2020.02.14 ON AIR

南部のブルーズ・テイストをしっかり持ってブルーズを作り歌う「いま」のブルーズマン、ザック・ハーモン

Mississipi Barbq/Zac Harmon(BSMF-2684)

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ON AIR LIST
1.Gypsy Road/Zac Harmon
2.Baby Pleez/Zac Harmon
3.Mississipi Barbq/Zac Harmon
4.Making A Dollor Out Of Fifteen Cent/Zac Harmon

今日はBSMFレコードから送っていただいたザック・ハーモンのニューアルバムです。
正直言って僕はザック・ハーモンを聴いてなかった。名前はなんとなく知っている感じでしたが、彼がこんなにいいブルーズマンだと思ってませんでした。
まずザック・ハーモンの略歴から紹介しますが、何年生まれなのかはっきりしません。生まれたのが1960年頃と書いてあるのでいま60才くらいですか。生まれ育ったのはミシシッピー・ジャクソンです。16才でお父さんの友達だったジャクソンのブルーズマン、サム・マイヤーズのバックでギターを弾いたのが最初のキャリア。18才の頃にはジャクソンのマラコ・レコードでZ.Z.ヒルやドロシー・ムーアのバックでギターを弾きその後ロスへ。ロスではスタジオ・ミュージシャンとして活躍しながらソング・ライターとしてオージェイズやウィスパーズなどに曲を提供して、94年にブラック・ウフルに書いた曲はグラミーにもノミネートされています。プロデュースの仕事もしていますからまあ裏方的な生き方をしてきた人ですが、2003年に40才を過ぎて自分のファースト・アルバムをリリース。以降自分のバンドでライヴ活動を続け、いままでに5枚のアルバムをリリース。
聴いてもらえばわかるのですが、ブルーズだけでなくブルーズを真ん中に据えながらいろんなタイプの曲があるのですが、それぞれがしっかり練られて作られているいるところがいいなと思います。さすがいろんな仕事で裏方をやってきた蓄積を感じます。
まずは一曲
1.Gypsy Road/Zac Harmon
最初、ギターが始まったときはよくあるギター弾きまくりのヘヴィなブルーズロックかと思いましたが、歌が入ってくるとほっとします。歌声と歌い方がいいんですね。気張らず自然で、元々いい声してるんですね。黒人のミュージシャンと話しているとよく歌声の話をされます。例えば、ドクター・ジョンはインタビューで「僕は歌手やないんや、僕はピアノとギター弾いて歌っているプレイヤーなんよ。いい声やないしね。歌手というのはアーロン・ネヴィルのような素晴らしい歌声を持った人のことなんだよ」謙遜も入っていると思いますが、歌手に対しての考え方がよくわかりますよね。
今回このアルバムをOn AIRしょうと決めたのはザック・ハーモンの声と歌い方がいいなと思ったからです。そして、現在形で活動しているブルーズをやるミュージシャンでこんな風に歌のいい人が本当に少ないです。ギターだけやってきた人ではなくて、ドロシー・ムーアやZ.Z.ヒルといった素晴らしい歌手のバックもやってきたのでギターの出方もよく知っていて、あくまでも歌をメインに据えているところがいいです。
はっきり言うと黒人も白人も最近のブルーズ系のギタリストたちのやたらラウドなギター弾きまくり、歌がつまらいない、しかも、ギターのひとつひとつの音がはっきりしない、つまりギターが何を歌っているのかわからないそんなソロを延々と弾く人が多い。ブルーズと称して次々出されるそういうアルバムに僕は辟易しています。
なので今回のこのアルバムは有名ゲストもいないし、これ見よがしなところもないのですがストレートで飾り気がなくていいです。

2.Baby Pleez/Zac Harmon

彼は若い頃ミシシッピ、ジャクソンにあるマラコレコードでスタジオの仕事をしていたんですが、やっぱり南部のダウンホームなゆったりした感覚があるんですね。このアルバムもミシシッピ・バーベキューというのがアルバムタイトルなんですが、アルバムジャケットにはザックさんがエプロンしてめっちゃでっかい肉をフォークに差して持ち上げてにっこり笑っている写真です。それでこのアルバムタイトル曲もコテコテのブルーズかと思いきや、こんな曲でした。
3.Mississipi Barbq/Zac Harmon
オールドスクールのソウル・テイストでちょっとオシャレな曲なんですがなんかイナタイです。だいたいこんなメロディで「ミシシッピ・バーベキュー」と歌うところがディープ・サウス、ミシシッピです。たまらなくいいです。”We Gonna Have Mississipi Barbq”ですから、それそこZ.Z.ヒルとかリトル・ミルトンのマラコ・レコードの曲聴いてるみたいな感じになりました。

このアルバムのプロデュースはジム・ゲインズという人で、この人はサンタナやスティービー・レイボーンをプロデュースしてグラミーも取っている敏腕プロデューサーです。このアルバムはそういうしっかりしたプロデュースの力を感じます。
次の曲は女性ブルーズ・シンガー、シメキア・コープランドなどにも曲を書いているジョン・ハーンとザックの共作です。
ちょっとジョニー・ギター・ワトソンのファンク・ブルーズを思わせる曲調です。
4.Making A Dollor Out Of Fifteen Cent/Zac Harmon
ザックさんはオールド・スクールのR&Bですが、決め手はやはり彼の歌声と歌い方ですね。力まずでもパワフルなんですが、コントロールされていてでもスクウエアな感じがしない歌とギターのバランスがいいです。
ギター・スタイルは基本的にはB.Bキング源流のモダン・ブルーズ・ギターですが、やはりスタジオ・ミュージシャンでもあったのでコードワークとかカッティングにブルーズだけでない洗練されたものが時々あります。ミシシッピーのモダン・ブルーズとウエストコーストのジョニー・ギター・ワトソンのブルーズファンク・テイストもあるこのアルバム、ブルーズ系の新譜の中では久々にいいなぁと思いました。

落ち着いているいいアルバムです。オールド・スクール・テイストですが古い感じをさせないのは、彼がずっと現役でいるからではないでしょうか。このアルバムもほとんど彼自身のオリジナルですから作詞作曲もライヴ活動も精力的にやっているのがいい感じで音に出ているように思いすま。オールド・スクール・マナーですが、宿っているソウルがオールドではないです。
今日は1月22日に日本のBSMFレコードからリリースされたザック・ハーモン7枚目のアルバム「ミシシッピ・バーベキュー」を聴きました。ライヴ聴いてみたいです。誰かザックを日本に呼んでください。