2020.04.24 ON AIR

ロバート・クレイ快心のニューアルバム
Robert Cray/That’s What I Heard (Nozzle Records 72098CD)

ON AIR LIST
1.Hot /Robert Cray
2.You’re The One/Robert Cray
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
4.Burying Ground/Robert Cray
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray

今日は久しぶりに気持ちよく紹介できるブルーズのニュー・アルバムです。
ロバート・クレイ・バンドの名義の新しいアルバムが2/28に約3年ぶりにリリース。アルバムタイトル”That’s What I Heard”
プロデュースがドラマーのスティーヴ・ジョーダン。プロデューサーとしての彼の手腕には素晴らしい定評がありますが、どんな風に彼がロバート・クレイをプロデュースするかということにも興味が湧きます。
とにかく現在のブルーズシーンはギターばかり弾くプレイヤーが多い中、クレイは歌がしっかり歌える、歌で勝負できる数少ないブルーズマンです。
このアルバムはどの曲をON AIRしょうか迷うほどムダな曲がありません。
収録されている曲はクレイのオリジナルとカバーが半分ずつくらい。最初に聴いてもらうのはクレイのオリジナルです。
1.Hot /Robert Cray
タイトルどおりすごく熱い演奏でスティーヴ・ジョーダンのドラムが火吹いてますが、クレイの歌とギターもそれに煽られるように燃えてます。
少し60年代のR&Bのテイストもあっていい感じです。

クレイが初めて日本に来たのは、1984年ジョン・リー・フッカーのオープニング・アクトだったんですが、その四年前に”Who’s Been Talkin’”というアルバムでデビューして日本にくる前年83年にリリースされた”Bad Influence”がすごく評判になりました。そのアルバムに収録された”Phone Booth”と “Bad Influence”というクレイ自身のオリジナル曲もすごく新鮮でブルーズ界に新しいスターが登場したというムードがありました。
実はその初来日ジョン・リー・フッカーのオープニングアクトのあと僕と近藤房之助たちとクレイは一緒に短いツアーをやりました。そのツアー最中にいろいろ話しをしたんですが、彼は1953年生まれで僕より三つ年下だとわかり、まずそれにびっくりしました。自分より年下の黒人ブルーズマンが出てきたのか・・と。彼の話ではブルーズをやる前にジミ・ヘンドリックスなんかが好きでロックをやっていたらしいんですが、高校の卒業式のイベントにブルーズマンのアルバート・コリンズが来てその演奏を観てブルーズにハマったそうです。それでブルーズの話をしているとクレイは知らないことがいろいろあって、僕の方が彼に教えるというすごく変な感じになって・・・例えば日本のレコード店のカタログを見ていると僕にこのアルパムはいいのか、とかこのブルーズマンは誰とか訊いてくるんですよ。すごく熱心で・・だからその時はまだブルーズを勉強している感じでした。
今回のアルバムでは僕も大好きな偉大なブルーズシンガー、ボビー・ブランドの曲を取り上げてくれていて嬉しいです。
オリジナルは1961年に発表されたボビー・ブランドの名盤”Here’s The Man”に収録されてます。
2.You’re The One/Robert Cray
あまりアレンジしないでオリジナルを尊重した、ボビー・ブランドへのリスペクトが感じられるクレイのカバー。

ロバート・クレイは1980年のデビュー以来ずっとコンスタントにアルバムをリリースして、僕がこう言うのも偉そうですがいつも平均点はクリアするアルバムをリリースしています。でも、いつもどこかコントロールしすぎな感じがして悪く言うと面白みに欠けるというか、ブルーズの優等生というか・・・もうちょっと破れたところがあってもいいのに・・と思ってきました。
それが今回は上手さだけではなくクレイのソウルフルなものがすごく出てきたような感じがします。
次の曲は60年代のR&Bのカバーです。シンガーであり、ソングライターでありドラマーでもあったドン・ガードナーが歌った曲です。60年代のテイストがあるんですが、決して古くないいまの感じに仕上がってます。
3.My Baby Likes To Boogaloo/Robert Cray
かっこいいです。歌がやっぱりいいです。パワフルでソウルフルです。

84年に一緒に日本を回った時に、毎晩演奏が終わると打ち上げがあるんですが、クレイはめっちゃ酒を飲む訳ではなく、すごく紳士的でもの静かに話をする人で、ある程度の時間がくるとさっとホテルに帰る真面目な人でした。来日黒人ブルーズマンの中にはすぐ日本の女性を口説きにかかったり、ずるずると飲んで泥酔したりする人を何人も観ていたんでちょっとびっくりでした。
長い時間をかけて真面目な彼は彼なりに中身の濃い音楽を作ってきたんやなと、このアルバムを聴いてちょっと感動しました。彼ももう66才です。B.B.キング亡き後先頭に立ってこれからのブルーズ界を引っぱっていって欲しいと思います。そういう風格が出来てきたような気がします。
次はゴスペルのセンセイショナル・ナイティンゲイルズの曲なんですが、センセイショナル・ナイティンゲイルズというのは1942年に結成されたゴスペル・カルテットの有名グループでゴスペルの話の中には必ず出てくる偉大なグループです。70年近くたったいまもたぶんまだ解散していないと思います。
このクレイの歌も熱いです。
4.Burying Ground/Robert Cray

もう一曲、カーティス・メイフィールドがオリジナル。1963年リリースされたカーティスがインプレッションズをやっていた初期の曲です
5.You’ll Want Me Back/Robert Cray
今日はロバート・クレイのニューアルバムThat’s What I Heardを聴いていただきました。ブルーズ界で久しぶりにお薦めのアルバムが出てきてすごく嬉しいです。是非ゲットしてください。