2018.02.09 ON AIR

ニーナ・シモンのデビュー・アルバムしかも名盤
Little Girl Blue/Nina Simone(BETHLEHEM/日本コロンビア COCY-75732)
IMG01

ON AIR LIST
1.Mood Indigo/Nina Simone
2.I Love You,Porgy/Nina Simone
3.Little Girl Blue/Nina Simone
4.He’s Got the Whole World in His Hands/Nina Simone

 

 

 

 

 
僕はいままでたくさんの外国ミュージシャンのライヴを見てきましたが、見る機会がないまま他界されて後悔しているのが今日聴いてもらうニーナ・シモンです。
さかのぼれば大学1年の頃に京都のジャズ喫茶で彼女の歌声に出会いました。その時、最初に聴いた時の想いをなんと表現したらいいのかさっきから言葉を探しているのですが、見つかりません。感動というわけではなく、ひしひしと押し寄せて来る静かな胸の高鳴りのような感じですか・・。
ニーナ・シモンはカテゴリーとしてはジャズ・シンガー&ピアニストに入るのですが、ジャズ・ファンではない人でも彼女のファンは多いです。それはなぜかと言えば、彼女の歌とピアノにカテゴリーを越えた説得力があるからだと思います。
1933年にノース・キャロライナに生まれ三歳でピアノを弾き始め、数年後には教会でピアノを弾いてます。幼い頃から非凡な才能に恵まれていたのでしょう。
貧しい黒人家庭でしたが、お母さんがメイドをしていた家の主人がニーナのピアノの才能に驚いて、金銭的なバックアップを申し出てクラシックを学びに音楽学校に行けることになり、ニーナはトップの成績で卒業します。その後有名なジュリアード音楽院に入り、その時もクラシックのピアニストを目指していたと思われます。しかし、黒人であるということを理由にクラシックの世界には入り込めなかったようです。
そのジュリアードに行っている頃からクラブでお金を稼ぐためにジャズを始めます。するとクラブのオーナーに歌が歌えるともっとお金になるよと言われて歌も歌うようになったのです。

今日聴いてもらうのはニーナ・シモンのファースト・アルバム。1957年リリースの名盤”Little Girl Blue”です。
まずは一曲目 作曲はデューク・エリントン
イントロから歌に入る前の彼女のピアノ・プレイだけでも聴く価値のある素晴らしさで、スピード感とブルージーなフレイズに聞き惚れてしまいます。そして、続く歌の堂々とした歌いっぷり。歌にもピアノにも聴いてすぐに卓越した才能を感じさせます。
1.Mood Indigo/Nina Simone

次は超有名な作曲家ジョージ・ガーシュウィンの作曲で、ミュージカル「ポーギーとべス」の挿入歌で知っている方も多いと思いますが、この歌がヒットして彼女は広く名前を知られることになりました。
2.I Love You,Porgy/Nina Simone
ニーナ・シモンはすごく才能があるのにさりげなく歌い、演奏できるナチュラルなミュージシャンで、いまのI Love You,Porgyもたくさんの歌手が歌いカバーがたくさんあるのですが、僕は彼女のこのテイクがいちばんだと思います。

次は去年公開されたジャニス・ジョップリンの映画のタイトルにもなっていました”Little Girl Blue”
ジャニスもこの曲を歌っていましたが、ニーナとはまったく表現の仕方の違う曲になっています。
童謡のようなピアノのメロディから始まる美しい曲ですが、「もう少女ではない大人になったのだから夢ばかり見てないで優しい自分にあった男を探しなさい」という意味のように取れる歌詞です。
3.Little Girl Blue/Nina Simone
聴き終わったあとにふっとため息が出てしまう素晴らしい歌とピアノです。
ニーナ・シモンは本当に人間の気持ちをよく知る人だと思います。そういう彼女の歌のバックにあるのは彼女の強い精神だと思います。よく言いますが強いから優しくなれる。
実はニーナ・シモンは60年代に黒人公民権運動から人種差別反対など政治運動にも活発に参加する女性でした。しかし、黒人で女性であることからそういう政治運動をすることで音楽業界から疎まれる、避けられるようになっていきました。しかし、信念の強い彼女は屈することなく音楽でもそういう信条を出し続けました。信念のある強い女性でした。
仕事が少なくなり世界を渡って、そして、70年代になって彼女はとうとうアメリカが嫌になったのかヨーロッパに渡り2003年にフランスで亡くなりました。

いまも本当に彼女の演奏と歌を生で、ライヴで聴けなかったことが悔やまれます。

次はマへリア・ジャクソン他たくさんのゴスペル・シンガーによっても歌われている曲です。やはりゴスペルを歌うというのは黒人シンガーにとって自分が精神的に幼い頃から支えられている音楽ですから、特別な思いがあると思います。
4.He’s Got the Whole World in His Hands/Nina Simone