2018.10.12 ON AIR

追悼:愛すべき、忘れがたいブルーズマン、レイジー・レスター

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

They Call Me Lazy(OLDAYS 6208)

blues stop knocking'(Antone's TMG-ANT 0051)

blues stop knocking'(Antone’s TMG-ANT 0051)

 

ON AIR LIST
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
4.I Love You Baby/Lazy Lester
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
 

大好きなブルーズマン、レイジー・レスターが亡くなってしまった。
好きなミュージシャンの訃報ばかりで気が滅入る。自分が好きだった音楽が、もうライヴでは聴けなくなり、残された音源だけになってしまうのはやはり寂しい。
レイジー・レスターは今年5月に公開された映画「I AM THE BLUES」でその元気な姿を観たばかりだった。映画が製作されたのは2015年だったからすでに三年が経っていたのだけれど、ボビー・ラッシュ、バーバラ・リン、キャロル・フラン、リトル・フレディ・キングなどみんな高齢者なんだけど、レイジー・レスターは飄々として陽気でお茶目で元気な様子だった。

芸名は怠け者のレスターだが、本名はレズリー・カーズウェル・ジョンソンと立派な名前だった。1933年生まれ。ルイジアナのバトンルージュの近くで生まれ育った。南部ルイジアナで育ったのになぜか好きになったのがシカゴ・ブルーズのジミー・リードとリトル・ウォルター。当時ジミー・リードとリトル・ウォルターは全国的なヒットを出していたからルイジアナにいても影響を受けたのでしょう。
「ルイジアナ四天王」と呼ばる4人がいて、ロンサム・サンダウン(寂しい夕暮れ)スリム・ハーポ(すらっとしたハーモニカ吹き)、ライトニン・スリム(すらっとした稲妻さん)それにこの怠け者レスターさんですから・・。どうもレコード会社エクセロの社長のジェイ・ミラーが芸名つけるのが好きらしくて「ああ、君、今日からレイジー・レスターで行くで」みたいな感じやったらしいです。
本人は「オレ、別にそんなに怠け者やないで」って言うてます。
ですが、「みんなはオレのこと怠け者っていうねん」という名刺がわりの一曲です
1.They Call Me Lazy/Lazy Lester
こののんびり感。いいですね。
1956年、レスターさん23才の時にエクセロ・レコードに初めて録音します。
前も彼を特集した時に言ったのですが、初レコーディングに至った経緯がほんまかと思うくらい面白いんですが、
まだデビューする前に一日の仕事を終えて(普通の仕事を朝起きて夕方までしてたんでしょう)レスターさんはバスに乗って家に帰ろうとしました。そしたらバスにライトニン・スリムさんが偶然乗ってたんです。スリムさんはレコーディングに行くのにバスに乗ってたのですが、たぶんギターを持ってたんでしょ。その頃スリムさんはちょい売れしてまして、レスターさんは声をかけました。「ええ、すごい!あのライトニン・スリムさんですか・・どこへいかはるんですか」と訊くと、スリムさんが「いまから録音でスタジオへ行くんや」するとレスターさん「ついて行っていいですか」と突っ込みました。まあ、50年代のルイジアナのクロウリーいう田舎街ですからのんびりしたもんです。「まあ、ええけどな・・」とスリムさんに言われて「ラッキー」とばかりにスタジオへついていきました。
そしたら、その日ライトニン・スリムの録音でハーモニカ吹く奴が時間になってもなかなかスタジオに来なかったので、レスターさんは「あの~、僕ハーモニカ吹けるんですよ」と売り込んだんです。エクセロ・レコードの社長のジェイ・ミラーがスリムさんに「スリム、さっきからおるけど誰やねん、こいつ」「いや~。オレもよう知らんのですがバスに乗ってたらついてきたんですよ。君ほんまにハーモニカ吹けるんか・・」「吹けます、吹けます」
それで初レコーディング。それでしばらくそのライトニン・スリムさんのバックでハーモニカとして活躍することになったというほのぼのとした話です。
それで56年初めて自分のレコーディング。それがいまのThey Call Me Lazy。
レイジー・レスターにはロックン・ロールに繋がるビートがあります。歌のテンションは高くなくてダウンホームなんですがバックのビートがステディなロックなんですよ。もう踊るしかないやろみたいなダンサブルなリズムがあります。ダウンホームな歌とバックのステディ・グルーヴの組み合わせがエクセロレコードの魅力のひとつです。
2.I Hear You Knockin’/Lazy Lester
かっこいい曲です。
レスターさんはすごくヒットした曲はないんですが、いい感じのダウンホームとファンキーがミックスされたブルーズを歌った人だった。
エクセロというレコード会社はシカゴブルーズのような重さはなく、ウエストコーストのような洒落た感じもなく、テキサスのようにアグレッシヴでもないんですが、同じレーベルのスリム・ハーポもストーンズなんかに人気のあったブルーズマンですし、ストーンズの新しいアルバムでHoo Doo Bluesをカバーされたライトニン・スリムもエクセロレーベルのブルーズマンなんですが、ダウンホームでありながらビートはしっかりしてファンキー、そしてどこかポップ感があるという微妙なさじ加減はエクセロレコードならではです。
次の曲は60年代のイギリスのビート・グループ、「キンクス」がカバーしています。
3.I’m Not A Fighter/Lazy Lester
自分の彼女にしょかなと思っていたらら体のデカイ強そうな男が出てきて、僕は愛の男で戦う男やないんよ。I’m Not A Fighter。レイジーで怠け者やしね。まあ、ライオンみたいに吠えることも蜂みたいに刺すこともできるけど僕の血の中にはウサギの血が入ってる、つまり優しい?っていうことでしょうか。
70年代レイジー・レスターの名前は聞かなくなり、一時期リタイア状態で80年代にはもう亡くなっているという話もありましたが、87年に「何言うてんねん。オレは生きてるよ」とばかりにアルバム”Lazy Lester Rides Again”で復活、2000年には来日もしました。第7回のパークタワーブルーズフェスでした。
これから聞いてもらうのは2001年にアントンズ・レーベルからリリースされた”Blues Stop Knockin’というアルバムでファビラス・サンダーバードのジミー・ボーンほかアントンズ界隈のミュージシャンたちがバックをしています。
歌の途中でレスターさんの笑声が出るくらい楽しさが満載の曲で、踊り出したくなるような実に気持ちのいいビートが続きます。
4.I Love You Baby/Lazy Lester
映画で見たレイジー・レスターさんは怠け者というより、優しい人でした。顔つきみてもねほのぼのした感じで笑顔がいい感じでした。
最後にダウンホーム、レイドバック・ブルーズの極めつけみたいなブルーズを聞いてください。こういう感じは本当に普段の生活のリズムがこうやないと演奏できないやろと思える曲です。
5.Lonesome Highway Blues//Lazy Lester
夕暮れのハイウェイをぼろい車で走っている感じでした。
映画「I AM THE BLUES」はもう公開が終わってますが、DVD化されていないのでしょうか。それともまだ日本でリリースされてないのかいるんでしょうか。
もし、DVD化されたら是非観てください。レイジー・レスター、本当に愛すべき、忘れられないブルーズマンでした。寂しいです。

2018.10.05 ON AIR

自らの原点を再確認した大西ゆかりのソウル・アルバム
“BLACK BOX”

BLACK BOX/大西ユカリ(テイチク TECE-3489)
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ON AIR LIST
1.Precious Precious/大西ユカリ
2.If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right/大西ユカリ
3.Clean Up Woman/大西ユカリ
4.Every Little Bit Hurts/大西ユカリ

大西ゆかりさんが大阪の通天閣の通天閣歌謡劇場ですごく人気のあった「大西ユカリショー」をずっと続けてこられてきたのを知って方も多いと思います。当時はバンド名も「大西ユカリと新世界」でした。大阪ではテレビに出られたり、ラジオのパーソナリティもされているのでよく知られていて、現在もラジオ大阪「GO!GO!フライデーショー!」をされています。
僕は昔神戸のソウル・バーで彼女が働いていた頃から知ってるのは知ってるんですが、自分でバンドやってるヴォーカリスト同士はあまり同じステージがないんです。それでユカリさんともちょこちょことコンサートや飲み屋で会うことはあったんですが、あまりじっくり話したこともないままでした。
それが縁あって最近、ちょくちょく大阪でお会いするようになっています。
彼女は2000年以降の「昭和歌謡ブームの先駆け」として全国的に知られていると思います。でもソウルバーで働いていたぐらいですから、元々ソウルが大好きなんです。それで今回自分のルーツ、原点を見直すというのでソウルのカバー・アルバムを6/20にリリースされました。
ON AIRが遅くなりましたが、今日は大西ユカリの新譜”BLACK BOX”を聴きます。
まずはサザンソウル好きの方にはオーティス・クレイやO.Vライトの歌で知ってる方も多いと思いますが、オリジナル・シンガーは、曲も作った女性シンガー、ジャッキー・ムーア、1970年の大ヒットでした。
1.Precious Precious/大西ユカリ

このゆかりさんのアルバムの収録曲を見た時に真っ先に聴いたのが次の”If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right”でした。この曲はソウルの名曲のひとつです。ルーサー・イングラムが1972年にR&B1位ポップチャート3位まで記録した曲で、74年にカバーしたミリー・ジャクソンのバージョンはグラミーにノミネートされてました。ロックのロッド・スチュワートも歌っています。
これは不倫ソングなんですが、タイトルは「もし君を愛することがよくないことなら、私はよくはなりたくない」
本人は嫁も子供もおるのに他の女性を好きになってしまったんですね。周りの人たちはみんな反対してるわけです。そんな恋愛やめとけと。彼女もそんな嫁も子供もおる男なんかやめとけ言われてるんですよ。でも、好きなんですね。それは悪いことやと言われてもそれなら自分は悪くていいよという・・うーん、わからないでもないです。
2.If Loving You Is Wrong I Don’t Want To Be Right/大西ユカリ
I Can’t See You When I Want To I’ll See You When I Can(会いたい時に会えないのなら、会える時に会うよ)この一節もたまらんです。
ユカリさんの歌にとても力と思いがあり、僕はアルバムの中でいちばん好きな曲です。

このアルバムは”Mojo Club”の三宅伸治くんがプロデュースで甲本ヒロトくんとか山崎まさよしくんそれからコーラスにズクナシの3人、ベースは僕のソロアルバムをプロデュースしてくれた中村キタローくん、キーボードはこれまたよく知ってる佐々木久美ちゃんとかがゲストに入ってます。
このアルバムには昔のソウルの曲だけでなく、一曲目は若くしてなくなったエイミー・ワインハウスの曲で、2曲目がここ数年話題のパワフルな女性シンガージャネル・モネイの曲で、ユカリさんが新しい音楽にもアンテナを張ってるのがわかります。でも、今日は僕の好きな曲かけさせてもらいます。

次は70年代に活躍して僕もよく聴きましたマイアミのソウルシンガー、ベティ・ライトの72年の大ヒットでよくディスコやソウルバーで聴きました。そのヒットの頃、歌っているベティ・ライトが18才やというんで驚いた覚えがあります。
これ「私達女が捨てた愛を拾って掃除してくれる女。彼女は彼の悩みもすべて取り去って24時間体勢で彼にいっぱい愛を与える。」
簡単に愛を彼を捨てる女がいるけどそれはダメでしょという歌なんでしょうか。
3.Clean Up Woman/大西ユカリ
いいですよね。前から思ってるんですが、ユカリさんはさっき名前の出たミリー・ジャクソンとかいまのベティ・ライトとかジャッキー・ムーアとか日常の男女の歌が似合うと思います。ある意味ちょっと下世話な歌の方が本領発揮するような気がします。

4.Every Little Bit Hurts/大西ユカリ
ユカリさんは普段は日本語のオリジナルの曲だったり、こういうカバーものでも日本語でやられていることが多いと思うのですが、自分の原点というか自分が歌を始めた、自分の心を動かした曲をカバーするのは僕はとても大事だと思ってます。それをこうしてアルバムにしたり、ライヴで歌ったりするのはオリジナルをやるのとはまた別の大変さがあります。でも、ユカリさんが影響受けた曲をカバーすることで、それを聴いてそのオリジナルを聴く人もいると思います。そうして音楽が洋楽まで広がっていくといいなぁと僕は思います。
がんばってくださいって僕が言わんでも充分がんばってはりますが・・。
いつも言うてるんですが、ゆかりさん、飲み屋やってください。ソウル・バーやなくてソウル飲み屋。お願いします!毎晩飲みにいきますわ。

2018.09.28 ON AIR

シカゴの名ギタリスト、ジョディ・ウィリアムスが残した素晴らしい録音

JODY WILLIAMS/Jody Williams In Session/Diary Of Chicago Bluesman1954-1962(Jasmine JASMCD3100)
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ON AIR LIST
1.Don’t Start Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
2.Who Do You Love/Bo Diddley
3.One Kiss/Jimmy Rogers
4.Lucky Lou/Little Joe Lee (AKA Jody Williams)
5.Easy Lovin’/Little Papa Joe(AKA Jody Williams)

ジョディ・ウィリアムスはすごく有名なブルーズマンではない。しかし、すごく重要なブルーズマン、そしてギタリストだ。
ブルーズを好きな人なら「この曲もああこの曲のギターもジョディ・ウィリアムスなのか」と気がつくと思う。
このアルバムのタイトルがジョディのことをよく表している。”Jody Williams In Session/Diary Of Chicago Bluesman1954-1962″サブタイトルの1954年から60年のシカゴ・ブルーズマンの日記というように彼はシカゴ・ブルーズ全盛時に、本当に毎日の日記のようにたくさんの録音に参加していた。

まずはサニーボーイ・ウィリアムスンのこの大ヒット曲。メンバーはドラムにフレッド・ビロウ、ベースにウィリー・ディクソン、ピアノにオーティス・スパン、そしてギターにマディ・ウォーターズとジョディ・ウィリアムス。錚々たるシカゴ・ブルーズのメンバーの中に参加している。ブレイクのところのリフや細かいフレイズがジョディです。
1955年録音R&Bチャートの3位まで登りました。「オレに喋らせんなよ。見たこと全部喋ってしまうで・・」と脅しみたいなサニーボーイらしい怖い曲です。
1.Don’t Start Me Talkin’/Sonny Boy Williamson
久しぶりにDon’t Start Me Talkin’を聞くと、曲や歌詞の良さ、録音の良さ、サニーボーイのハーモニカと歌の唯一無比な素晴らしさ、そしてバックの演奏の巧みさ・・それらが一体となってこの完璧なブルーズの名曲を作っていることがわかる。こういう録音に呼ばれるというのは、やはりジョディ・ウィリアムスが腕の立つギタリストとして信頼されていた証だ。

1935年アラバマ生まれでシカゴ育ちのジョディは早くからギターが上手くて16才くらいの時には一角に弾けたということ。その青少年時代の友達がのちにロックン・ローラーの大きなアイコンになるボ・ディドリー。
そのボ・ディドリーの有名な曲の録音にもジョディは参加している。ザ・バンド、サンタナ、ザ・ドアーズ、それからジョージ・サラグッドとたくさんカバーが残っているロッキン・ブルーズの名曲、Who Do You Love。
2.Who Do You Love/Bo Diddley
この曲にジョディが参加していることを知らない人も多いと思う。
いつ聞いても古い感じがしない、ついついノってしまう呪縛のようなビート・ミュージックです。ちなみに最初ジョディはギターの前にハーモニカを吹いていたそうで、その頃、いまのボ・ディドリーと友達になってストリートで演奏していたそうです。

シカゴでギタリストとして頭角を表したジョディ・ウィリアムスは50年代半ばにハウリン・ウルフのバンドに在籍して、その時はもうひとりの若いギタリスト、ヒューバート・サムリンと2ギターでウルフのバンドサウンドを作っていた。当時、シカゴで売れているハウリン・ウルフやマディ・ウォーターズのバンドに加入するというのは、ミュージシャンとして大きなステイタスだった。
ジョディのようなバッキング・ギタリスト、スタジオのギタリストというとシカゴではジミー・ロジャース、ロバート・ロックウッド、エディ・テイラーが有名だが、シカゴ・ブルーズ・スタイルのギターだけでなくB.B.キング的なモダン・ブルーズのギター、そして少しジャズ・テイストもあるギターを弾けるところがジョディの個性だった。

いま言ったシカゴ・ブルーズのギター名人のジミー・ロジャースの録音にも参加している。これもピアノがオーティス・スパン、ハーモニカがウォルター・ホートン、ベースがウィリー・ディクソン、ドラムがフレッド・ビロウ、そこにジョディ・ウィリアムスのギターともう文句のつけようがない鉄壁の完璧なシカゴ・エレクトリック・ブルーズ。ギター名人がジミー・ロジャースとジョディ・ウィリアムスふたりいるという贅沢な1956年、シカゴ・ブルーズの最高にいい時代。大好きな曲。
3.One Kiss/Jimmy Rogers

売れなかったけれどジョディは素晴らしいブルーズシンガーでもあった。最初は1955年”Looking for My Baby”という曲で歌手デビューだが、なぜかリトル・パパ・ジョーという別名でリリースされている。いま聴いたジミー・ロジャースは”That’s Alright”とか”Walkin’ By Myself”とかヒットが出たが、ジョディはこれというヒットが出なかった。その分ジミー・ロジャーズほど有名になれなかった。

オーティス・ラッシュのヒット曲で、エリック・クラプトンもブルーズ・ブレイカーズ時代に録音した”All Your Love”の元曲。このインストルメンタルに歌詞つけ””All Your Love”にしたことがわかる。ビートがシャッフルに変るアイデアも最初からこの曲にあった。そしてどういう訳か、ここでもジョディ・ウィリアムスという名前ではなくてリトル・ジョー・リーという変名で出している。契約上の問題でもあったのだろうか。1957年リリース
4.Lucky Lou/Little Joe Lee (AKA Jody Williams)

次はジョディの魅力的な歌声がきける曲で、ギターはもちろん音色もフレイズも文句なしに素晴らしいです。恐らく後輩のマジック・サムも影響を受けただろうと思える素晴らしいギターだ。
5.Easy Lovin’/Little Papa Joe(AKA Jody Williams)
ギターもいいけど歌もいい。こういう曲がヒットしていればもっと違う活躍があったかも知れない。ジョディはショービジネスの世界が嫌になって一度引退してしまうが、2002年、35年ぶりに復活。復活の初ソロアルバム”Return Of A Legend”を82才でリリースして来日もした。いまも健在な筈だが音楽活動のニュースはここしばらく届いて来ない。
今日のアルバムはJASMINEレコードからCDで今年リリースされた。見つけたら即ゲット!

2018.09.21 ON AIR

いまもバリバリの現役、ファンキーなブルーズロッカー、エルヴィン・ビショップの新譜

Elvin Bishop’s Big Fun Trio/Something Smells Funky ‘Round Here (P-VINE PCD-25262)
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ON AIR LIST
1.(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
2.Another Mule/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
3.I Can’t Stand The Rain/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
4.Right Now Is The Hour/Elvin Bishop’s Big Fun Trio

エルヴィン・ビショップを知ってますか。60年代70年代のロックが好きな人なら「ああ、ギタリストの」「ポール・バターフィールド・ブルースバンドの」「スワンプロックの」と思い出す方もいると思います。
僕がエルヴィン・ビショップの名前を知ったのは高校生三年の頃かな。その「ポール・バターフィールド・ブルーズバンド」のメンバーとして彼の名前を知った。バンドにはもうひとりギター、マイク・ブルームフィールドがいて当時はそのブルームフィールドの方がギターが上手いと言われていて、キーボードのアル・クーパーと話題になったアルバム「フィルモアの奇蹟」を作ったり、ボブ・ディランのアルバムに参加したり、エレクトリック・フラッグというバンド作ったりとなにかと華々しい活躍をしていた。
一方、エルヴィンはポール・バターフィールド・ブルーズバンドで研鑽を積み68年にソロに。69年に初ソロアルバム”The Elvin Bishop Group”をリリースしてから現在までずっと活動を続けているブルーズロックのレジェンドだ。
今日紹介する今年7月にリリースされたニュー・アルバムElvin Bishop’s Big Fun Trio/Something Smells Funky ‘Round Hereは24枚目のアルバムになるという。しかもまったく衰えていないところがすごい。

このニュー・アルバムのメンバーは、キーボードとギターのボブ・ウェルシとカホーンとヴォーカルのウィリー・ジョーダン、それにギターとヴォーカルのエルヴィン・ビショップの3人。つまり、ドラムではなくカホーン(打楽器)とギター、ギター、またはカホーンとギターとキーボードという編成というところがミソになっている。
まずは1曲、カホーンのウィリー・ジョーダンが歌っている1967年ジャッキー・ウィルソンのヒット曲のカバーです。
1.(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
ウィリーが高い声で押せ押せハイテンションで、一方エルヴィンはダウンホームな歌い方というふたつがなかなかええ感じにアルバムに入っっている。

80年代に少しレコーディングのブランクはあったが、長い経歴の割にはコンスタントにアルバムをリリースしているエルヴィン。
ところでエルヴィンはいま何才なんだろうと調べてみたら1946年生まれで76才。バターフィールド・ブルーズバンドの頃が23才くらいだからもう半世紀以上やってる!

僕はちょうど1975年”Juke Joint Jump”というアルバムを出した直後に、ロスのUCLAの会館でエルヴィン・ビショップを観たことがある。
対バンはJ.ガイルズ・バンド。それが僕がアメリカでロックバンドのライヴを観た最初だった。もちろん両方とも素晴らしかった。
エルヴィンはアルバムが評判がよくてそこからヒットした曲もありノリノリのライヴだった。その頃は南部のサザンロック、スワンプロック的なアプローチでシカゴ・ブルーズのような感じではなくファンキーなライヴだった。
次はニューオリンズの偉大なプロデューサー、作曲家でもあるデイヴ・バーソロミューの曲でこのエルヴィンのトリオはレイドバックしたムードで、ニューオリンズ・テイストもしっかり踏まえていい感じです。
2.Another Mule/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
いいよね。
実はこのアルバム、カホーンの3人編成やし・・どないやろ・・と思ってたのですが、予想を裏切ってよかったです。
ここで最近流行っているカホンについてひとこと。
カホンは元々ペルーが発祥の木で出来た木製の箱形の打楽器で素手で叩きます。南米の音楽やフラメンコにもよく使われています。日本では大きな音のドラムセットが使えないカフェのライヴとかイベントで使われることが多いので知ってる方も多いと思います。
ただ、お手軽な感じで気軽に叩く人がいますが、いま言ったみたいにちゃんとした打楽器でコンガ、ボンゴと同じで素人が気軽に叩けるものではない。ちゃんと習って練習しないと・・。今日聴いてもらってるアルバムのカホンのウィリー・ジョーダンも元々ドラマーです。エルヴィンのバンドでドラム叩くこともあります。ちゃんとしたドラマー、打楽器プレイヤーなんです。
でも、日本で見ていると全然練習もしていないような人が、適当に叩いていることがよくあるんですがあれ止めて欲しいです。
ギターとかピアノはまったく習ってない練習しない人がステージで弾かないですよね。あれカホンという楽器に対しても、打楽器プレイヤーの方に対しても失礼だと思います。・・・まあこういうこと言うと「そんなに堅く考えんでもええやん」っていう人いるんですが、包丁を持ったことがない人が魚をおろして刺身をつくろうとするようなものです。カホンを演奏したければしっかりリズムをキープできるくらい練習して人前に出てもらいたいです。

次はメンフィスのソウル・クイーン、アン・ビーブルズが歌ってヒットさせた曲のカバーです。
カホンのウィリー・ジョーダンが歌ってます。
3.I Can’t Stand The Rain/Elvin Bishop’s Big Fun Trio
ウィリー・ジョーダンのハイトーンの声がいいですね。
エルヴィン・ビショップは南部の生まれかと思ったら、カリフォルニアの生まれなんで10才の頃にオクラホマ州に引っ越してます。
オクラホマ州はアメリカの中南部テキサスの北、カンザスの南東隣はアーカンソー・・もうブルーズ、リズム&ブルーズがバンバン聴こえてくるあたりで育ってます。そこでラジオから流れてくる黒人音楽にいったいこれはどういうミュージシャンがやっているのだろうと思っていたそうです。そしてなぜかシカゴ大学に入学します。1960年代初期です。
シカゴではまだまだマディもリトル・ウォルターもハウリン・ウルフも元気な頃です。ジミー・リードもいます。それで同じ白人でブルーズ・フリークだったポール・バターフィールド・ブルーズバンドに誘われバンドに加入。いまに至るミュージシャン・ライフの始まりだった。

エルヴィンはすごくいいギターを弾く人で、黒人音楽だけでなくカントリーやザディコ、R&Bなどもうまく取り入れてきた人でもっと評価されるべき人だと思う。
作品としては75年の”Juke Joint Jump” 91年の”Don’t Let The Bossman Get You Down”とか2001年の”King Biscuit Flower Hour Presents In Concert”とか2010年の”Red Dog Speaks”とかいいアルバムがたくさんある。僕が格別好きなのは1974年のアルバムで”Let It Flow”。当時サザン・ロックと呼ばれたものですが、同じサザンロックのオールマン・ブラザーズのディッキー・ベッツやマーシャル・タッカー・バンドのトイ・コールドウェイやチャーリー・ダニエルもゲスト参加している。ちょっとそのアルバムを想い出させる曲を最後に。
4.Right Now Is The Hour/Elvin Bishop’s Big Fun Trio

今日は芸歴50年以上に渡り活動を続けいまも元気に精力的にアルバムを出すエルヴィン・ビショップの新しいアルバム、エルヴィン・ビショップ・ビッグファントリオのSomething Smells Funky ‘Round Hereを聴きました。日本盤もリリースされていますので是非!

2018.09.14 ON AIR

私はジョン・リー・フッカー病

From Detroit To Chicago 1954-58/John Lee Hooker(SAGA 532 122-3)

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ON AIR LIST
1.Shake,Holler and Run/John Lee Hooker
2.Hug And Squeeze You/John Lee Hooker
3.Every Night/John Lee Hooker
4.I Love You Honey/John Lee Hooker
5.Mambo Chillun/John Lee Hooker
6.Dimples/John Lee Hooker

私の好物ジョン・リー・フッカー!
もうジョン・リー・フッカーの音源の重要なところはすべて持っているし、怪しげなブートの音源までも持ってるんですが、知らないジャケットを見ると思わず手に取ってしまうというジョン・リー病です。
今日聴くアルバムも先日ツアー途中の中古レコード店でゲットしたものですが、ジャケットの感じがよかったんですね。買った理由はそれだけです。
レコードレーベルはSAGA BLUESと書いてあって知らないレーベルで、あとで調べたらフランスのレコード会社。ライナーもフランス語で書いてあります。
アルバム・タイトルが”From Detroit To Chicago 1954-58″で、まあ若かった頃のジョン・リーだろうと、ブートでなければモダンレコードとVEE JAYレコードの録音のものだろうと予測してゲットしました。
ジャケットの感じというのが僕にとってはすごく大事なんですが、もちろんジャケットでだまされたこともあります。いいジャケットなのに中身の録音がダメ~いうのもあります。あとはジャケット裏の曲目とか・・・ライナーが書いてあるといいんですが、これは曲目だけ。
でも、この50年代半ばから後期にかけてのジョン・リーはまず間違いないと思って買ったら、やっぱりモダンレコードとVEE JAYレコードの録音物ですでに持っている音源だけどやっぱりいい。
楽しいのはこのアルバムを選曲した、つまりコンピレーションした人のセンス。このアルバムに関していえば実にいいセンスしてます。コンピレーションというのはそれを選んだレーベルのセンスが出るので面白いです。

まずはモダンレコード時代のワイルドな、凶暴なジョン・リーから。アルバムの1曲目1954年録音
1.Shake,Holler and Run/John Lee Hooker
歪んだギターの音とジョン・リーの硬質な刃物のような歌声がたまりませんが、この曲はどう考えても同じ1954年にジョー・ターナーが歌って大ヒットした”Shake,Rattle and Roll”のパクリでShake,Holler and Run”にしたんでしょう。同じ年に「よし!いまやろ!」とすぐ出す感じが最高です。ジョン・リーは小節数が変則な歌い方をするのですが、流石モダンレコードのスタジオ・ミュージシャンたちのバックはしっかりしていてちゃんとついていってます。ジョン・リーのこういうちょっとヒヤヒヤするところも僕にとってはもう堪らん感じです。
次もモダンレコード時代の曲です。ちょっとポップな感じもあるいい曲です。
もうひとりのギターはデトロイト時代ずっとジョン・リーとデュオでやってきたエディ・カークランド。
2.Hug And Squeeze You/John Lee Hooker

ジョン・リーの曲は大体底なし沼のようなドロドロとしたスローブルーズとアップテンポの二本立てでヴァリエーションはあまりありません。
バンドをつけた録音もあれば弾き語りもあり、2,3人でやってる録音もありますが、バックがいようがソロだろうがジョン・リーは変りません。
彼自身はただギャラもらえたらそういうことはどうでもいいんだと思います。
どんなシチュエーションでもジョン・リーの歌やギターは何も変わらないので、こういうブルーズマンは酒飲ませて勝手にやらせるしかないのでしょう。
録音する曲もこんなんどうやと言われたらそれも録音するし、曲が足りなかったらその場で自分で適当に作って録音する感じです。それでその場でギャラもらって「ありがとう、さよなら」で、そのアルバムが売れようが売れなかろうがジョン・リーはなにも気に留めてないと思います。
つまり、戦前の弾き語り時代からブルーズを歌って来たブルーズマンはみんなそうやってその日その日を生きてきたわけです。明日のことなんか考えることも出来ないし、それより今夜の食事と酒のお金ですよね。ちなみにジョン・リーはモダンレコードと契約している時でも金欲しさに他の会社からも違う名前、偽名、例えばテキサス・スリムとかデルタ・ジョンとかジョニー・リーとかで録音する強者ですから。
そういう生活そのものがブルーズのレコーディングにも反映されていくわけです。
では、ここでスローブルーズを一曲。
3.Every Night/John Lee Hooker
いまのも小節数がグダグダで、おっ、いいなと思うギターソロも最後まで弾かず途中で終わってしまうんですが、これがジョン・リーなんですよ。ギターソロなんかええ感じで始まったんですがね・・・
ジョン・リー・フッカーはブルーズの定番の型、つまり12小節でワンコーラス、5小節目でコードチェンジ(サブドミナント)へというような定型の約束ごとを守りません。なのでバックのミュージシャンたちがどうしょうかとウロウロして、演奏がバラバラになってしまうこともよくあります。でも、ジョン・リーは変らずマイペースで突進していきます。結局、バックもジョン・リーの歌に合わせるしかないということになります。まあ全然の弾き語りのブルーズマンにはよくあることです。
いまのはヴィージェイ・レコード時代でもうひとりのギターは名人エディ・テイラーです。たぶん録音はそのエディ・テイラーがジョン・リーの歌に合わせるように指示しているんやないでしょうか。それでもジョン・リーは小節関係なしに気ままに歌って、気ままにギター弾いてます。もうすごいです。
ヴィージェイ・レコードのレコーディングスタッフは時代の音楽の流れにジョン・リーを乗せようとして次のようなちょっとポップ感(というても知れてますがね、ポップ感も)のあるブルーズも持ってくるんです。それに本人も乗って歌うんですが、基本ミシシッピーの洗練されない感じがどうしても歌声に出てしまうんですが、それがいいんですね。次は1958年久しぶりにチャートに登場したジョン・リーです。
4.I Love You Honey/John Lee Hooker
ヴィージェイ・レコードのプロデュースのおかげでジョン・リーはあまり過去の人にはならないで音楽を続け、このヴィージェイ時代のヒットでヨーロッパでも人気が出てツアーズにも行く事になります。
次の曲はジョン・リーの最大のヒットのBoogie Chillunのリメイクというか、柳の下にどじょうが二匹を狙ったのか、ブギをマンボのリズムに変えてみましたというような曲です。マンボ・チランというタイトルですが、チランはチルドレン、チャイルドつまり子供、ガキですね。
「もし、家の中でマンボ踊るのをおふくろが許してくれなくてもオレは気にせえへんよ。ベイビーとマンボ踊るよ。オヤジはおふくろにオレにマンボさせてやれよと言うけど、おふくろがあかんっていうてる。でも、オレはマンボするよ。マンボ」これ、元々のブギも下ネタ言葉の意味がありますが、どうもマンボもそういう風に使ってる感じですね。
5.Mambo Chillun/John Lee Hooker

ジョン・リー・フッカーは決して器用なブルーズマンでもなく、音楽性も広くなく、生涯残した曲は似たようなものが多いです。でも、その時代、その時代で波に少しは乗る頭の柔軟性があったのだと思います。そして、他のブルーズマンには決してできない自分のブルーズを確立していきました。それは本人が無意識にやったことだと思います。