2019.11.01 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集 vol.2
戦前シカゴ・ブルーズ

The King Of Chicago Blues Piano / Big Maceo (ARHOOLIE CD-7009)

The King Of Chicago Blues Piano / Big Maceo (ARHOOLIE CD-7009)

Farher Of Blues Harmonica / Sonny Boy Williamson (Golden Stars GSS-5431)

Farher Of Blues Harmonica / Sonny Boy Williamson (Golden Stars GSS-5431)

Warm Witty & Wise / Big Bill Broonzy (SME Record SRCS9461)

Warm Witty & Wise / Big Bill Broonzy (SME Record SRCS9461)

ON AIR LIST
1.Worried Life Blues/Big Maceo
2.Chicago Breakdown/Big Maceo
3.Good Morning Little School Girl/Sonny Boy Williamson
4.Early In The Morning/Sonny Boy Williamson
5.Key To The Highway/Jazz Gilum

前回から始めた「ブルーズ・スタンダード曲集」の二回目です。
僕も含めてですが、長い歳月ブルーズを聴いているとブルーズの有名なスタンダード曲はわかっていると思ってることがあります。
でも、自分も年を重ねるうちにひとつの曲の気づかなかった側面を知ったり、なぜその曲が長く多くの人に親しまれているのかがわかったり、その曲が生まれた経緯を理解したり・・ということがあります。
今日もON AIRする曲を知っている人もいると思いますが、いま一度この番組を通して聴いてみてください。
そして、初めて聴く人はもし気に入ったならそのブルーズマンのアルバムをゲットして聴いていただきたいです。
まあ、基本的に音楽に分類分けなんかどうでもいいのですが、自分の好きなブルーズを探すときの目安としてその分類をちょっと知っておくと便利です。
ブルーズという音楽の中でロックにも大きな影響を与えた戦後のエレクトリック・シカゴ・ブルーズから前回始めましたが、今回は「戦前」のシカゴ・ブルーズからスタンダードな曲を紹介します。
まずはブルーズのスタンダード曲に選ばれるのにふさわしいブルーズの名曲です。
彼女にフラれてしまい傷ついた男が「でも、いつの日かこれ以上苦しむことのない日が来るだろう」と歌っているのですが、そのいつの日かというのは死を意味していると思います。生きていく中で、失恋や別離や失敗をしてもいつの日かあの世に行くのだから、その日にはもう苦しみはなくなるんだという考え方に聴いていた多くの黒人たちは共感したのだと思います。
1.Worried Life Blues/Big Maceo
1942年録音。歌詞、曲としても素晴らしいですが、メイシオのピアノ・スタイルはのちのシカゴ・ブルーズのピアニスト、オーティス・スパンたちに引き継がれていきました。
ギターのタンパ・レッドのスライド・ギターも素晴らしいです。名曲であり名演です。

もう1曲ピッグ・メイシオで忘れられない曲でこのインストルメンタル曲もブルーズの名曲名演のひとつに入れてもいいと思います。左手でステディにグルーヴするブギ・ウギのリズムを強烈に打ち出しながら、右手で縦横無尽に繰り広げられるソロ。ブギウギ・ピアノの楽しさ満載の一曲。
1945年録音、チック・サンダースというドラマーとデュオです。
2.Chicago Breakdown/Big Maceo
パーティやクラブのダンスナンバーとして欠かせなかったブルーズのブギウギ曲。こういう曲でピアニストたちは技、テクニックの競い合いをしてたわけです。

次は後続のブルーズ・ハーモニカ・プレイヤーに大きな影響を与えたサニーボーイ・ウィリアムスン。いつも言ってますが、有名なサニーボーイ・ウィリアムスンはブルーズにふたりいます。しかもふたりともハーモニカ・プレイヤー。ふたりとも素晴らしいブルーズマン。ややこしいです。ひとりはこれから聴いてもらうジョン・リーウィリアムスン、もうひとりはライス・ミラー。先にシカゴにいて先に有名になったのがジョン・リー・ウィリアムスンの方なのでサニーボーイ1と呼ばれ、ライス・ミラーがサニーボーイ2と呼ばれています。どちらもブルーズにとっては重要なミュージシャンです。今日はそのサニーボーイ1のブルーズ・スタンダード・ナンバー。
「おはよう可愛い女子学生。僕と一緒に帰らへんか。パパとママには学校の友達やって言うたらええやん」と始まるんですが、これ・・おっさんが女子学生を誘ってる歌詞でいまやったらかなりヤバいんちゃいますか。続けて「彼女になってくれた、ダイヤの指輪買うたるで」ってこれ援交の歌ですね。1937年のアメリカではOKやった・・というかその後もマディ・ウォーターズ、ジュニア・ウエルズ、ライトニン・ホプキンス、ロックのヤードバーズ、ジョニー・ウィンター・・とかなりのカバーがあるんですが・・内容的にOKなんでしょうか。それとも、おっさんが可愛い女の子を可愛いなぁ、なんでも買ってやるよ・・・くらいの軽い歌なんでしようか。45年聴いていてもいまだに真意がはっきり分からない歌です。
3.Good Morning Little School Girl/Sonny Boy Williamson
アンプを通していない生のハーモニカの音の素朴な美しさがあっていいですね。ギターもアコースティックでひとりがジョー・ウィリアムス、もうひとりがロバート・リー・マッコイです。

次の曲は僕にとっては想い出深い曲で、最初に聴いたのはジュニア・ウエルズがアルバム”Hoodoo Man Blues”でカバーしたものでした。この曲が好きでいつか録音したいと思って録音できたのが、ウエストロード・ブルーズバンドの「ライヴ・イン・ニューヨーク」のアルバムでした。最初に出てくるインパクトのあるピアノはさっき聴いたビッグ・メイシオ。ギターが名手タンパ・レッド。チャールズ・サンダースのドラム。そしてハーモニカと歌のサニーボーイ・ウィリアムスン
4.Early In The Morning/Sonny Boy Williamson

いま聴いたサニーボーイ・ウィリアムスンとコンビも組んでいたのがビッグ・ビル・ブルーンジー。ビッグ・ビルはいろんなスタイルのギターを弾ける名人で自分のレコーディング以外にもレコーディング・ミュージシャンとしても活躍して、ミシシッピーからシカゴに来た多くのブルーズマンの中でも成功した人でした。そして、その後南部から出てきた後輩のマディ・ウォーターズなどの面倒もよく見た人格者でもありました。
とにかくたくさんの録音を残した人ですが、次のジャズ・ジラムの超有名8小節ブルーズもギターがビッグ・ビルです。彼のギターがこの曲の色合いというか、装飾をうまく作っていてすごく印象に残ります。
この曲もエリック・クラプトンはじめ多くのカバーがある誰もが認めるスタンダード曲だと思います。
5.Key To The Highway/Jazz Gilum

前回から始めた僕が選ぶブルーズ・スタンダード曲集ですが、まだまだたくさんのスタンダード曲があるので続けてではなくて何回にも分けてON AIRします。