2018.02.23 ON AIR

今年の干支、戌年にちなんでドッグ・タイトルのブルーズ

The Original Hound Dog/Big Mama Thornton (ACE CDCHD 940)

The Original Hound Dog/Big Mama Thornton (ACE CDCHD 940)

21 Blues Giants Blind Blake/Blind Blake (P-Vine PCD-3760)

21 Blues Giants Blind Blake/Blind Blake (P-Vine PCD-3760)

Sings The Blues/Lightnin’ Hopkins (PCD-3056)

Sings The Blues/Lightnin’ Hopkins (PCD-3056)

the best of Rufus Thomas/Rufus Thomas (RHINO R2 72410)

the best of Rufus Thomas/Rufus Thomas (RHINO R2 72410)

ON AIR LIST
1.Hound Dog/Big Mama Thornton
2.Hellhound On My Trail/Robert Johnson
3.Black Dog Blues/Blind Blake
4.Lonesome Dog Blues/Lightnin’ Hopkins
5.Walking The Dog/Rufus Thomas
6.Don’t Dog Your Woman/Buster Brown(時間があれば)

ブルーズには動物を歌詞の比喩に使うことが多いのですが、今年は戌年ということで今日は犬(DOG)をテーマにしたブルーズを聴いてください。
最初はブルーズの中で犬にちなんだブルーズとして一番有名な曲がこれだと思います。
Hound Dogは直訳すると猟犬ですが、この場合は女性にエサ(金)をせびりにくる男、つまりヒモみたいな奴のことで、女性の方はそんな男にエサはやらないよと言ってます。
1953年にテキサスの女性ブルーズシンガー、ビッグ・ママ・ソーントンが最初に歌ったのですが、その三年後にエルヴィス・プレスリーが歌って全米ヒットになって有名になりました。実はエルヴィスのは歌詞が違っていて男にオマエはいつも吠えているだけの猟犬やないか、うさぎ(女)もつかまえられない、そんな奴とはダチにもなれないなと臆病な男の友達をバカにしてるような歌になってます。
1.Hound Dog/Big Mama Thornton
次は伝説のロバート・ジョンソン。”Hellhound On My Trail”
Trailは通った後、痕跡ですから私の痕跡を後から来るhellは地獄、houndはさっきの猟犬。だから「私の後を追いかけてくる地獄の猟犬」・・・もうタイトルからして怖いですが。
ロバート・ジョンソンはとても詩的な歌詞を作るので歌詞を読んでいると、いろんなイマジネーションが広がります。とても抽象的でもありそれが一体何のことを歌っているのかはっきりわからないことも多いです。これは地獄の猟犬が自分を追いかけてくるので行かなくっては、逃げなくてはいけない。空からはブルーズがあられのように降ってくる。オレは毎日心配なことばかりだ。一時でいいから一緒に楽しめる女が欲しい。オレとつき合ってくれる可愛い女が欲しい。
放浪のブルーズマンだったロバート・ジョンソンは泊まるところからお金のことから、または放浪している時に白人に嫌がらせをされるとか、女とのもめ事とか女を取り合うもめ事とか死ぬまで心が落ち着くことはあまりなかったよう思います。でも、この心が落ち着かない、いつも何かにせかされている感覚というのは現代の僕たちにもずっとあるような気がします。つまり地獄の猟犬に僕たちも追いかけられてる毎日ではないでしょうか。
1937年テキサスのダラスで録音されたロバート・ジョンソンの素晴らしいブルーズ
2.Hellhound On My Trail/Robert Johnson

次はいまのロバート・ジョンソンより10年前になります。20年代所属したパラマウント・レコードでドル箱スターだったラグ・タイム・ブルーズのブラインド・ブレイクの「ブラック・ドッグ・ブルーズ」
ブラインド・ブレイクはブラインドですから盲目でしたが、驚異的なテクニックのギターリスト・スタイルはすごくたくさんのギタリストに影響を与えました。
軽やかなフィンガー・ピッキングのギターに載せて飄々と歌ってますが、内容は失恋のヘヴィな歌です。
3.Black Dog Blues/Blind Blake

アメリカでは20年代のブラインド・ブレイクの巧みなギター・プレイが後続のブラインド・ボーイ・フラー、ゲイリー・ディヴィスに受け継がれ、そして30年代のビッグ・ビル・ブルーンジーへそして、60年代に白人のライ・クーダーへ受け継がれていくのですが、日本では大阪の有山じゅんじですが、有山のあとにこういうギタースタイルの日本の若い人いるんでしょうか。アメリカでは戦前にはブレイクのようなギター名人がスクラッパー・ブラックウェルとかタンパ・レッドとかいろいろいました。まだ、ギターがエレキになる前ですから、アコギとかリゾネーター・ギターです。いま日本でもアコギの弾き語りやっている若い人が多いんですが、ただコードをかき鳴らすだけでなくこういうフィンガー・ピッキングも聴かせて欲しいです。

次の曲は今回のこの番組の10周年記念アルバム”ラジオアワー”にも僕が選んだ曲ですが、ライトニン・ホプキンスの”Lonesome Dog Blues”
自分の彼女が出ていってしまってから、裏庭で飼っている犬が鳴いているという内容ですが、鳴いているのは自分なのだということです。ところどころでギターをチョークして犬の鳴き声を表現している感じがいいです。
では寂しい犬のブルーズ
私の大好物、ライトニンホプキンスです。
4.Lonesome Dog Blues/Lightnin’ Hopkins
この番組のラジオアワーの新しいアルバム買ってくださいね。

次は久しぶりに聴くルーファス・トーマスですが、彼は最初タップ・ダンサーだったのでダンスが上手いし、彼のステージを僕は二度見ましたがライヴ・パフォーマーとして素晴らしく楽しいものでした。今日聴く彼の大ヒット”Walkin’ The Dog”はローリング・ストーンズのカバーで知っている人もいるだろうし、僕らブルーズ・ザ・ブッチャーとムッシュかまやつさんがコラボした”Rockin’ With Mouseir”で聴いている人もいると思いますが、実は今日一曲目に聴いてもらったビッグ・ママの”Hound Dog”のアンサーソングみたいな”Bear Cat”という曲もルーファス・トーマスは録音しています。ベア・キャットってレッサー・パンダのことやと思いますが、なんかえらい可愛いですが・・・。
ルーファス・トーマスもおもろい、かわいい人でした。ギターがとても印象に残りますが、弾いているのはスティーヴ・クロッパー
1963年メンフィスのスタックスレコードからリリースした。
5.Walking The Dog/Rufus Thomas
Walkin’ The Dogというのはダンスのステップの名前で踊り方がわからなかったら、オレがみせて教えてやるよとルーファスは歌ってます。
ルーファス・トーマスはラジオのDJをやっていたこともあり、いわゆるメンフィスの黒人ショー・ビジネスの親分的な存在でしたが、2001年に84才で亡くなりました。ほぼ現役で生涯を閉じた人ですが、あだ名がですね”The World’s’Oldest Teenager”世界でいちばん年をとった10代というもので、最後まで若者のようにステージやった人でした。
僕も”The World’s’Oldest Teenager”世界でいちばん年をとった10代と呼ばれるような若々しく、ばかばかしい爺さんになりたいと思います。

最後はファニー・メイという大ヒット曲を出したバスター・ブラウンですが、Don’t Dog Your Womanというこの曲、大ヒットのファニー・メイとほとんど一緒のメロディ、アレンジなんですよね・・困ったもんです(笑)
6.Don’t Dog Your Woman/Buster Brown