レコーディングは1953年でポップス・ステイプルズは39歳、娘のメイヴィスは14歳でした。そこからずっとポップスが亡くなる2000年までステイプル・シンガーズは続きました。
それで今日はお父さんポップス・ステイプルズの1994年リリースの彼のソロとしては三枚目のアルバム”Farther Farther”を聞いてみます。
最初はそのタイトル曲”Farther Farther”。彼も娘たちのお父さんなのであだ名が「ポップス」(お父ちゃん)ですがこの曲名のFarther「お父さん」はイエスキリストのことでしょう。

1.Father Father/Pops Staples

このアルバムにはメイヴィスはじめ娘たちやいろんなミュージシャンが参加していますが、おそらくこの人、ライ・クーダーもポップスの影響を強く受けた一人だと思います。次の曲は古いゴスペル・ソングでライ・クーダーがプロデュースとギターを担当しています。「私が死ぬ時には神様が私の死のベッドを整えてくれるだろう。だから私が死ぬ時には悲しんで泣いて欲しくない」ずっと神様と一緒にいるから死ぬのは怖くない。だから死んでも泣かないでという歌だと思います。

2.Jesus Is Going To Make Up (My Dying Bed)/Pops Staples

ライ・クーダーの重いスライド・ギターが曲のムードを作っています。そして淡々とした静かなポップスの歌声が説得力を持って流れてきました。実にいい曲です。
次はポップスと同じように後世に残るメッセージ・ソングをたくさん作ったカーティス・メイフィールドの名曲です。

3.People Get Ready/Pops Staples

もうポップスの歌声があまりに良すぎて・・・。そんなに気張らなくてもそんなに音域がなくてもソウルフルに歌は歌えるという見本のような歌いっぷりです。マネのできないポップスならではの歌。トレモロのかかった揺らぐギターの音色も彼独特のものでそれとメイヴィスはじめ子供たちの歌声がミックスされたものがステイプル・シンガーズの特徴でした。
そしてゴスペルからソウルへ、いわゆる宗教の歌から世俗のソウル・ミュージックに舵を切った時もステイプル・シンガーズにはいつも品がありました。そして誇りと信念もその音楽の後ろにいつも感じられました。それは父ポップスがグループの礎を築いた時から今も活躍する娘メイヴィスの歌にしっかり残っています。
次は親が子供が帰ってくるのを待っているという歌です。「ひとりの女性に会ったら彼女がこんなことを言った。もしあなたがどこかで私の子供に会ったら帰ってくるのを私が待っていると伝えて欲しい。もし、帰ってこれないのなら手紙を書いて欲しい。どこかで手当てをしてくれる人もいなく病気になっているんじゃないか、助ける人もなく拘置所に入れられてるのではないか・・私は心配している。そして子供が帰ってくるのをずっと待っている」この曲はメイヴィスも歌っていますが、お父さんの心温まる歌もすごくいいです。

4.Waiting For My Child/Pops Staples

最後にやっぱりステイプル・シンガーズでこのメイヴィス・ステイプルズ来日大特集の最後を締めたいと思います。

5.Will The Circle Be Unbroken/The Staple Singers

今回はメイヴィスのお父さんローバックのソロ・アルバムを聴きました。彼の意志を受け継いだメイヴィス・ステイプルズにはまだまだ歌い続けてもらいたいです。