永井ホトケ隆が選ぶブルーズ・スタンダード集 vol.9
ルイジアナ・ブルーズvol.2
ON AIR LIST
1.King Bee/Slim Harpo
2.Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
3.Baby Scratch My Back/Slim Harpo
4.Shake Your Hips/Slim Harpo
5.Good Rockin Tonight/Roy Brown
前回のギター・スリムやアール・キングはルイジアナ州のニューオリンズで活動していたブルーズマンたちですが、ルイジアナにはもうひとつ独特の音楽を作ったバトンルージュという街があります。ルイジアナの州都をニューオリンズとよく勘違いするんですが、州都はバトンルージュです。ニューオリンズから北西方面に行ったところです。そこで50年代後半から60年代にヒットを飛ばしたのがスリム・ハーボ。この番組でも何度かON AIRしていますが、シカゴでもない、テキサスでもないミシシッピでもない独自のスワンプ・ブルーズと呼ばれることもあるブルーズが栄えた街がバトン・ルージュです。
有名なのはエクセロというナッシュビルのレコード会社がこのバトンルージュのブルーズを50年代末から録音してたくさんリリースしました。
では、そのエクセロのヒット・メイカーだったスリム・ハーポ
1957年にリリースされたスリム・ハーポのデビュー曲”King Bee”は、いまも歌い継がれる間違いなくブルーズ・スタンダードです。
1.King Bee/Slim Harpo
何度聴いてもかっこいい。スリム・ハーポの声とリズム隊のステディなグルーヴ、そして余計なものがないバックのストレートな演奏。ハーポのハーモニカも歌うようなハーモニカで非の打ち所の無いブルーズの名曲です。
「オレは王様蜂、オマエの巣(つまり家)の周りでブンブン羽根の音をさせるよ。オレの女王蜂になってくれないかな」という歌詞もよくできています。
ローリング・ストーンズが夢中になった気持ちわかります。
次は61年のヒット。
「君と別れてからオレの心には雨が降り続けている」と失恋の傷心を歌い、途中に語りまであるこのベタなブルーズバラードはなぜかずっと心に残る。スリム・ハーポはハーモニカ・ホルダーを首に下げてハーモニカを吹き、ギターを弾き歌います。途中のハーモニカ・ソロも曲にぴったりハマっているが、ハーポは元々ハーモニカ・スリムという名前で活躍していた。これも本当に上手くできた見事な一曲
2.Rainin’ In My Heart/Slim Harpo
スリム・ハーポが録音していたエクセロというレコード会社はステディなリズムなのに歌やサウンドはレイド・バックしてて、録音も独特のエコーが入ったもので好きになるとハマります。
次の1965年R&Bチャート1位になった大ヒット曲。Baby Scratch My Backというのは「ベイビー、背中掻いてくれや」という誰にでもある背中が痒いときの歌で「もう少し真ん中や、ああ気持ちええわ」とか語りでいうてますが、どうもそれだけではないちょっとエロいことになっているようです。
やっぱりここでもハーポの低めの声がいいです。
3.Baby Scratch My Back/Slim Harpo
途中で木魚みたいな音が入ってきてファンキーな感じになってました。こういう語りが入っている曲がアメリカでは時々めっちゃ流行ることがあるそうですが、やっぱりスリム・ハーポみたいに声がいいと語りも効果的です。
次は明らかにジョン・リー・フッカーのブギの影響で作られた曲ですが、やはりそこはルイジアナ、バトンルージュ。ジョン・リーのような強いエッジはなくどこか丸い感じですが、リズムは素晴らしくステディで思わず腰が浮きます。まさに「お尻ふって」
4.Shake Your Hips/Slim Harpo
スリム・ハーポはいい曲がたくさんあって今週はハーポだけで終わってしまいそうですが、エクセロレコードにはほかにもレイジー・レスターやライトニン・スリムと魅力的なブルーズマンがいます。スリム・ハーポも一度ライヴを観たかったブルーズマンのひとりですが、1970年に心臓発作で46才という若さで亡くなりました。
最後にスリム・ハーポより10年以上さかのぼってニューオリンズ生まれのこのジャンプ・ブルーズ・シャウターのこの曲をブルーズスタンダードに忘れてはいけないです。ニューオリンズのJ&Mスタジオで1947年に録音されたロイ・ブラウンのGood Rockin Tonight
5.Good Rockin Tonight/Roy Brown
ブルーズスタンダード曲集のルイジアナ編を2週に渡ってON AIRしましたが、まだまだプロフェッサーロングヘアとかファッツ・ドミノとかに名曲があるのですが、それはまたいつかやりましょう。