2019.11.29 ON AIR

永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード曲集  vol.5
テキサス~ウエストコースト

Jonny “Guitar” Watson/Jonny “Guitar” Watson (KING Federal/ OLDAYS ODR6017)

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Truckin’ With Albert Collins/Albert Collins(MCA  MCAD-10423)

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Atlantic Ultimate ’50 R&B Smashes(east west japan AMCY-2788)

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the original hound dog/Big Mama Thornton (Peacock/ACE  CDCHD 940)

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Ball And Chain/Big Mama Thornton (ARHOOLIE 1039)

Ball And Chain/Big Mama Thornton (ARHOOLIE 1039)

ON AIR LIST
1.Gangster Of Love/Johnny “Guitar” Watson
2.Frosty/Albert Collins
3.Since I Met You Baby/Ivory Joe Hunter
4.Hound Dog/Big Mama Thornton
5.Ball & Chain/Big Mama Thornton

前回このシリーズでテキサス出身のT.Bone Walkerとチャールズ・ブラウンを取り上げたのですが、テキサスのブルーズマンというのは彼らのように一旗上げにウエストコーストの大都会ロスアンジェルスに行く人が多くいました。
テキサス州はアメリカのいちばん南部の真ん中あたりにあって南はメキシコと国境を接してます。東隣はルイジアナ州、北と也はオクラホマ州、西隣はニューメキシコ州、そのニューメキシコから西のアリゾナ州を抜けるとカリフォルニア、ロスへと行くことができます。
40,50年代あたりから大都会ロスに音楽の仕事がたくさんあり、レコード会社もたくさんできたこともあって黒人ミュージシャンたちはテキサスからロスに向かったわけです。今日最初に聴くジョニー・ギター・ワトソンもそうです
ロスに移ったジョニー・ギターが1963年にジョニー・オーティスのプロデュースで録音したのが、いま聴いてもかっこいいこのブルーズ
1.Gangster Of Love/Johnny “Guitar” Watson
「愛のギャング・スター」というタイトルですが、ジョニー・ギターは見た目も裏通りの街のちょっとやさぐれた兄貴と言う感じで、この曲にぴったりでした。彼はこの曲をよくライヴで歌い、録音も何度かしています。
70年代半ばにファンクスタイルによる当時のブルーズ表現をした時もやはりギャングスターぶりは変ってませんでした。彼は終生、この曲のタイトルどおりのギャングスターぶりを見せてくれました。演じていたと言ってよいかも知れません。
ロスのクラブでライヴを観たとき休憩時間に客席にやったきたのでサインをお願いしたら、「どっから来たんだ。日本か」「ブルーズ歌ってんのか。なんか困ったことがあったら連絡してこい」と連絡先まで教えてくれた優しい、やっぱり「愛のギャングスター」でした。
ジョニーギターはテキサス州ヒューストンの生まれですが、若い頃一緒にギターを弾いて遊んでいた悪ガキ友達が、アルバート・コリンズとジョニー・コープランド。
アルバート・コリンズは最初歌が下手という「定評」があり、本人もそれを意識して歌なしのギター・インストで最初勝負してました。愛用のギター、フェンダー・テレキャスターを使ったワイルドでクールなインストがいろいろありますが、僕がスタンダードとして挙げるのは1962年リリースのこの曲
2.Frosty/Albert Collins
1962年ミリオンセラーになったというアルバート・コリンズを代表するインスト曲。日本にも何度か来てくれてそのライヴ・パフォーマンスはいつ見ても楽しいものでした。そして、あのパキパキのテレキャスターの強烈なギターの音色はずっと忘れられないものです。
ジョニー・ギターやコリンズより先輩のピアニスト、アイヴォリー・ジョー・ハンターもテキサスからウエストコーストへ流れたミュージシャンですが、結局はまたテキサスに帰ったみたいです。
1956年の大ヒットでR&Bチャート1位に三週間ランクされ、一度聴いたら忘れられない歌詞とメロディの曲。
「君と出会ってからオレの生活はすっかり変った。みんなが言うよ昔のオレじゃないって。君と出会ってから、オレは幸せ者だよ。君が喜ぶことは何でもするよ」
3.Since I Met You Baby/Ivory Joe Hunter
それでテキサス出身と言えば、偉大な女性ブルーズシンガー、ビッグママ・ソーントン。まあ、ビッグママもロスに移住しましたが、10代から20代にかけてはヒューストンあたりのクラブ歌っていました。そこにピーコック・レコードの社長、ドン・ロビーに声をかけられてレコード・デビュー。1953年に次の曲の大ヒットとなりました。ジョニー・オーティスがプロデュースしたこの曲はいまもブルーズとロックのシンガーたちが歌う名曲のひとつです。
「あんたなんかただの女たらしやん。あっちに行ってくれるか」
4.Hound Dog/Big Mama Thornton
この曲はご存知の方も多いとおもいますが、その三年後に白人のロックンローラー、エルヴィス・プレスリーがカバーしてミリオンセラーにしたのでプレスリーの曲だと思っている人も多いのですが、オリジナルはビッグ・ママ。
そして、同じテキサスの白人ロック・シンガー、ジャニス・ジョップリンがカバーして有名になった曲がつぎのBall & Chain
1968年にビッグママがアーフリー・レコードからリリースしているこの曲をジャニスは同じ68年の「チープ・スリル」というアルバムでカバーしています。当時はふたりともウエストコーストに住んでいたわけですから、ジャニスはひょっとするとビッグ・ママのライヴを観てこの曲を聴いていたかもしれません。
5.Ball & Chain/Big Mama Thornton
圧倒的な歌の力を感じます。ジャニスと聴き比べるとわかるのですが、ジャニスは心の思いの丈をぶちまけるような歌唱でしたが、ビッグママは燃えているけれどどこか愛にあきらめて冷たくなっている気持ちを感じます。女性ブルーズシンガーとしてこういう歌を歌える人がもうほとんどいません。