2019.11.08 ON AIR

カントリー&ウエスタン・ミュージックの聖地ナッシュヴィルにもブルーズはあるんやで・・の巻

Let Me Tell You About The Blues Nashville(FANTASTIC VOYAGE FVTD078)

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ON AIR LIST
1.Nashville Jumps/Cecil Gant
2.Beer Bottle Boogie/Mr Swing (Rufus Thomas)
3.Don’t Do It/Christine Kittrell
4.Baby Let’s Play House/Artthur Gunter
5.Courtin’ In A Cadillac/Jerry McCain

みなさんはアメリカのナッシュヴィルという街をご存知でしょうか。僕も行ったことがないのですが、メンフィスと同じテネシー州にあってメンフィスが黒人音楽のブルーズやR&Bの街ならナッシュヴィルは白人の音楽、カントリー・ミュージックの聖地と言ってもよいカントリー・ミュージックが盛んな街で「グランド・オール・オプリー」という1925年から始まったカントリー・ミュージックのラジオ番組がいまも続いています。
だからテネシー州には白人の音楽と黒人の音楽の中心となった大きな街がふたつあるわけです。
僕のような黒人音楽好きはやはりメンフィスに気持ちが動きますが、今日聴くアルバムは「いやいや、ナッシュヴィルにもブルーズはあるんやで」ということでアルバムタイトルが「ナッシュヴィルのブルーズについてしゃぺらしてくれや」”Let Me Tell You About The Blues Nashville”というものです。
CD三枚組全75曲でずっしり聞き応えがあります。

そのトップに収録されているのが、ピアニストのセシル・ギャント。”I Wonder”という曲が1944年に大ヒットしてその名を知られるようになった人ですが、ウエストコーストで活躍していましたが、元々ナッシュヴィル生まれのミュージシャンだったんですね。”I Wonder”はスローブルーズですが、セシル・ギャントは甘いバラードからブギからジャイヴ、ジャンプまで幅広くいろんなピアノが弾ける名人です。
今日はこのアルバムのナッシュヴィルということでNashville Jumpsという彼のピアノの素晴らしさがわかる曲から
1.Nashville Jumps/Cecil Gant
リズムを繰り出すピアノの左手の重量感のある安定したグルーヴと、右手のタッチの強さもわかる多彩なオブリガードと見事なソロ。完璧です。このピアノひとつで踊れます。

ブレット・レコードいうレコード会社が1946年にナッシュヴィルに出来てそこからブルーズ、R&Bのミュージシャンの録音が始まりその最初に録音されたのが、いまのセシル・ギャント。最もやはりカントリー・ミュージックが強い土地なのでブレットはカントリーもリリースし、ゴスペルも出していました。
他にも当時のナッシュヴィルにはJ-Bとかテネシーというレーペルがあり、やがてブルーズ・ファンにはおなじみのエクセロというレコード会社が始まります。この3枚組CDの半分からあと。1953年くらいからざぁーっとエクセロで録音されたミュージシャンが出てきます。
テネシーの州都でもあるナッシュヴィルはカンバーランド川の川沿いにあり、古くから交易の要所で産業、商業が栄えた街で当然音楽も栄えたというわけです。

このアルバムには1940年代半ばから50年代半ばまでのナッシュヴィルで録音されたブルーズが収録されているのですが、CDの一枚目はいまのセシル・ギャントのようなピアニストが多いです。
2.Beer Bottle Boogie/Mr Swing (Rufus Thomas)
しっかりオーケストラ・アレンジされたジャズ・ジャンプ・ブルーズでのちに60年代にR&Bでダンス・ミュージックを70年代にファンク・グルーヴでダンス・ミュージックでみんなを踊らせた男、ルーファス・トーマスは40年代からすでにジャンプでみんなを踊らせていたと思うと・・めちゃすごいですね。この当時の芸名がミスター・スウィングですから、偉大ですルーファス・トーマス!

このアルバムを最初ざっと聴いている時に「ああ、この人の声が好き」と思ったのが次の女性シンガー、クリスティ-ン・キットレル
僕も初めて聴く女性シンガーで調べたら、ナッシュヴィルのローカル・シンガーで地元のレーベル「テネシー」に録音もしていて、人気があったのかニューオリンズあたりまでツアーに行ったり、1951年にはブルーズシンガーの大スター、ビッグ・ジョー・ターナーのバンドのツアーにも参加していたらしい。
3.Don’t Do It/Christine Kittrell
なんとも言えないキュートな歌声だと僕は思うのですが、いかがでしょう。アメリカの落ち着いたクラブでウィスキー飲みながらこういう女性シンガー聴きたいですね。
途中のサックス・ソロの音色もよかったです。しっかりアレンジされているけど窮屈な感じがしない、いいアレンジってそういうものだと思います。
今日聴いているようなコンピレーション・アルバムを聴く楽しさというのは、自分が知らなかったいまのクリスティーンのようなシンガーに出会えるということで、たった一曲でもそういう曲に出会えるというのは大切なことだと思います。なぜなら、そこからまた違う音楽に自分の音楽のフィールドが広がっていくわけですから。
次のブルーズマンは知ってます。アーサー・ガンター、なんか名前がゴツゴツしてますが、演奏は軽快でナッシュヴィルのせいかちょっとカントリー・ミュージックテイストもあります。これはエルヴィス・プレスリーがカバーして有名なった曲なんですが、プレスリーもそのカントリー・テイストを感じて選んだのかも知れません。
4.Baby Let’s Play House/Artthur Gunter
1954年のこのアーサー・ガンターあたりからそれまでとはちょっと色合いの違うイナタイブルーズが出てくるのですが、ナッシュヴィルと言えばブルーズ、R&Bで有名なエクセロというレコード会社がこの頃からリリースを始めます。正確に言うとエクセロが設立されたのは1953年。テネシーだけでなく、アラバマやルイジアナのブルーズもリリースするようになり、50年代の終わりにはエクセロの看板ブルーズマン、ライトニン・スリムとかレイジー・レスター、スリム・ハーポが活躍しました。
最後にアラバマのブルーズマン、私個人的に大好きなブルーズマン、ジェリー・マッケインを。南部のワイルドなサザン・ビートに乗った彼の歌うブルーズが風を切っているみたいで男らしく清々しい。
5.Courtin’ In A Cadillac/Jerry McCain

今日聴いたこの3枚組のLet Me Tell You About The Blues Nashvilleはまだレコード店とかネットにあると思うので興味のある方は是非。ホームページにジャケット写真とデータも出してますので見てください。
ナッシュヴィルはギブソンというギターメイカーがある街でもあり、他のギターメイカーもあるし、音楽の街なので一度行ってみたいと思っています。
今日は40年代半ばから50年代後半のナッシュヴィルのブルーズをコンピレーションしたアルバムLet Me Tell You About The Blues Nashvilleを聴きました。